宣伝の「誰も見ることはないけど 確かにここに存在してる」の名文句の、なんと深刻でなんとおかしい登場人物たちのキャラがうまいし笑わせる快作。「自分のような小さな映画こそ配信で見てたら魅力は半減するし『テネット』の真逆に位置する自分の映画も実は同じくらい映画館という環境を必要としている。そこについては声を大にして言いたいです」と今泉力哉監督は語る。
当館で封切り出来なくシネコンさんでされて好評だった作品に力を入れている二番公開シリーズ。「ヤクザと家族」、キネ旬の星取り表3名のうち星5個が2名で4個が1名の「あのこは貴族」、「K C I A」、「あの頃」など。
新作「ラスト・フル・メジャー」はよく作れたと感心しきり。ベテラン男優がみせる。大好演のC・プラマーとP・フォンダの遺作というのも勲章ものだ。
ノマドとは、現代の放浪の民たちのこと。すごいことをしている人たちがいる。ヒロインは、キャンピング・カーで町を出る。時間と場所にとらわれず、自由と自主独立をもつ車中泊文化は、誰もが何かを感じずにはおれない。アメリカ大西部の自然は圧倒的で、孤独な心を解放してくれる。フランシス・マクドーマンド製作、主演。必見です。
●3月26日(金)から公開
出版社を舞台に、原作者があてがきで主人公を大泉洋にしている。ということは映画化されて完結をみる企画書みたいな小説だ。こういう日本映画の作られ方は、起爆剤となって続いて欲しいものである。枯渇しないアイディアをもつ主人公に活字愛あふれる女性編集者が、陰の立役者であることがよくわかる。それが新しいこと珍しいこと面白いことを生むのだろう。
●3月26日(金)から公開
広島FM放送のアメリカの映画の現地レポートで「一番話題になっているのは、ミナーリ」と。ミナーリと発音していた。ミナリとは、韓国語で春の七草のセリのこと。韓国からアメリカで農場を立ち上げんとする一家の奮闘記である。しっかりしたリアル感にうまくユーモアをミックス。祖母が来てから、がぜん面白くなる。ブラッド・ピット製作のアメリカ映画である。
●3月19日(金)から公開
4K対応の最新映写機導入に合わせての上映。今見て、改めて凄いのはナチス占領下の中で2年以上もの製作期間、16億円を投じて巨大セット、1500人エキストラ動員で作っていることだ。戦争への抵抗と平和と自由が力となり、音楽や美術はユダヤ人という。フランス人は映画のためにここまで出来るかを強烈に示した奇跡的作品。1945年ナチス解放後に封切りし大ヒットした。「恋なんて簡単よ」など名セリフの宝庫としても有名である。
●3月19日(金)から公開
広島出身の西川美和監督、脚本の待望の最新作は渾身の傑作である。
いつもそうだが、おそるべしキャスティングだ。
ほぼ完璧のキャスティングだったのではないか。
役所広司主演は、いつか必ずと思ってらしたそうだ。
仲野太賀が、観客目線で引っ張ってくれる役どころ。
「身分帳」という原作小説の映画化の報を知った時から、胸の高なりがあった。
知らない言葉だったし、それは何ぞや?
とにかく、面白そうだ。
その主役に、ぴたりと役所広司がはまる。
文字通りの、体当たりもすごい。
刑務所帰りの主人公は、無骨で正義感が強くて曲がったことが嫌いな、
しかし、チャーミングで真面目で几帳面な涙もろい男でもある。
そういう人間が、不寛容な世の中でどう生きていくのか。
何があっても刑務所は、誰かが良し悪しは別にして対応してくれる。
世の中は、自然に沈黙し、たしかに誰も対応や相手にしてくれないかも知れない。
ましてや、コロナ禍。
孤独になっていく私たちに、この映画はそっと語りかける。
名もなき私たち、その他大勢の私たちに、ふつうの根っ子にあるものを
思い出させてくれる。
助演女優の見せ場が上手いのなんの。
天下の長澤まさみに「カメラで撮って。撮らないならカメラを置いて助けに行け」。
キムラ緑子には、「ガマン、ガマン、やけど空は広いらしいよ」。
梶芽衣子には、「見上げてごらん夜の星を」を♪小さな星の小さな光が
ささやかな 幸せをうたっている、とフルで歌わせる。
助演男優も、好演。
ふっと、かつていたアパートに足を向けていた主人公。
ふっと、かかってくる電話。
脳裏に残りすぎるこの場面の、人間の本心のリアリズムを極めた
描き方は、まさにしあわせなすばらしき世界である。
是非とも応援して下さいませ。
大ヒットして欲しいです。
⚪︎︎個人的に、一番驚いたのはこのコロナ禍にペスト菌をつかった細菌兵器の話しが出たことだ。
1940年の神戸を舞台に、中国で日本軍が研究開発して実験している恐怖の映像をフィルムで記録している場面もある。しかし、この映画は告発映画でも何でもない背景として、描いているところがすごい。諸説いろいろある。が、そういう日本という国家についての暗部に、日本映画は何故かわからないが、映画化をさけている。
⚪︎映画の中で夫婦が見に行く映画が「河内山宗俊」。
想像だが、行きたくない戦争にかりだされて28歳の若さで、中国で戦病死した山中貞雄監督をおもってのことか。「丹下左膳余話 百万両の壺」という是非ご覧いただきたい快作の傑作がある人である。何度も何度も、笑かす作品である。
⚪︎忘れていたわけではない。
ベネチア映画祭の銀獅子賞(監督賞)を受賞の快挙。この1年間は、どこかこの映画の1940年に少し似た雰囲気がないでもない。行動自粛や休業要請や時短要請の中、自由に動けない。映画館も史上最悪の状況にある。この作品と時代が、偶然に重なった気がする。
⚪︎そして、キネマ旬報の日本映画のベスト1位である。
ラブストーリー仕立てがメインのオリジナル脚本で、キネマ旬報の脚本賞も受賞する。ヒロインの蒼井優が、1940年代しゃべりで観客を1940年代に連れて行ってくれるほどの力演をみせる。731部隊について、「河内山宗俊」が調べたくなってきた人もあるはずだという、お見事さである。
様々なことが、去来する作品である。見る人の印象も、さまざまでしよう。ベストセラーの自伝の映画化。
日本での映画の副題が「郷愁の哀歌」で、日本での本の副題は「アメリカの繁栄から取り残された白人たち」。本国の原作本では、副題が「家族の思い出と危機に直面する文化」。社会に取り残された田舎の貧しい白人たちのことを、ヒルビリーと言うらしい。
エイミー・アダムスは、美人で高校のとき400人中2番の成績だったが、生活がうまくいかず不安定な母親を体重を増やして熱演。
グレン・クローズは、圧倒的な迫力で祖母を演じる。孫に、「友だちを選べ。クズと付き合うな」と。遊びに来ていた孫の友だちに「ミシシッピーって、綴り分かるか?分からないなら、うちに来るな」と言う。これは、すごい。こんなことを、言ってくれる祖母はあまり、いないと思う。アカデミー賞の主演女優賞か助演女優賞にノミネートされるかも知れない。
「ビューティフル・マインド」から「パヴァロッティ 太陽のテノール」の67歳のロン・ハワードが監督だけでなく、製作にも参加しているから、かなりのつくる魅力があったのだろう。
アメリカの出来事のニュースが、少し身近に思えると同時に他人事ではないことも感じる。一見の価値は、ある。
⚪︎原作もの、テレビの映画化が多いなか、オリジナル脚本という、それだけで星1個。
⚪︎今をときめく菅田将暉主演で、また星1個。「糸」、「浅田家」、「アルキメデスの大戦」、「あゝ荒野」などハズレがない。「キネマの神様」も待機中だ。
⚪︎菅田将暉と同い年の27歳の「映画 ビリギャル」で大注目されて実力派女優であることを証明した有村架純共演だから、また星1個。
⚪︎広島出身の「映画 ビリギャル」、「罪の声」で映画賞をいくつ取るかと言われている土井裕泰(どい のぶひろ)監督だから、また星1個。
⚪︎菅田将暉が「ラブストーリーをやりたいんですよ」と脚本家の坂本裕二に話したところから企画があがり、菅田将暉と有村架純ありきのあらかじめの当て書きだったというから、内容も興味しんしん。これも星1個。
あれっ、星が5個になってしまった。いいのかな、いやいいのです。老若男女を問わない男女のドラマがここに誕生。花束みたいな恋とはいえ、どういう恋なのか。このキャストとスタッフなので、題名に偏見をもたないで見ていただきたい。
この映画、大ヒットして欲しい1本です。
⚪︎天下のニコール・キッドマンが女性刑事をすることで、もう星1個。
⚪︎さらに、格好いい役かと思いきやそうじゃないから、また星1個。
⚪︎大作仕立てでなく、B級の革ジャンにジーンズの女性刑事ものであることも、星1個。
⚪︎女性監督を応援しているニコール・キッドマンが日系の女性監督カリン・クサマを抜てきして、それも星1個。
⚪︎過去と現在があるから、ちゃんと若き日の美しさと、ふけやつれメイクの体当たりで、星1個。
星がこれも、5個になってしまったが小ヒットして欲しい1本。この作品で、ゴールデン・グローブ賞主演女優賞にノミネート。他の映画賞で主演女優賞を受賞。
原題は、「デストロイヤー」(破壊者)だから強烈である。日本の配給会社は「ストレイ・ドッグ」とし野良犬という意味にしている。犬は、俗語で警察の手先とあり、「いぬ」というフランス映画もあった。
映画のもつエンタメ犯罪映画を、女性刑事を主人公なので。大スターのニコール・キッドマンなので。もう一度、小ヒットを願うばかりである。上映中の「ザ・プロム」では、メリル・ストリープや若いスターを前面に立て、自分はひいて助演に徹しているところもたいしたものである。
なんとも、驚愕の美少年である。それを知っただけでも、見る価値があるように思ったくらいだ。トルーマン・カポーティのことだ。
美少年であったことが、もしかしたら人生を変えたかも知れないと、ふと想像さえする。男性にも女性にも、好かれただろう。
家族にめぐまれず、引っ越しの多い生活のため、ほとんど学校にも行かず、孤児同然ですごすが独学で勉強をして10代はじめから、ものを書いたとある。で、アメリカ初の同性愛小説で大注目されたようだ。
美少年、美少女はその美しさのとりこになる人たちによって、本人の意にそわなくても歩むことがよくある。男優や女優が、まずそういうケースが多いし。
同じように孤児同然として生きてきたマリリン・モンローとカポーティは仲が良かった。映画化された「ティファニーで朝食を」のヒロインのホリー・ゴライトリー役は、マリリン・モンローをカポーティは希望していた。ところが、高級コールガールみたいな夜の女は嫌なの、とオファーを断ったというのには驚くばかりだ。生まれも育ちも似ているマリリン・モンローが演じていたらどんな風になっていたか見てみたかった。
ティファニーで朝食を、食べる身分を表すこの題名を思いつくことが、おそるべしである。母親ほか何人かのモデルがあるのが、またいい。
結果的にオードリー・ヘップバーンになり脚本もかなり変えていき「ムーン・リバー」はアカデミー賞の主題歌賞と作曲賞を受賞するロマンチック・コメディ的に仕上がる。
この役はまた、女性の自立して自由に軽やかに生きるお手本の映画として、ホリー・ゴライトリーのようにというほど受けいれられているから、映画の完成品というものはおもしろい。
背が低いというコンプレックスを強くもっていたようだが、美的センスはポスターを見ても、誰もが真似など出来はしない社交界でつちかった体験がものをいう着こなしである。髪型、メガネ、バッグ、スーツ、セーター、マフラー。特に手の指の動かし方は絶品である。
根底にある貧しさ弱者の思いを、セレブリティへの皮肉と反発とやっかみなど知るところを語るところが、とても人間的である。かつ、その私生活の暴露は道化精神、サービス精神は圧倒的である。
破局したカポーティの恋人(男性)の娘が路頭に迷うと養女としてひきとる。「実の父以上に、父になってくれた」とその娘は愛情をこめて語る。
実に、面白いドキュメンタリー作品だ。
映画評論家が、大絶賛である。
「第三の男」(1949)がもっとも有名かも知れない個性派俳優トップのオーソン・ウェルズの監督デビュー作「市民ケーン」(1941)の脚本家マンクにスポットライトをあてているところが、すごいとしか言いようがない。
「ゴーン・ガール」(2014)から6年ぶりにデヴィット・フィンチャーが、父親のジャック・フィンチャーの遺稿を映画化している、すごさ。1930年代後半からのアメリカ映画界が舞台がすごい。ネットフリックスで製作もすごい。白黒にして、あえて当時の画質や音質にもこだわっているとか。フィルムを交換する丸いマークまでいれていて驚く。
冒頭。1940年、24歳の若き奇才オーソン・ウェルズは苦境の映画会社R K Oに招かれハリウッドへ。オーソン・ウェルズに映画製作権がすべて与えられ、誰と何を作るかも自由だった。と、出る。ここが一番、すごいかも知れない。
デヴィット・フィンチャーは製作と監督、そして父親の遺稿の脚本。最近の心に残るというか、熱さがある作品のパターンが、製作と監督と脚本の一人3役という気が個人的にはしている。製作がなかなか自由に、できないのが感じられて仕方がない。
マンク役に、ゲイリー・オールドマン。
アカデミー賞に、ノミネートはいくつかといわれている。スクリーンで見て、またネットフリックスで見たくなるつくり方でもある。
明けましておめでとうございます。
本年も、サロンシネマと八丁座をご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。
コロナ禍の中、たくさんのお客様にお越しいただき有難うございます。
皆様に、良きことがおこりますようにお祈りいたします。
街中映画館を死守せんと、さらにパワーアップした魅力ある映画館づくりに邁進してまいりたいと思っております。
「あたりまえのことが ありがたいものだと 気付けば 幸せの度合いは高まる」の言葉を胸に。
「微力だけど、無力じゃない」高校生平和大使の言葉を胸に。
平和都市ヒロシマの自由のあかしである「映画の上映」にお力添えをくださいませ。
さて、本作はどなたにでもおすすめしたい快作アニメである。
まずは映像美にうっとりできる心地よさに気持ちがあたたまる。あるいは、なつかしさみたいなものに安心できる。
色づかいや、人間、動物、鳥、森、川、湖など自然界の描き方がとてもすてきだ。今、3Dアニメ全盛期に2D手描きアニメーションの世界観が、新鮮にうつる。
作品の中にいざなってくれるのが、行動力ある少女ヒロインと鳥のハヤブサで、オープニングからすぐにはいっていける。
さらに、眠ると魂が抜け出しオオカミになるウルフウォーカーの、もうひとりの少女ヒロインが出てくる。この二人の関係と鳥のハヤブサが、ほんとうにかわいい。
中世から、密かに伝えられた伝説をもとにしているそうだ。なるほど、世界中で受けて評論家からも高く評価され、ポスト・スタジオ・ジブリとの呼び声も高いというのもよくわかる。アニメが苦手なかたでも、楽しんでいただけるでしょう。
それにしても、現代と同じだ。山や森や海などと、人間の住んでいる世界とのまさに、社会的距離と身体的距離の重要さをあらためておしえてくれる。今こそ、見て欲しい一本。エンターテイメントなつくり方と、1時間43分の上映時間も見やすく素晴らしい。
●1月8日(金)から公開
いつも、サロンシネマと八丁座にご愛顧をたまわり有難うございます。今年は、どちら様におかれましても、大変な一年になりました。そういうなかで、映画館が運営できていることに感謝を申し上げます。そして、多くのお客様の御来場には、本当に本当に感謝を申し上げます。
わたしどもの映画館も、最大の危機に直面しておりまして、生き残りをかけて建てなおしをしています。この苦難を波と受け止めて、乗り越えていく力を養っていく所存であります。
新年もまた、よろしくお願い申し上げます。
「映画よ、今年もありがとう」
「理屈抜き。徹底娯楽映画!」という感じの宣伝文句が、昭和の映画のポスターによくあった。軽く浅く感じられるかも知れないが、こういう映画がとても大事である。大人はもちろん、小学生も中学生もお正月映画に走ったものである。
本作は、まさにそうで何も考えるまもくれないままノンストップ・ジェット・コースター・ムービーになっている。
人間を凶暴にさせる謎のウイルスで感染者あふれるソウルで、決死の脱出をはかるシンプル・ストーリー。「今度は、守る」のセリフが、よくきいている。
カー・アクションが凄いのひとこと。セットも、大がかり。人海戦術に、特殊効果も力が入っている。
感染者は、暗い所では目が見えないことから夜の行動に。が、感染者は、夜でも音には敏感でクラクションを鳴らすだけで怖いことに。
「マッド・マックス 怒りのデスロード」に影響を受けたと語るヨン・サンホ監督と脚本。日本でも人気のあるカン・ドンウォンが、主役にピッタリ。是枝裕和監督の最新作「ブローカー」{仮題)に出演という報道も。
大脱出の中、隠された大金強奪や母親とそのこども姉妹のエピソードを入れている。とくに、母親とこども姉妹の見せ場はうまい。だから、ラストがとってもいい。今の、もやもや感をこれで吹っ飛ばしたい。
カンヌ映画祭2020のオフシャル・セレクションに選出され、盛り上がり韓国では大ヒットを記録。コロナ禍の中、窮地に追い込まれた映画界の救世主作品と呼ばれている。
●1月1日(金)から公開
デッサンぽく、さらっとはけるスタッフ、キャストを表示するオープニング画面。
主人公の女流画家が、クラシカル・ファッションでブルターニュの孤島の館に小舟でむかう。波にゆられて大事なキャンバスを海に落とし、必死で飛びこみ取りに行く。
その館の貴族の娘と初めて会った日、いきなり娘は崖に向かって飛び降りる勢いでかけていく。追いかける女流画家。崖ぎりぎりで止まり、「走りたかったの」と言う。この冒頭の二人のヒロインのエピソードは、とてもおもしろい。
まずは、この孤島の館をよく見つけたものだ。海や草原の美しさに圧倒されると同時に、幽閉感が神秘的でもある。
当時は、女性のありようが男性優位のため、お見合い写真ならぬお見合い肖像画で結婚を決められていたようだ。女流画家の地位も認められてなくて、「お父さんの名前で、絵を発表するしたわ」というセリフが心に残る。
貴族の娘の肖像画を描くためにやってきた女流画家は、散歩したり、文学や音楽や恋愛などについて語っていくうちにお互い心を解放させていく。
ヴィヴァルディ作曲の「四季」より「夏」を、脚本を書いているときからイメージしていたとか。効果的に使われている。
カンヌ映画祭の脚本賞を受賞するだけのことはある、ラスト5分間は釘づけ状態になるのはまちがいないでしょう。
去年のカンヌ映画祭で脚本賞とクイアパルム賞を受賞。世界各国の映画賞124ノミネートされ44個受賞している。映画人、映画評論家が絶賛している。
カンヌ映画祭のクイアパルム賞というのは、マイノリティの人権向上にともない独立賞の一つとして、LGBTQがテーマの作品に与えられている。そして、女性の監督と脚本のセリーヌ・シアマと貴族の娘役アデル・エネルは元パートナーということも公表している。
●上映中
たとえば。言葉の意味として、「右」とは南を向いて西にあたる。大部分の人が食事の時に箸を持つ側。「船を編む」という辞書作りの映画では、10という数字の0のほうと説き明かし、時代や背景や概念がふくまれおもしろい。
本作は、完成までに70年以上かかったという「オックスフォード英語大辞典」第一版の誕生秘話で、とても興味深く見れた。2大ベテランスター共演、メル・ギブソンとショーン・ペンが作品に迫力と品格にくわえ稀有なドラマとしてもぐいぐいひきこまれる。
かつて、映画界の先輩から教わったのが映画は、「1に題名、2にポスター、3にキャッチコピー」が大事だと。その他の商品であっても、商品名やキャッチコピーには私たちは心動かされる。
また、知りたいことがあればネット検索もすぐにできる。言霊という言い方や、韻をふむなど変化進化しながらも言葉の影響力は絶大で、昔も今も変わってないかも知れない。今は、略語も多数ある。原作がベストセラーノンフィクションになったのは、うなづける。
●12月18日(金)から公開
面白く見た。肉体労働にあけくれる主人公が、独学で学び作家を目指す話である。実話、伝記物の映画化が多い中、どなたにでも満足していただけて、元気や希望をもらえるのではないか。
ある女性に出会い、教養や知識などの刺激を受けるくだりは、なるほど。
題名に、まったく無知識で、ハリソン・フォード主演の「野生の呼ぶ声」の原作者の自伝的小説という。アメリカ文学の巨人とも呼ばれているジャック・ロンドンのこと。この映画は、自然の中での冒険サバイバルが強烈だったので、この方の生き方は凄いのひとことである。
アメリカンドリームをイタリアを舞台にしたピエトロ・マルチェッロは監督と脚本そして製作も。思い入れが十分の渾身の作品であろう。
マーティン・エデン役の「グレート・ビューティ 追憶のローマ」のルカ・マリネッリがヴェネチア映画祭で男優賞を受賞。「ジョーカー」のホアキン・フェニックスをおさえての受賞だから話題になる。イタリアのアラン・ドロンと呼ばれているそうで、そのあくなき前向きの生き方は、痛快の熱演である。
映像もフィルム撮影されてよい。
下宿のおばさんが助けてくれて、恩返しをするところもとかもいい。
その他の映画祭でも映画賞を受賞。
●12月11日(金)から公開
八丁座にて、12月11日(金)より上映することが決定いたしました。たくさんのリクエストも、いただいておりまして有難うございます。
原作まんが、アニメションをごらんになってなくても、十分にその面白さをたんのうしていただける映画的魅力にあふれています。主人公の少年とその妹の役どころの素晴らしさ。さらに、まわりの登場人物も個性的で楽しませてくれます。
街中で是非とも上映!の声に、やっとこたえることができます。老若男女問わずに、受けているのがすごいです。是非、お越しくださいませ。
●12月11日(金)から公開
本年度一番の力作の問題作に個人的には、感じられる。たしかに、好みはわかれる作品であるが、ぎりぎりのところで映像表現を止めている。昨年のヴェネチア映画祭で、途中退場者が続出したことと、しかし同時に10分間のスタンディング・オベーションがおこり、ユニセフ賞を受賞している。元々の話題は原作本「ペインティッド・バード」(色を塗られた鳥)が所によって発売禁止になっていたそうで、そのことがロング・セラーにつながっていたようだ。
親が戦火を逃れさせ老婦人の所にかくまわれた主人公の少年が、その家にあるピアノで「エリーゼのために」を楽譜なしで弾くシーンがある。親元にピアノがあったのだろう。外で遊んでいて、その村の子ども達から残酷ないじめを受ける。題名がイメージする、ちがう色に見えるものにはきびしい対応をされることをここから暗示していく。老婦人が亡くなり、少年の過酷な旅がはじまっていく。それが徹底的にすごい。
あえてフイルムで撮影し、白黒のシネマスコープ大画面が観客をひきつけていく。 脚本の何度もの推敲に資金調達に、最終的に11年かけてチェコのヴァーツラフ・マルホラルが監督と脚本と製作もしている。そうでないと、出来ないだろう。しかし、セットやエキストラ多数で、ハーヴィ・カイテルなどスターが何気に出演している所に大作エンターテイメント感がある。
「人間の本質」は、変わらないのかもしれない。映画評論家の川本三郎さんは、「無垢なる残酷な物語を、事実というより物語にしているから入りこめる」と。チェコのアカデミー賞のチェコライオン賞の作品賞、監督賞、撮影賞ほか全8部門受賞している。
●上映中
様々な事情で封切り公開が出来ない作品が、たくさんあります。リクエストも多くいただいています、秀作や話題作は少し遅れましても上映をと考えております。
というわけで、お待たせしました。好評ヒットの日本映画が3本上映になります。日程がかぶってまして、申し訳ありません。
「朝が来る」は、今や日本を代表する世界の河瀨直美監督•脚本による作品。わかりやすいつくりが、いいですね。現実にはよくある、生みの母と育ての母のことだが、案外と言及されてなく。知っているようで、知らないことがらがミステリーに感じられる秀作。ヒロインの永作博美の好演(主演女優賞候補か)。ほかのキャストもいい。広島の似の島が、出てくる。
●上映中
「ミッドナイトスワン」は、かなり前からいっぱいリクエストをいただいてました。題名にかけてある、「白鳥の湖」の衣装で新宿のショーパブのステージに立つ主人公を草彅剛が演じたことが、素晴らしい。(主演男優賞候補か)。あずかる親類の少女の新人の服部樹咲(はっとり みさき)がすごい存在感を。(新人賞か)。この人たちは広島出身で、その広島弁のうまさに驚く。水川あさみも強烈に上手。
●上映中
あるテレビ局が富山県の市議会の不正疑惑を、徹底的に突撃取材していく。2人の記者の姿は、痛快であり拍手喝采である。なるほど、ヒットするはず。人は忘れる、というくだりがあるが。人々が忘れないように、こうした映画が作られるともいえる。よくぞ、映画にしたものだ。
●上映中
ドキュメンタリーの強さ。どなたがごらんでも、面白く見れるのではないか。
職業映画として、音楽レーベル創業物語のノウハウをオープンにしている。ゆえに、若い人や起業をせんとしてる人、仕事をしている人が見ても大いに参考に勉強になるのではないか。
マーヴィン・ゲイの「悲しいうわさ」が流れて、すぐに映画「再会の時」の冒頭を思い出す。あまりにピッタリあいすぎて、忘れられない。本作での「悲しいうわさ」はまた、本人歌唱の素晴らしさに圧倒される。
ダイアナ•ロスが映画「ビリー・ホリディ物語 奇妙な果実」に主演するエピソードも出る。映画「ドリーム・ガールズ」もよぎってくる。映画ネタも多い。
それにしても、黒人差別、暴動、戦争、激動の1960年代で分担した作業の車の工場方式でさらりとヒット曲をつくっていく。プロデュース、作詞作曲、編曲、振り付け、衣装、など専門家が担当。これって、何かとよく似ている。そう、映画の工場のハリウッド・スタイルともいえる。
日本映画界も、そうだった。俳優養成所があり、脚本部やセットの美術部や脇役の大部屋というものもあった。
イントロ10秒が勝負!これは凄い。たしかに、そうだから。亡くなられた筒美京平さんをふっと思い出した。あの方のイントロは、とてもユニークで人を惹きつけたものだ。
●上映中
「新・映画回数券」をお買い求めいただき誠に有難うございます。また、日頃のご愛顧をあらためまして感謝申し上げます。
天下のジョニー・デップ主演作というのに地味な公開をされている本作品。彼が選んだ作品は、ということでまず興味深い。個人的には面白く、受ける方もあるのでは。
冒頭、医師からデップはがんを宣告され、治療しなければ半年と、告げられる。題名には、そういう意味がある。大学教授で、妻と娘の不自由のない生活を。独特の雰囲気をかもし、スーツにネクタイも格好いいワイルド感とユーモアが、とても映画を見やすくしている。
人間はたしかに、いつ死ぬかわからないが、また、いつ死んでもいいようにと考える場合もあるが、なかなかにままならない。軽妙にデップのさらなる自由への好演がいい。なるほどの、適役だ。ふっと、見ながら感じさせるものもある。
●11月20日(金)から公開
熱量あふるる力作を、娯楽映画仕立てにしているところが素晴らしい。日本映画としてはけっこうふみこんでいて、ぐいぐいひきつけられる。「キツネ目の男」や「関西弁の挑戦状」が有名になった迷宮入り事件の全貌を探ることは、誰もが思いつくが誰でもが出来ない作業になる。題名は、関わった人の声のこと。
事件の背景の記憶、人間関係、偶然、運命、縁など様々な要素が明暗をわける。感情移入しやすいのが、主人公の二人である。事件を調べる新聞記者(小栗旬)がイイ。私生活をみせない、彼女がみえない設定がニクイ。(主演男優賞にノミネートされるかも)。
テイラー(仕立て屋)の星野源もおさえて好演。職業映画として見ると、さらに面白い。新聞記者になりたい、スーツを仕立ててみたくなる気分にさせる。
広島出身の「映画 ビリギャル」「いま、会いにゆきます」土井裕泰(どい・のぶひろ)監督の代表作になるのでは。TV(テレビ)「逃げるは恥だが役に立つ」でコンビを組んでいる 野木亜紀子の脚本も脚本賞にノミネートされそうな出来ばえ。
「女囚さそり」で警察と対立する役で大熱演した梶芽衣子の助演も渋い。
実際に起こった事件を基にフィクションとしてつくっている発想は、鋭い。多くの人に見ていただきたい一本である。
●上映中
「実際にあったウソに基づく」から笑える。オークワフィナがゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞。前へ出る役の女優だが、おさえた好演。写真を撮る時に、「チューズ」(茄子)と言うんだ。中国系米人の女流監督、脚本の中国描写が美しい。アメリカ映画です。
●10月23日(金)から公開
■「mid90sミッドナインティーズ」が好評。アカデミー助演男優賞候補2回のジョナ・ヒルの監督デビュー作。10代は今を生きている自分の土台があるかもしれない。妹が「ブックスマート」のヒロインという。
■がぜん注目され出した「82年生まれ、キム・ジヨン」。近年の重要作との批評もあり。
●「mid90sミッドナインティーズ」上映中
●「82年生まれ、キム・ジヨン」10月9日(金)から公開
■「最強のふたり」同様に実話の映画化。弱者の社会的問題をユーモアとともにありのまま描いている良心作。フランス本国で200万人突破の動員もすごいが、製作できる背景もすごい。
■ヒットの「なぜ君は総理大臣になれないのか」の上映もあり。
●「スペシャルズ!」10月16日(金)から公開
●「なぜ君は総理大臣になれないのか」10月16日(金)から公開
女性には共感を、男性は身につまされる程の力強い吸引力の秀作。韓国で初登場1位の大ヒット。原作はベストセラーで日本版の顔のない表紙も話題に。ジヨン役は主演女優賞を、40代の女流監督のデビュー作で新人監督賞受賞。原作の脚色がうまい。
●10月9日(金)から公開
出ました!コロナを吹っ飛ばしてくれる大快作だ。低予算だが、そこに知恵とアイデアと愛がある。暴力、下ネタなし。個人的にことし一番面白い日本映画。脚本、俳優、映像、音楽(ブラスバンド)イイ。1時間15分の上映時間も濃厚。これも原作の脚色が見事である。
●10月2日(金)から公開
映画の音響の出し方がよく分かる。誰もがやっていない映画の音作りをする音響編集者の狂気ぶりは半端じゃない。「テネット」のノーラン監督もしゃべる。「浅田家!」は写真一家の物語。「写真は未来に向かうための武器にもなる」なるほど。
●「ようこそ映画音響の世界へ」10月9日(金)から公開
●「浅田家!」10月2日(金)から公開
深刻な映画の多い中、大好評ヒット中の痛快明朗映画。ひとあじ違う女の子2人に大いに笑おう。自己否定する相手に自己肯定をさとす場面は友情映画の見せどころ。全米映画祭65部門候補で25部門受賞の快挙。題名はガリ勉の世間知らずの主役2人のこと。
●9月18日(金)から公開
最近では一番の映像の美しさにまずひきこまれる。007の上司M役だったジュディ・デンチがスパイ容疑で年老いて逮捕される設定がにくい。この実話も原子爆弾、ヒロシマが。女性の判断は、常に平和的だ。男社会は危険にみちているかのごとく。
●9月18日(金)から公開
「真夏の夜のジャズ 4K」はアメリカ国立フイルム保存委員会が4K修復版にしていて画質・音質良好。ルイ・アームストロングの圧巻の舞台を。古き良き時代の香りが。
「ひまわり」は、初公開から50周年記念。日本でデジタル修復するくらいの人気作品。
「パブリック 図書館の奇跡」もいい。
●「真夏の夜のジャズ 4K」「ひまわり(50周年HDレストア版)」9月18日(金)から公開
●「パブリック 図書館の奇跡」9月11日(金)から公開
映画館の「音響」のほとんどは、スクリーンから出ている。
正しくはスクリーンには無数の「穴」があいていてその「穴」を通して観客席に真っ直ぐに伝わる。スクリーンの後ろに巨大なスピーカーが3台鎮座している。センタースピーカーはセリフ中心で俳優のバストショットの唇に位置し、レフトスピーカーとライトスピーカーもそれぞれ音楽や効果音など別の音が出る。どの席に座っても画面中央からセリフが聞こえるようになっている。だから「映画館」は迫力満点の「臨場感」がえられる。
その3台のスピーカーの間にサブウーファーという超低音域のみを出すスピーカーが1台。館内の壁のサラウンドスピーカーはヘリの移動音や風の音や時にセリフが4台1組で左と右を担当する。いわゆる5.1チャンネルがこれ。当館は後ろ壁も同様のスピーカーを配し、7.1チャンネルである。
これで「映画館」は、「集中」もできるのです。
幅広い層に見て頂きたい面白さ。パヴァロッティの表舞台はもちろん凄いが、私生活はさらに。そこをアカデミー賞受賞のロン・ハワードがドキュメンタリーのエンタメ構成で。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の録音技師が聞かせる迫力満点の音響。
●9月4日(金)から公開
子供番組有名司会者と雑誌記者の実話。トム・ハンクスはアカデミー賞助演男優賞候補に。彼は、名前のせいでいじめられてる8才の少年にスミスコロナ製のタイプライターをプレゼント。コロナは太陽の周りの光の輪。君にぴったりだと励ます。この映画そのものである。
●8月28日(金)から公開
「ソワレ」は小泉今日子さん初プロデュース作品で話題に。日本映画界に新風を吹き込む。「オフィシャルー」はよくぞ作ったりの快作。女性政府職員の実話をキーラが好演。ヒロシマが出て驚くが、このヒロインは広島で英語を教えてた。説得力がある。
●「ソワレ」8月28日(金)から公開
●「オフィシャル・シークレット」9月4日(金)から公開
この世に起こることは全て必然で必要でそしてベストタイミングという説がある。中島みゆきの人気曲を初恋の男女の物語とし文字通り縦の糸と横の糸に見立て菅田将暉と小松菜奈が熱演。助演も、ロケも見どころ。「ファイト」の唄もしみる。
●8月21日(金)から公開
本国スウェーデンでは初登場1位の大ヒットを記録。専業主婦一筋のヒロインが、ある出来事を機に家を出る。掃除、洗濯、片づけの必殺技を武器に田舎の施設で第二の人生を目指す。捨てる技術に、なるようになるさ精神に共感がわく。
●8月14日(金)から公開
暗数とは、犯人の自白あれど警察が把握してない事件のこと。嘘かまことか。主役の刑事はとことん調べる。犯人は饒舌に告白する。実話をもとに、とにかく観客を引っ張っていく。どこの国でもありえると感じさせる妥協なき製作力が凄い。
●8月21日(金)から公開
誰にでもおすすめしたい本年屈指の素晴らしさ。中2の少女の純粋さと塾の女先生の謎の存在感と「自分が好きになるには時間がかかる」などのセリフのとりこになる。二人共、左利き。名場面の数々は脚本の良さ。少女をイメージしたひらがな題名も素敵だ。
●上映中
ローズ役のジェシーは「ジュディ 虹の彼方に」で好演。本作で主題歌賞をとる歌詞に「かかとを3つならし」が出る。名曲「虹の彼方に」の「オズの魔法使い」のこと。「オズの・・」「うちほど、いい場所はない」の名セリフがつながっていくラストが泣かせる。
●8月7日(金)から公開
凄いと好評の若尾文子映画祭。いよいよ13日迄。広島映画の「その夜は忘れない」、「清作の妻」(広島の至宝、新藤兼人脚本で若尾さん自身一番好きとか)、「しとやかな獣」(これも新藤兼人脚本)。「赤い天使」は日本映画史上に残るかもの強烈傑作。どれもハズレなしです。
●上映中
感動すると免疫力が上がるとか。お待たせしました。広島の巨匠の大林宣彦監督の遺作の公開です。好評上映中の「男はつらいよ」の山田洋次監督の本作への『とにかくおもしろい』の絶賛の言葉につきます。キネマ旬報のベスト1になって欲しいです。
●7月31日(金)から公開
■絵画ファン必見の2本。貧しい老画商が運命の絵にすべてを賭ける。本物かのミステリーありの、ちょっといい話で終わる佳作。
■プラド美術館が初めてスクリーンで見れる。スペイン王室が「心で選んだ」世界最高峰の美術品。案内俳優の高貴さも心地よい。
●「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」7月17日(金)から公開
●「プラド美術館 驚異のコレクション」7月24日(金)から公開
本国フランスでは本作の事件の裁判と映画の公開が重なり、公開差し止めを要求されさらに大きな話題に。神父の少年たちへの性的暴行事件を、訴えれば一生言われる、と悩みながらも被害者が立ち上がる。「2重螺旋の恋人」などの人気監督オゾンが勇気を持って映画化する。
●7月17日(金)から公開
多くの好評の声。キネ旬では評論家の二人が絶賛。アレン監督の生涯最高傑作でも良いと思わせるとも。軽妙洒脱なラブコメはどなたがごらんでも面白い。シャラメの弾き語りに、母親との秘密の会話は絶品。キネ旬の何位に入るか楽しみだ。1時間32分もいい。
●7月3日(金)から公開
大林宣彦監督の追悼で何としてもスクリーンで見ていただきたい。スタッフやキャストの、ヒロイン原田知世への想いにあふれたアイドル映画の傑作いや「原田知世映画」として永遠になる。エンディングは思い出の場面と共に主題歌を唄うはなれ技にまた見たくなる。
●7月10日(金)から公開
美青年ドラン監督は同性愛を公表しそれを誇りにした作品をつくる。男優とファンの少年の文通。名画で名曲の「スタンド・バイ・ミー」(僕のそばにいて)が切なく美しく流れる。アカデミー女優3人ほかキャストが豪華。ナタリー・ポートマンは少年の母親役を熱演する。
●7月3日(金)から公開
好評につきまして、「サウンド・オブ・ミュージック」のアンコール上映をしています。スクリーンで見てこその、スクリーンでは当分見れない作品でして、親子3代で見れて、ずっと語りつがれていく名作中の大娯楽映画でもある素晴らしい作品ですので、残り少ない上映日数ですが、是非ごらん下さいませ。一生の想い出になるくらいの作品です。
「ビッグ・リトル・ファーム」も、こちらも好評をいただき、続映しています。地味ながらも、本年の拾い物の元気ややる気を与えてくれる好運の映画ともいえるくらいです。この作品も、残り少ない上映日数ですがおすすめします。コロナ禍の、今こそ見てほしい快作です。
『男はつらいよ』シリーズがスタートしています。こちらもごらん頂いた方には、大好評です。すでにごらんになられている方も多く、いらっしゃいます。しかし、コロナ禍の今、見ると、また味わいがちがって見れるんですね。笑いと涙、それに実は深い傑作でしてさまざまなことを感じさせてくれます。
一番は、主人公の寅さんが名もなく貧しくても楽しい自由な生き方は、明日も仕事を、学校を、つまり自分も頑張ろうかと思わせてくれるのです。
日本の、こんなに美しいところがあるかと、いつも思うロケ地を見るだけでも、日本がすきになっていきます。
シリーズは続きます。どれか、ごらんになって見てください。人気作をならべています。
私生活をつっこまれアメリカでは公開中止なるがヨーロッパで、そして日本公開である。体験と創造で男女のラブコメを独特の切り口で見せるアレン監督・脚本84歳健在。女優選びはいつもこの上なく、「わたしの若草物語」快演の美青年シャラメ主役はうまい。
●7月3日(金)から公開
原作の舞台であることからこの題名が。マクロン大統領も鑑賞しフランスでは大ヒット。ルースは主役の名。作品に力があり、最後まで引っ張られる。教師役のオクタヴィア・スペンサーが圧巻の存在感。二本共、状況改善のために作れる製作姿勢に圧倒される。
●「レ・ミゼラブル」上映中
●「ルース・エドガー」6月26日(金)から公開
人気監督アルモドバルの「苦痛と栄光」の日々を描く。バンデラスがしぶく好演。「ガーンジー島」は見た人の評判がすこぶる良い拾い物作品。「ベイビー・ドライバー」のリリー・ジェームズと島がイイ。「男はつらいよ」シリーズがスタートしてます。
●「ペイン・アンド・グローリー」6月19日(金)から公開
●「ガーンジー島の読書会の秘密」6月26日(金)から公開
新作映画がほとんど延期になっているのをこれでは映画界がすたれると、「心意気ですよ!」と公開を早めた配給会社ソニー・ピクチャーズ様に拍手ですね。
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」が6月12日(金)より公開になります。
「レディ・バード」(2017年)でアカデミー賞の作品賞・監督賞(本人)、シアーシャ・ローナンの主演女優賞、脚本賞(本人)などがノミネートされたことで、一躍、グレタ・ガーウィグが注目されたのです。「レディ・バード」のもとの題名は「母と娘」だったそうで「レディ・バード」はヒロインの自称で、たとえは悪いですがピンクレディの♫私の名前はカルメンです ああもちろん あだ名にきまってます…みたいな、ちがいますね。
それはともかく、「フランシス・ハ」(2012年)、「20センチュリー・ウーマン」(2016年)では個性派美人として女優の存在感も魅力的な人です。実は「フランシス・ハ」の製作・監督・脚本が、ノア・バームバックでグレタは共同脚本に名を連らねています。現在は、グレタの御主人として名を連らねており、「マリッジ・ストーリー」の製作・監督・脚本がノア・バームバックで、この作品で弁護士役のローラ・ダーンがアカデミー助演女優賞を受賞しています。本作では、ローラ・ダーンは4姉妹の母親役として出演しています。
グレタはもちろんパートナーも個性が強いヒロインのいる家族を描いたら天下一品ってことです。グレタにとって、「若草物語」のシアーシャの演じたジョーが少女時代のヒーローだとしたら、これを書いたルイーザ・メイ・オルコット女史は大人になってからの私のヒーローね、と語ります。
原作小説は150年以上も前に書かれており、女性の芸術的成功がほぼ不可能と思われた時代の先駆者として、そしてグレタは今の映画界の男性優位も思い入れにあったかも知れません。もの書きというところでもグレタと共通点がありますね。かなり前からすでに、「若草物語」を脚色していて、注目されだしたこのチャンスに賭けたのです。
グレタについて、「普段のグレタのように、映画が完成されていったのが素晴らしい」と、おばさん役の大女優メリル・ストリープは大いに彼女に期待と賞賛をよせています。メリル・ストリープのおばさん役も、なかなかにみせてくれます。女性のスターとスタッフでおくる、この作品が多くの方に見られることを切に願います。デジタル時代にフィルム撮影にいどんだのも、驚きます。美しい映像は、アカデミー賞衣裳デザイン賞を受賞したそれぞれの衣装にも反映されて見どころのひとつでもあります。渾身の想いのあらわれでしょう。
●上映中
四姉妹の生き方の選択を豪華女優陣で見せて、誰かに自分がかぶるかの面白さ。主演女優賞候補のシアーシャと助演女優賞候補のフローレンスの熱演が光る。「レディ・バード」の36歳女流監督グレタは脚色賞候補に。美青年シャラメも出演。女の園が、みごと。男性必見かも。ホープ・アンド・キープ・ビジィ Hope and keep busy.希望をもって、忙しく!
●6月12日(金)から公開
「パラサイト」は「今年の映画」の別名をもちアカデミー作品賞他全4部門、カンヌ映画祭最高賞も受け世界中で大ヒット中。是非に!同じ韓国映画の「スウィング・キッズ」も口コミで好評。エンターテイメントに、突然レスラーが吹きまくる毒霧(どくぎり)の技を持つこの国の発信力はものすごい。
●上映中
5月29日(金)に再開しまして、さっそくのお客様との再会に喜び、励ましのお言葉や差し入れなど本当に有り難うございます。本作は地味ながら、元気が出る。何かをやりたくなる。幸福感が味わえる。世界の映画祭の観客賞をとるはずだ。愛犬のため郊外に移り住んで農場を始めるカップルのハラハラドキドキは釘づけになるほど。
●6月5日(金)から公開
元気が出る。何かをやりたくなる。幸福感を味わえる。どなたにでもおススメの必見作が、このタイミングでの公開が嬉しいです。一部雑誌でも大評判。
冒頭シネマスコープ大画面に「おおう!」と驚いていると、まさかのハラハラドキドキ大冒険映画になっていくではないですか。愛犬の泣き声でアパートを追い出されたカップルがロス郊外に移り住む。そこでかねてよりの夢の実現にチャレンジする。そして、ウソのような本当の話しに釘づけになる。そういえば、地上はコロナのある夜、うっとりする美しい月の連夜に見とれていた。「一番大きい小農場」の意味も粋である。
大自然界の共生共存に、目からうろこが、だまされたつもりで、必見です。
●6月5日(金)から公開
笑かす。主役達がイイ。ビル・マーレイはおさえて、アダム・ドライバーは絶好調、ティルダ・スウィントンは怪演で、魅せる。田舎の設定もイイ。主題歌の使い方がおかしくうまい。本作の為のオリジナルとは思えないノスタルジー感がすてきだ。題名の「死者は死なない」は、ヒッチコック監督の「サイコ」など名監督は死んでも死なない、みたいな感じかも。人気監督ジャームッシュは残虐的でない撮影のきれいさで、さらりと見せる快作にしている。今見ると、生けるしかばね(ゾ○ビ)映画はさらに面白く、深い。人気監督ジャームッシュは、「通りを行き交う人々が携帯を見入っている様子がまるで、ゾ○ビのようだ。皆は自分のことしか考えてない」と製作を。
ポスターにまどわされず、どなたがごらんでも映画の魅力は満載です。
●6月5日(金)から公開
「再会スタンプカード」が3回うまると、1本が無料でご覧になれるサービスをスタートしています。
「ローマの休日」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ、「ウエスト・サイド物語」、「サウンド・オブ・ミュージック」、「男はつらいよ」シリーズなど、名作ぞろいをスクリーンで見れることは映画的奇跡です。
コロナ問題で、旧作の上映期限を延期してくれた配給会社様に、ただただ感謝です。
●「ローマの休日」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は上映中
いつも、サロンシネマと八丁座をご愛顧のほど有難うございます。御礼申し上げます。
新型コロナウイルスの感染抑制にむけて出ました休業要請をうけて、休館しております。
皆様におかれましても、私たちスタッフも元気でまたお会いできる日をお待ちしています。
予定の新作映画が延期になっております。
安心安全のなかで映画が見れるしあわせ、上映できるしあわせを、しみじみと感じる毎日であります。
「海辺の映画館ーキネマの玉手箱」の、当初の初日である4月10日に、広島も尾道も誇る大林宣彦監督がお亡くなりになりました。享年82。
ショックを受けながらも、命がけの宣伝をされている大林監督のお心も察しられ、ただただご冥福を祈るばかりです。
大林監督は、お話しの名人でもあられます。実に、わかりやすくて興味深い内容を話されています。
本作での、大林宣彦監督の言葉です。
「いまも肺がん第4ステージ、余命3ヶ月。余命3ヶ月の体で2年間を生きて映画を撮っています。元気ですよ」
「映画が、いちばんの薬」
「映画のたしなみは、現場のたしなみは、若い人に学んで身につけていってほしいし」
「それが基本にあって、僕たちがたどりつくことのできない新しい映像というものが彼らの力で発揮されていくと」
「大林よ、いま、この映画をつくって若い人たちに伝えよということが天命」
「必ず生きてなきゃいけないから、死んでいる暇はないですね」
「簡単に、あきらめないぞ」
「映画で歴史を変えることはできないが、未来の歴史を変えることはできるのかも知れない」
(大林宣彦監督語録)
すごいですね。
奇跡の映画を是非是非ごらん下さいませ。
大林宣彦監督追悼上映も企画しています。
公開日は、決定しましたらお知らせいたします。
映画中に、当時の週刊誌の人気ベスト10の1位三島由紀夫、2位三船敏郎が出る。35歳で「からっ風野郎」に主演。若尾文子と共演。主題歌も歌う。原作、監督、主演の「憂国」と助演の「人斬り」は切腹場面がある。45歳、切腹自決。映画を超えたスタアが居た。ヒット中!
●上映中
原作者のロマン•ガリは「勝手にしやがれ」のジーン•セバーグの夫で彼女主演で「ペルーの鳥」は原作、脚本、監督でつくる。「史上最大の作戦」の脚本も。拳銃自殺。フランスの三島由紀夫と評される。極貧のシングルマザーと共にいかに才能を開花させたか。
●3月27日(金)から公開
痛快娯楽映画の決定版である。昨年度末集計の韓国映画のヒットNo. 1は納得。動員1600万人を突破。原題は「極限職業」のことで、宣伝の揚げる大捜査線よろしく、いかにして犯罪組織をあげるか。笑いと捜査とアクションに5人組(女性1人もいい)の個性もお見事。必見です。
●3月27日(金)から公開
広島出身の諏訪敦彦監督がベルリン映画祭受賞の凱旋上映になる。喪失感にうずもれたヒロインは広島から故郷の岩手に大人達に支えられ実在の「風の電話」にたどり着く。スター男優3人が作品に力を与える。思い出してあげる人が居なければ忘れられるは、心にしみる。
3月27日(金)から公開
あの名作の53年後を同じ監督と主演俳優と音楽家が集結してつくるなんて。全員80歳以上を聞けば、皆んな元気になるだろう。監督の「ランデブー」のパリ市内大激走(驚異の撮影)や1966年版をおりまぜ♪ダバダバダも健在の、すごい映画を見た。
3月13日(金)から公開
ベルリン映画祭初2冠受賞。女流監督H IKAR Iさんが脚本、製作も。題名は37秒のことで、車椅子生活のヒロインの仕事が漫画のゴーストライターが興味深い。独立を目指し変化成長していく。その体当たり熱演の佳山明(めい)さんが明るく感動的である。
3月13日(金)から公開
レネーが主演女優賞に。イメージが変わるほどに大女優で歌手のジュディ・ガーランドを熱演。本人歌唱で相当、練習しただろう。ジュディは17歳で『オズの魔法使』に歌のうまさを買われ大抜擢。「虹の彼方に」を唄いスター誕生となる。古き良き時代の映画の作りかたが興味深い。
3月6日(金)から公開
人間関係をさらりと見せてこれが面白い。絶好調30代のアダムとスカーレットの最高の演技に釘付け。冒頭の長所と好きな所はアイデア抜群。助演女優賞のローラも文句なしの迫力。ラストに用意されてる歌に驚き、靴ひもを結び直すスカーレットの場面が心に残る。
2月28日(金)から公開
編集賞と音響効果賞を受賞。その見応えは映画館の画面と音で体感して欲しい。と同時に仕事に対する愛と狂気に泣かされるというすぐれもの。『星屑の町』、のんさんの昭和歌謡の歌いっぷりはたいしたもの。自己犠牲あふるる菊之助の『ナウシカ歌舞伎』の後編も是非に。
3月6日(金)から公開
アカデミー作品賞はのがすが、撮影賞、視覚効果賞、録音賞の3部門受賞の快作。受賞の映像の魅力は圧倒的である。話しがシンプルかつ細部のエピソードもいい。製作費約110億円のスケール感はサスペンスフルな音楽とあいまって迫力満点。リピーター映画になるかも知れない。
2月14日(金)から公開
それにしても「パラサイト 半地下の家族」の外国語映画初の作品賞は快挙、全4部門受賞。会場で題名がコールされるたびに歓声が。「ジョジョ・ラビット」は、脚色賞。ラストが感動的。「スキャンダル」はメイクアップ&ヘアスタイリング賞を日本出身のカズ・ヒロさんが受賞し注目度をあげる。
2月21日(金)から公開
菊之助の冒険挑戦の精神は凄い。構想を5年前からしていて、宮崎駿の全7巻の漫画「風の谷のナウシカ」を前編と後編で古典歌舞伎の要素を入れて通してみせるという。ジブリ映画は2巻までの脚色。父は七代目尾上菊五郎、母は大女優の富司純子、姉も女優の寺島しのぶ。一見の価値あり。
【前編】2月14日(金)から公開
【後編】2月28日(金)から公開
アカデミー脚本賞ノミネート。原題の意味は「ナイフを出す」。キャストがすでに微笑と推理だ。探偵役に007シリーズのダニエル・クレイグ。人気のクリス・エヴァンスは怪演で盛り上げ、看護師役に新作007に出演の女優。おんとし90歳の大作家富豪役がクリストファー・プラマーで、出演者全員を食うほどの貫禄をみせる。
1月31日(金)から公開
アカデミー賞10部門ノミネート。ここにきて、風向きがこの作品に吹いている感じがする。世界情勢は、戦争を恐怖している。題名は第一次大戦のことで副題がいい。そして、映像が最初から最後までひとつになったワンカットの映像美が超話題になってきている。「ジョジョ・ラビット」の受賞やいかに!?
2月14日(金)から公開
アカデミー賞3部門ノミネート。原題は「爆弾」。大手TV局でのセクハラ事件を、トップ女優3人で爆弾発言する強烈痛快映画。トランプなど実名で映像も出る。よく、つくれたものだ。シャリーズは主演と製作も(凄い)。ニコールとマーゴットとの3人並んだエレベーターのナイス場面!メイク&ヘアーも注目が。
2月21日(金)から公開
トロント映画祭観客賞受賞の勢いでアカデミー賞もとれるか?ヒトラーを敬愛している心優しき少年と勇敢な母(スカーレット・ヨハンソン好演)の物語は、ビートルズの歌が流れたり、ドイツ人に英語のセリフをしゃべらせ、あえての大胆なアイデアとユーモアでみせる。映像も素晴らしい。
1月17日(金)から公開
人気絶大の岩井俊二監督・原作・脚本・編集の最新作。一人の中年男の、姉妹との過去と現在。十代の少女を描かせたら天下一品の方だから初恋と追憶の日々のくだりは圧倒的である。出身地の宮城県を初めて舞台にし、撮影は凝っている。アート映画でないところがいい。
1月17日(金)から公開
多くの人々から愛され続けている舞台ミュージカルの映画化は想像以上にプレッシャーがかかるだろう。「英国王のスピーチ」でアカデミー作品賞と監督賞他4部門受賞、「ラ・ミゼラブル」も同賞3部門受賞のトム・フーパーが監督と脚本と製作に決まる。新技術に時間と費用がかなりかかる。名曲「メモリー」は画面で聞きたい。
1月24日(金)から公開
本年度の一番の日本映画の傑作ではないか。縁と運とが交錯する。すずと周作は冒頭の人さらいでめぐり逢っている。で、嫁にもらう。すずの祖母の家での座敷童子は、リンに思える。すいかと浴衣の柄と垂らし髪と広島に居た‥。福屋百貨店も聖地だ。
上映中!
聖地といえば、八丁座の前身は松竹東洋座であった。ここで「男はつらいよ」シリーズを盆と正月に見た方も多いだろう。私もそうだ。広島の寅さんの聖地である。是非ここでご覧下さいませ。実は、「男はつらいよ」をタカノ橋サロンシネマで何年間か上映してきた時期もあった。
12月27日(金)から公開
映画評論家の淀川長治さんが「ローマの休日」のローマとホリデイの字体が違うのをしっかり見てと。ローマの休日でありロマンの休日でもあるからそうしてると。こんなに素晴らしい映画はない、人生で忘れられない一本と誰もが絶賛する。2019年はオードリー・ヘプバーン生誕90年と福屋90周年が重なっている。
1月3日(金)から公開
「男はつらいよ」シリーズは永久不滅であることを感じさせる!これを機会に配信でも見るきっかけになって欲しい。渥美清さんの寅さんのセリフ回しは絶品である。過去作で登場するが、画質も音質もいいから現在との違和感がないのがすごい。さくらさんの若い時や、吉永小百合さんや八千草薫さんなど女優史として見ても楽しい。
12月27日(金)から公開
未亡人グレタが電車にバッグを忘れる。若い女性が見つけ届ける。親切に。そこから映画の醍醐味が満載のサスペンスになっていく娯楽作。フランスの大女優とアメリカの人気女優のナイス・キャスティング。「クライング・ゲーム」などの名監督作。新手の危険な罠の学習にもなる。
12月20日(金)から公開
日本の大手コンビニの相次ぐ不祥事はリアルに怖い。本作もフランチャイズ(個人事業主)という甘い響きに魅せられた主人公が、結局は劣悪な労働時間と理不尽なことばかりで家族を養うことも大変だ。常に弱者の立場を理解し訴えかける巨匠監督。他人事ではないことを、気づかせてくれる。
12月27日(金)から公開
「おお春、春南方のローマンス」と、映画に音声が無かった頃に世界でもまれな画面の解説とセリフを一人何役の音楽付で演じる活動弁士。役者よりスターだった。日本の語り文化の素晴らしさ。その物語だ。サロンシネマにあるのがまさに弁士台で新装開館の時には澤登翠さんに実演をお願いした。
12月13日(金)から公開
本当に大変長らくお待たせを致しました。申し訳ございませんでした。先行試写もされていますが、さらに6分ともそれ以上とも言われている追加映像は、公開日までみれません。すずさんと同世代のリンさんの、「女ごころ」はいかに。
12月20日(金)から公開
軽く見て楽しいえりすぐり再映シリーズ。「Tー34」は、ロシア映画史上オープニング最高記録をつくった大活劇大作。ラブロマンスもあるので女性がごらんでも面白い。「ジョン・ウイック」はキアヌも凄いが、女優のハル・ベリーと愛犬の絶品大活躍は何度も見たくなるほど。必見!
「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」12月13日(金)から公開
「ジョン・ウイック:パラベラム」12月20日(金)から公開
普通であることの幸せを、しみじみ感じさせてくれる近年まれな純情快作である。島根県の一級河川の高津川。行って川も星も見たくなる。かの地で生きる主役の甲本雅裕さんと広島出身の戸田菜穂さんの、役もいいがおさえた名演に拍手喝采!
11月29日(金)から公開
見たことがない、今年一番の不可思議強烈映画の傑作。ヒロインは人並み以上の嗅覚を武器に税関勤務。つかみから凄い。人間動物、男女、美醜、善悪、愛憎、貧富、国籍出生の色を混ぜ合わした絵か詩の如き魅力。カンヌ映画祭ある視点グランプリ受賞。
11月29日(金)から公開
スマホと共に生きる中学生最後の年(原題8年生)を描いて、全米4館スタートから1084館の大ヒット。監督自身が高校生ユーチューバーで有名になり、これが映画デビュー作。無口な主役少女の自撮り動画の場面は、なるほど見せる。父親役に共感する人も。映画賞を多数受賞してる。
11月29日(金)から公開
人生最悪の状況がおとずれたら、どういう行動をとるかを学ぶ映画かも知れない。絶対的に、人をあやめてはいけない。家族関係ならば、なおのこと。想像以上の悲劇がおこる。では、どうするか。それは、逃げることだ!逃げる勇気だ。
11月8日(金)から公開
主役はホテルの従業員と宿泊客だから、人ごとではない。テロリストの襲撃に屈せず対処したから死者が少なかった実話である。「ダイ・ハード」を思い出させる映画力で一気に見せる。こういう、世界中の若すぎるテロリストに、ゾッとし胸が痛む。
11月15日(金)から公開
名もなく貧しく変人扱いされる画家ゴッホは美しいものを残したい一念で、農民や自然を27歳から10年間で膨大にかく。画家でもある監督と一級脚本家で、37歳の生涯を「自殺」でない視点で見せるところが心にしみる。ヴェネチア映画祭 最優秀男優賞 受賞。
11月8日(金)から公開
見た人が絶賛する本年の拾い物のナンバー1。クリスチャン・ベールが格好良いの一言。活劇ドラマで映像も音響も各別。ロザムンド・パイクも見せ場満点。なんて素敵なラスト・シーンをつくったことか。シャラメ君も出ている。是非ご覧くださいませ。
11月1日(金)から公開
主演女優賞を総なめにした「淵に立つ」で監督が惚れこんだ筒井真理子さんとの再タッグ作は、筒井さん出ずっぱりの体当たり。予想外の運命に向かうよこがおの美しいミステリアスなヒロイン。絶好調の市川実日子さんとの競演も見どころのひとつ。
10月25日(金)から公開
映像がきれいなことに驚いて、調べてみるとこだわって35ミリフィルムで撮影したという。パリでの大規模ロケも迫力がある。音楽家(福山雅治)とジャーナリスト(石田ゆり子)が中年を過ぎて、めぐり合い・すれ違い・再会・そして・愛の行方はどこにいくのか。
11月1日(金)から公開
見終わると、これくらい面白い話しはないかもと納得する。誰も考えない、考えても作らない本作は映画と音楽への愛にみちた監督と脚本家。その2人が製作者にまでなりエンタメ界に勝負をいどんだ。貧しい青年が突然注目の人パターンにロマコメのうまさ。ヒロインが最高だ。
10月11日(金)から公開
冒頭の写真に澄んだ歌声(伊東ゆかり)が流れる。ヒロインの明るさや大胆さピュアさを感じさせる如く。食べながらのふたりの会話がおかしいほどに自然体なのは、映画で見たことないくらいだ。笑いも出る。主演のふたりはキュートに凄いの一語。「相性」とは、なかなかに深い。
10月17日(木)まで上映
現代を象徴しているのか、恵まれない環境下の子供たちの映画が多い。貧しさで学校にも行けない14歳の少年が図書館の本で運命を変える。監督・脚本・出演は「それでも夜は明ける」のキウェテル・イジョフォーが、10年かけて完成した実話の映画化である。世界中でヒット中も嬉しい限り。
10月17日(木)まで上映
冒頭、スタッフやキャストを紹介するタイトルバックは、 黒表紙のアルバムが開かれ男女が写っています。プライベートな きわどい写真なので主人公の想い出と想像できます。そのバックに なんとも魅力的な歌声で、♪早く抱いて うまく抱いて、と流れて きます。曲名「早く抱いて」、歌っているのは「小指の想い出」や 「恋のしずく」の伊東ゆかりさん。ここから、もう、この世界に 引き込まれる人は引き込まれるでしょう。
かつて恋人だったふたりが、何年かぶりに故郷の秋田で再会します。 ヒロイン直子は、その恋人と別れてから大きな変化はなく過ごし、 10日後に結婚式をひかえています。 男主人公賢治は、直子と別れたあと結婚や離婚をし子供とも会えない、 仕事先も倒産したりして、今はバイト暮らしです。苦悩もしたようです。 アルバムと女性ボーカルの冒頭は予想通り、ヒロイン目線で直子は 黒表紙のアルバムを賢治に見せて、「今夜だけ、あの頃に戻ってみない」と 誘います。賢治は拒否するのですが、直子は横に座ってとソファー を何度も何度も叩きます。
好みは分かれるかも知れない、R18(18歳未満禁止)がついています。 ふたりの性愛場面が満載ではあるのですが、エロチックとも違う、 なかなかに様々なことを感じさせる今年一番、私自身は心にしみた作品です。 思っきり明るく、おかしいくらいなタッチなんですね。それは、ふたりが ラーメンを食べるところから始まる食べるシーンが、めちゃくちゃにキュート なんですね。食べながらの会話が、5歳年下の直子の方が説教っぽく言うので 笑いも出ます。すでに東京などでは公開されていて、女性にとても受けているのは よくわかります。
この自然体のセリフ回しをした直子役は、瀧内公美さん。(「日本で一番悪い奴ら」、「彼女の人生は間違いじゃない」)。賢治役に、柄本佑さん。(「君の鳥はうたえる」、「アルキメデスの大戦」)。ふたりが大熱演しています。 俗に言う人間の三大欲、「食欲」、「睡眠欲」、「性欲」をとことん徹底してみせているのですが、ここまでオープンにピュアになれるカップルはお見事のひとことです。
軍服を着た兵隊が道を往来する時代に、情愛に溺れる「愛のコリーダ」(大島渚 監督)を、ふっと思い出された方もあるかも知れません。戦争も自然災害も、 人間の普通のいとなみや自由を奪いますからね。とことん、本能の人間を 賛歌しているのでしょう。
「赫い髪の女」から「Wの悲劇」、「幼な子われらに生まれ」の 名脚本家の荒井晴彦さんの脚本と監督。来年のはじめの映画賞の ベスト10が楽しみです。
NHKで是枝監督とケン・ローチ監督の対談の番組で「家族が面白いから、分からないから、もっと知りたいから描く。こうあるべきと考えるべきではないから、見た人は悶々として欲しい」と。なるほど、だからいつも悶々とするのか。天下のドヌーヴとビノシュで、意味のある真実とない真実をさぐりだす。是非に。
これもNHK番組「忘れられた“ひろしま”」をごらんでしょうか。お陰様で多くの方に知られるようになってきた幻の傑作のアンコール上映です。1953年当時のカンパ資金は4000万円に。(現在の貨幣価値は2億5000万円)。実現に賛同した一流の俳優とスタッフ。出演者8万8000人の超大作として完成する。
ところが、配給会社がアメリカに気を使って上映中止に。広島の人ですら見た人が少ない。いま、やっと再上映の波がきている。必見です。
そして、この「ひろしま」(‘53)の場面を何ヶ所か入れて6年後に製作されたのが本作である。福屋デパートの前を歩く主人公たち。福屋のロゴマークが印象的。福屋創業90周年記念上映。
「好みが分かれる」作品が多いので、おすすめ映画が難しい。「ゲット・アウト」でアカデミー脚本賞受賞のジョーダン・ビールが監督・脚本・製作。独特の黒人視点のスリラーは全米で大ヒット。日本でも受けている。「Us/アス」(私たち)には、US(ユナイテッド・ステイツ)のアメリカの意味もある説に納得。(9月11日現在・サロンシネマで上映中)
カンヌ映画祭最高賞の受賞など英国の巨匠マイク・リーの新作には、あっと声が出た。誰もが描かないし描けない現代とそっくりな、貧しい市民と軍隊の衝突の歴史的事件。英国王室、政府の恥部だろう。74歳ゆえなのか歴史家の協力を得て、徹底的にリアルにつくる勇気がただ凄い。(9月20日からサロンシネマで公開)
新海誠監督が舞台挨拶に来てくださる。気になっていた、ピストルのエピソードを聞く。「主人公が警察に追われる理由として公開規模が大きいので、わかりやすくしたつもりです」と。10数年前のインディーズの頃に、タカノ橋サロンシネマに何度か来て頂いている。お客様と映画館をとても大事にされる稀有な方である。(9月11日現在・サロンシネマで上映中)
なんと言っても、映画はスターです。「昔はね」とおっしゃる方もいらっしゃり、それもよくわかっているのですが現在、スターという言葉がピッタリの二人が共演というのは、本年度の奇跡的ビッグニュースだと、私は思います。
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの2大スター共演を、全米ではポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの「明日に向って撃て!」(’69)とたとえられているそうです。映画の時代設定が1969年なものですから、うまいこと言っています。
そういうネタが出るのも、この映画は映画界が舞台の話しなのです。
ベテラン・スターの役がディカプリオで、その彼の危険なシーンなど様々な身変り役をするスタントマンがブラッド・ピットです。スターには、専属のスタントマンがいたというのも、へぇと思いますよね。「スタントマンにしては、きれいな顔をしているな」と言われるシーンもあります。
映画界の話しですから、プロデューサーと呼ばれている人の仕事ぶりやセットや美術に配置など興味深く見れるのです。
このダブル主演は、いわゆる雲の上のスターという存在が少なくなってきている今だからこそ、素晴らしいアイディアだと思います。
決してオーバーではなく、来日キャンペーンでクエンティン・タランティーノ監督がこの共演を「ラッキーだし、世紀のクーデターだと思う」とタランティーノらしい表現で会心の笑みを浮かべて述べています。
見どころの一番は、その大スター二人のおさえた演技なのです。
派手で、パーティーざんまいの夜を過ごしているどころか、これが地味でいいんですね。ドラッグや酒や女性っ気がほとんど無いのです。有名なエピソードとして、映画狂で映画にくわしいタランティーノ監督は、出演者、スタッフに映画上映会をして、皆なのテンションをあげているそうです。
そこのひたむきで真面目な映画へのむかい方は、ディカプリオもブラッド・ピットもそうなのでしょう。
特に、ブラッド・ピットの役は恋人は、わんちゃんだけという設定がニクイですね。このわんちゃんが彼の言うことを、よく聞いてかわいいのです。わんちゃんの顔じゃないですよ。存在がかわいいのです。だから、ますます、ブラッド・ピットの役はストイックに感じられます。ブルース・リーとの対決のエピソードは、多分、全米では拍手かっさいだったのではないでしょうか。アクションも、コメディもできるブラッド・ピットをみせましたね。
製作・脚本・監督のクエンティン・タランティーノは、またすごいところに目をつけましたね。
マカロニ・ウェスタンこと、イタリア製西部劇の「荒野の用心棒」(’64)は、アメリカでなかなか売れないクリント・イーストウッドが主演して超大ヒットに。本作でセリフに出てくるセルジオ・コルブッチは「続・荒野の用心棒」(‘66)が大ヒット。原題「ジャンゴ」です。そうです。御本人その題名でつくられています、2012年に。
1968年の話題作「俺たちに明日はない」(キネ旬1位)、「ロミオとジュリエット」(キネ旬2位)、「卒業」(キネ旬6位)、一瞬本作で「ミセスロビンソン」の前奏が流れます。
1969年には、「イージー・ライダー」(キネ旬1位)、「明日に向って撃て!」(キネ旬4位)とまぁ、そういう時代だったのです。
つまり、古き良きハリウッド映画のたとえば西部劇はイタリア製作の方が面白く刺激的で、ファッションも音楽もアクションも極だっていて全世界で受けていたのです。もちろん日本でもです。
通常映画はといえば、主人公がアウトローであるとか、ラストがアン・ハッピー・エンディングだとか、孤独な主人公だとか―。要は、テレビ映像におされまくっていく映画界の1960年代後半から1970年代前半に、スポットライトをあてたのですね。
そこのところに、ふっと気がつく人が誰かいるだろうと、思っていることでしょう。
しかし、その時代は、今でも熱狂的に人気がある作品が多いように、つくり手が自由に権力に立ちむかうエネルギーと、映画愛があったことを、本作は語っているかも知れません。是非ごらん下さいませ。すべての業界から「自由」な発想がなくなっている気がします。
大変、長らくお待たせいたしました。
やっと公開のはこびになりました。
リクエストをたくさんいただいていました。
こういう作品は、日本映画では現状はつくりにくいと関係者の方がよく言われています。
「森友学園問題」を暗示させる内容を、よくぞここまで、の声もあります。もっと、突っ込んで欲しかったとの声もあります。
ただ、製作側は「公開ができないかも知れない」と、ぎりぎりまで悩んでいたそうです。
主演の女流新聞記者役も、オファーした日本の女優が断ってきたという噂もあります。
たしかに映画1本つくるには、製作委員会があり、資金を提供してくれる企業、宣伝をしてくれる企業、協力してくれるメディアなどなど、都合があるんですね。
映画こそ、自由の表現の先陣を切らなくちゃといつも思っていますが、そこのところは外国映画の方がすごいですね。
とはいえ、話題の確認を「新聞記者」でしていただけたらと、思います。是非、ごらん下さいませ。
ミニ・シアター系のヒット作が連続で公開になっています。すでに「Girl/ガール」(ベルギー映画)は、上映中で好評いただいています。
2009年のベルギーの新聞に、バレリーナになるために奮闘するトランス・ジェンダーの少女の記事が掲載されます。
心を動かされたルーカス・ドンは18歳の青年で、必ず彼女を題材にした映画を撮るという強い思いからアプローチを重ね約9年間の歳月を経て話し合いをくり返しルーカス・ドンの脚本と監督で完成しています。27歳のデビュー作です。
主人公のララ役を探すのに大変なことは最初からわかっていたけれど、ある日突然、ビクトール・ポルスターがすい星のように現われたのです。「まるで天使のようだった。彼の踊りをみて僕は、彼しかいないと確信したんだ」と答えています。モデルになった本人もビクトール・ポルスターを絶賛し、話題が広まっていったそうです。
父親や病院のトランスジェンダーの理解に感動さえおぼえます。表面だけでなく、背景もきっちりと描いている愛情も素晴らしいのです。
ビクトール・ポルスターは、この役でカンヌ映画祭の新人監督賞・最優秀演技賞など3部門受賞ほか、30以上の映画祭で受賞をしています。
レバノン女流監督が、声なき子供たちの叫びを世界に訴えた力作です。カンヌ映画祭では審査員賞受賞します。そのとき、会場にザグルーダ(舌を小刻みに震わせながら放つ甲高い祝いの声)が響きわたるのです。声の主は誰あろう、御本人であるナディーン・ラバキー監督だったのです。本作でも少年の弁護士役で出演しています。フランス語をはじめ複数のヨーロッパ言語を流暢にあやつる語学力と、容姿端麗ぶりでファースト・レディにさえみえるものを、わざわざ、世界中の視線の集まるあの場面であえて「私はアラブの女流監督なのです」と宣言をしたわけです。すごい勇気です。
12才の少年は、学校へも行かせてもらえず一日中、働かされていて、ついに「僕を生んだ罪で両親を訴えたい」と、申し出るのでしたー。
一番気になったのは、10才くらいの女の子を嫁として結婚させる児童結婚です。言ってみれば、売られていくということですね。日本映画にもそういうことをあつかった作品は多々あり、ロブ・マーシャル監督「SAYURI」もそうでした。
今、世界中の、日本も、子供たちが自由で平和に暮せない状況がたくさんあり胸が痛みます。どうなっていくのでしょう。
あれから74年が経ちます。
戦争のことを伝える人が少なくなっていき、
世界中が先の戦争について、知られざることを語りはじめています。
世界中の映画が、そういった作品をつくっています。
今年もこの8月6日(原爆の日)をむかえるにあたり、以下の作品を上映して私たち日本人もふっと考えてみる時間を持ってみたいと思います。
・「ひろしま」初の英語字幕版 8月2日(金)~8月8日(木) 17:05 1回上映
・「ひろしま」オリジナル版・デジタル最新版 8月9日(金)~8月15日(木) 16:40 1回上映
本作は、1953年の原爆投下(或は終戦)から8年後にすぐに製作されています。
★広島出身の松竹の大スターの月丘夢路さんは「ノーギャラでもわたくし、出させていただきます」と先生の役で出演されています。
★1953年10月7日に、ここ福屋デパートの映画館で上映されたのがこの映画のスタートと記録されています。
★広島のエキストラ8万5千人の迫力のラスト。
★「アメリカがなぜドイツに原爆を落とさなかったのかは、ドイツ人は白人で、日本人は有色人種だからだ」のくだりを日本大手の配給会社は、アメリカに対してそんたくしてカットしたがるのです。しかし、製作側はカットはならぬとなり、大手配給会社は配給をおりるのです。結果、この映画は陽の目を見ることが出来なくなり、現在をもって、まぼろしの映画となっています。このささやかな上映運動で、近い将来は、英語字幕版をつくっていますから、アメリカの映画館での上映は、いつか実現し、アメリカ全土での上映に広がるでしょう。そして、それは世界中の映画館での上映につながっていくことでしょう。
まずは、日本人が、広島に住む人がごらんになって歴史を感じて欲しいものです。
関川秀雄監督「きけわだつみの声」、伊福部昭音楽「ゴジラ」
出演 岡田英次「ヒロシマモナムール」 山田五十鈴「祇園の姉妹」「流れる」
プロデューサー 小林開さん 8月2日(金)舞台挨拶ございます。
スタッフもキャストも超一流で製作されたのも地元・広島の被爆者、被爆者と関連のある人たち、教職員、生徒たちの手弁当での協力のたまものです。
「この世界の片隅に」の英語字幕版も完成
同じく8月2日(金)~8月8日(木) 朝10:15 1回上映
※8月6日(火)原爆の日 片渕須直監督の舞台挨拶あります。
タイトル「ニッポニアニッポン」は、日本の代表的な鳥の一種「とき」の学術名
この映画のポスターのときの絵は、「この世界の片隅に」の主演のすずさん役ののんさんが描いたものです。
同じ時期に、戦艦大和の話しである「アルキメデスの大戦」も上映しています。
ほんの少し、あの戦争についてと、これからの日本について、考えてみるのも必要かも知れませんね。
本年度の一番のぶっとびの問題作です。
注目されて話題になるのか、まったく無視されるのか―。本年度の日本映画の快作!?あるいは愚作!?
誰もがふみこめなかったタブーにいどみながら、R18指定もR15指定もつかない。麻薬も、性描写も、暴力描写もない、正真正銘の「反骨の魂」の直球勝負なのです。
東京ロードショーはすでに3.11にされていますが、その話題たるや地方にはまるで届いてない状態なのです。
それどころか日本全国の映画館が、凄い作品と二つ返事で上映を決定する映画館と、ためらう映画館と、できないとする映画館があるという異状事態がおこっているのです。
このぶっとび映画をつくったのが「ラピュタ阿佐ヶ谷」の20周年を記念して、そのラピュタ阿佐ヶ谷の館長の才谷遼さんが「セシウムと少女」に引きつづきメガホンをとり、監督・原案・脚本を完成させます。これも、相当にすごいことであります。
日本映画黄金時代の1950年代、1960年代の旧作を中心に35ミリフィルムで上映している根強いファンをもっている、かの有名な名画座なのです。
物語は、福島に住みフクシマ市役所に勤務し平凡だが幸せそうな父と二人の娘。定年まぢかの主人公は、別の町に出向になる。出向先の助役に「あなたに原発事故後のフクシマの現状をおみせしましょう」と案内され、目の当たりにするのは…。あの事故から7年たった原発最前線の町だったのです。国も、県も、市も、町も、大手企業も、関係者ものど元すぎた痛みを忘れているかのような、あり様でした。
この映画の何がぶっとびかというと、そのあり様をその町に生きる人たちの庶民目線でみつめ、腹の底にある言いたいことを言っていることです。
それもまず、ドキュメンタリーにしていないところが素晴らしい。描き方は自由奔放にして映像における全ての要素を、歌であり、アニメーション、人形アニメ、歴史上の有名人なども登場させ、コメディとして、ミュージカルとしてみせているところは、出来るものではないでしょう。
ラストのエピソードは、クレージーキャッツの「ニッポン無責任時代」シリーズをほうふつされる圧巻の名場面をつくっています。歌が、すごいです。歌詞も、強烈です。地上波のテレビ放映は不可能と思えます。
「あなたは、いい人ですね」
「日本人は、水に流しますからね」
などのセリフが、あらためてずしりときます。
そう、まるで「ニッポン無関心時代」とでもいっているかのようでもあります。
主演に、隆大介、寺田農
是非、見てあげて下さいませ。
8月3日(土)、4日(日)
才谷遼監督舞台挨拶
1週目 8月2日(金)~8月8日(木) 14:50 1回上映
2週目 8月9日(金)~8月15日(木) 19:10 1回上映
3週目 8月16日(金)~8月22日(木) 16:35 1回上映
久々の日本映画の快作の傑作ではないでしょうか。めちゃくちゃ面白い、わかりやすい作り方は、どなたがごらんになっても楽しめます。
そして、「戦艦大和」の建造計画から沈没にいたるまでの数々のドラマを見事な脚本と校正でみせていくのです。後半の最大の見せ場は、観客はまさに釘づけ状態になっていくでしょう。
主役は東京帝大数学科を中退してアメリカに留学せんとしている22才の櫂直(かいただし)。彼は堂々と日本とアメリカの戦力の差、原油の保有量の差などつらつらと述べ「絶対に戦争をしたらアメリカには勝てません!」というのです。
これからの戦いに必要なのは飛行機をいっぱい使う航空母艦だと考える、海軍少将の山本五十六はこの青年をいきなり少佐に任命して、戦艦大和の建造計画を阻止させんとするのですが・・・。御承知のとおり、歴史の事実は、「戦艦大和」は完成していくのです。
この若き天才的数学者を演じたのが、菅田将暉(すだまさき)さんで、数学の美にとらわれている変わり者を大好演するのです。いかにも軽く黒板での公式の数字をさらさらと書いていく、或は長セリフを言うところは圧巻なのです。年明けの映画賞の主演男優賞に決しておおげさではなく一番近いところにあるのではないでしょうか。「戦艦大和」の建設計画を進めていく中将・平山忠道役の田中泯さんと、若き少佐・櫂直役の菅田将暉さんとの最後の対決シーンは、さまざまなことを考えさせてくれる名場面となっています。
戦後74年が経ち、今きなくさい雰囲気がただよう世界の空気の中で、つくられるべくしてつくられたのが本作ではないでしょうか。
ふりかえると、
1933年(昭和8年) 「戦艦大和」の設計が開始
1937年(昭和12年) 呉海軍上廠にて起工
1941年(昭和16年) 就役
1941年(昭和16年) 真珠湾攻撃
1942年(昭和17年) ミッドウェイ作戦で初出撃
1944年(昭和19年) マリアナ沖海戦に参加
1945年(昭和20年) 九州南方・坊ノ岬沖において特攻作戦中に撃沈。
乗員3,332人のうち、生還者276人。
記録をみると、随分と早くから「戦艦大和」の建造計画があったようです。
原作(漫画):三田紀房
監督・脚本・VFX(特殊効果):山崎貴
その他、舘ひろし、柄本佑(好演)、浜辺美波(地味に好演)
「戦艦大和」が建造されたのが呉というのも、とても身近に思えます。
映画は、「女優」で見るものを納得させてくれるヒロインの存在感は圧倒的です。はじまってすぐに国立舞踏団立ち上げのためのオーディションのシーンがあり、唄声とその雰囲気に一目で魅かれて、いや惚れてしまったピアニストですが、どうして、観客もこの少女にぞっこんになります。
ヒロインは、ヨアンナ・クーリクでして、同じ監督の前作、5年前の「イーダ」でも主演女優として、ヨーロッパ映画賞では、作品賞・監督賞・撮影賞の4冠をもたらしています。アメリカのアカデミー賞でもポーランド映画として初めての外国語映画賞に輝いたのです。本作も「イーダ」と同じ脚本・監督のパヴェウ・パヴリコフスキによるもので、これもなるほどです。
ヒロイン、ヨアンナ・クーリクはそれなりの年齢(30代超え)ですが、「イーダ」も本作も「少女役」がすごい魅力的なんですね。
ポスターを見ますと、この「COLD WAR あの歌、2つの心」は、本年度のアメリカのアカデミー賞で監督賞、撮影賞、外国語映画賞にノミネートされていましたが、本当におしくも「ローマ」にその3部門ごっそりもっていかれるのですが、ぎりぎりまで競ったことでしょう。
「コールド・ウォー」とは、1940年後半から1950年代の冷戦下に揺れるポーランドが背景になっています。
そこでめぐり逢った歌手志望の女性と、オーディションの担当をしたピアニストの恋愛は時代の流れの中で激しく変化をしていくのです。
ヒロイン、ズーラ役(ヨアンナ・クーリク)の役が、根っからの勝気さと自由奔放さが強烈で、映画の中に引っぱりこまれていきます。そして、何度かの<すれ違い>と<再会>をくり返していくのです。それぞれの環境の変化がありながら、困難な愛の旅はつづくのです。
映画として観客についてきてもらうための、もうひとつの主役が「音楽」なのです。
誰が見ても聞いても、驚き感動するのが映画に登場するポーランド民族音楽舞踏団の一糸乱れぬ民族音楽です。まことにエキサイティングで、現在も活動中で世界中をツアーしているようです。ここを見るだけでも、一見の価値ありです。
そのメンバーからつき抜けてやはり歌手になっていくヒロイン・ズーラの歌がまた、聞かせどころです。ピアニスト役のトマシュ・コットはポーランドの人気男優だそうで、だんだん彼がよくみえていくから演出のうまさなのですね。
運命の女性にめぐり逢って、全身全霊を賭ける男。音楽の素晴らしさ、映像美、情念の男女。上映時間1時間28分。(「イーダ」も1時間22分)監督のこだわりにひととき酔ってみるのも、良いのではないでしょうか。是非ごらん頂きたい1本です。
あの「君の名は。」から3年。
世界注目の新海誠監督作品が公開になりました。(正しくは、原作・脚本・監督)です。
ふり返れば、デビューの「ほしのこえ」(2002)
「雲のむこう、約束の場所」(2004)
「秒速5センチメートル」(2007年)(桜の花びらが地面に舞い落ちる速度)の題意。
「星を追う子ども」(2011)
「言の葉の庭」(2013)
と、雲や星の自然界のものをタイトルにいれています。
そして最新作が「天気の子」の文字が入りました。
こうして毎日のように、どこかで自然災害がおこっている日本。いえ、日本だけでなく世界中が異常気象のおりでもあります。
離島から東京にやってきた家出少年の高校生・帆高(ほだか)。ラッキーにも偶然知り合った編集プロダクションで住み込みで働くことになるのです。<男主人公>
帆高(ほだか)が出会った女の子、陽菜(ひな)。アルバイトをしながら、小学生の弟と貧しいながらも二人で暮らしています。“祈る”ことで空を晴れに出来る不思議な力を持っています。<女主人公>
いつも通り、ふたりの恋の物語は美しく切なく。「この3年間で日本の社会の前提が少し変わったと思います。時代性にウェイトを置いた作品になっていると思います」と、新海誠監督。
♫ 怖くないわけない でも止まんない
ピンチ先回りしたって 僕らじゃしょうがない
僕らの恋が言う 声が言う「行け」と言う ♫
「主人公の帆高(ほだか)も陽菜(ひな)もそういう少年少女です。バッテリー切れを気にしないで、充電が残り少しだからと立ち止まって電源を差すことをしない人たち、ただ真っすぐに走り抜けていく人たちなんです」と新海誠監督の言葉がいいですね。
音楽 RADWIMPS(ラッドウィンプス)
三浦透子 ボーカル
リピーターが、多くいらっしゃるのではないでしょうか。私自身、早く二度目を見たいです。
全世界が、どう受け止めていくかを知ることもどきどきしますね。
まず、日本での大ヒットの目撃者になりたいですね。
「天気の子」の初日の前日に、京都の天をこがした「京都アニメーション」の放火のニュースです。33人もお亡くなりになっています。
映画をなりわい(生業)としている者にとって、過去の自分が生れる前であっても映画撮影所やスタジオセットの火災くらいつらいもの悲しいものはないのです。
無から有を生む映画工場をつくるだけでも大変です。映画撮影所が無くなっていけば日本映画界の多大なる損失になっていきます。被害が広がらないことを祈るばかりです。
「天の気」は、太陽・月・星などの宇宙の天体の気のこと。
「地の気」は、私たちが暮らすこの大地が発する気のこと。
「人の気」は、人間が発する気のこと。だそうです。
人間は生物は、つながっているのですね。
リメイク(再映画化)のブームもあり、そして今や実話の映画化は大ブームとなっています。
「絶望名画」へのいざない、の決定版のような作品の公開です。絶望の連続のはてに待つ、希望と自由は―。
無実の罪で終身刑となり、フランス領ギアナの悪名高い流刑地におくられた男の名は、胸に蝶の刺青があるのでパピヨンと呼ばれています。
45年前に、スティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマンの豪華共演で話題になりヒットします。
このたびは、「パシフィック・リム」などのチャーリー・ハナムがスティーブ・マックイーンの役どころに。チャーリー・ハナムはこの映画も原作もとても大好きで、一度は無理だとこの役を断っていたのですが、「パピヨン」リメイクについて考えるのをやめることができず、監督とまた話してこの映画を徹底的に独立した映画にしたい思いになっていくのです。そのためには、ダスティン・ホフマンが演じた相棒の役を、どうしてもラミ・マレックにという製作スタッフのアイディアとチャーリー・ハナムも彼しか居ないとじきじきに電話して、多忙をきわめるラミからOKをもらうのです。
ラミ・マレックは、御存知「ボヘミアン・ラプソディ」でアカデミー主演男優賞に本年輝くのですが、「パピヨン」は前作にあたりますから、いかにラミ・マレックの才能と存在感がすごいのかわかるというものです。
13年間の獄中生活で9回もの脱獄を試みるという実話は、とても重いテーマに思えるのですが、現代社会と様々な意味での閉塞感で、よく似ているともいえるのですね。
体力、知力を最大限に使って「生物は環境にもっとも適した者が生き残る」(ダーウィンの進化論)と本能的欲求(自由を得る)で日々をすごす凄さです。
体を張った主演男優と、まったく飽きさせないエンターテイメントのつくり方で気がつけば、ぐいぐいと引っ張られて一気にみせていくのです。
デンマーク出身のマイケル・ノアー監督のこの作品に賭ける意気込みも相当なものに感じられます。やはり、監督や俳優がやりたいものを全力投球するのは、圧倒的な迫力がでるものです。
是非、ごらん頂きたい1本であります。
つくづく凄いのは、樹木希林さんであります。6月末に本作のヒット御礼舞台挨拶が主演の浅田美代子さんほかで東京でされています。
ベストセラー・ランキング単行本では、今も樹木希林さんの「死ぬときぐらい好きにさせてよ」、「一切なりゆき」などなど上位に入っていますからね。御自身が出演されてる「万引き家族」、「日日是好日」も大ヒットです。「エリカ38」も、ヒットですから、樹木希林さんがかかわられているものはすべて受けているということなのです。
監督・脚本の日比遊一(ひびゆういち)さんは、もともと樹木希林さんの大ファンで出演依頼をしたのがきっかけのようです。その件は、製作資金が集まらず流れたのですが、その縁を樹木希林さんが大事にされていたのです。
「2年前に聖子ちゃんカットで38歳にみせかけてタイに逃げて若い男性と豪邸で生活してた詐欺師の女性の話し、興味ない?」と、樹木希林さんの提案を受けてこのたび実現したというわけです。娘の様にデビュー当時から可愛がっている浅田美代子さんの代表作をと企画されたのです。60歳を過ぎてなお38歳と偽り、もうひとつのエリカという名前で別人になりきる女性の生き様が、現代を強烈に感じさせるのです。
浅田美代子さんは、テレビ「時間ですよ」で1973年17歳でデビューし、「赤い風船」の主題歌で日本レコード大賞新人賞と、親近感とキュートなイメージがありました。
広島ネタをいえば、日本を代表するシンガーソングライターである吉田拓郎さんと結婚引退。6年後に離婚、女優として27歳で芸能界復帰をしています。おっとりした雰囲気の中に、激しい女性の情熱をもちあわせている浅田美代子さんのことを見抜いた樹木希林さんのこのアイディアは、深いものがあります。しょっちゅう会っていた二人だそうで、ワイドショーで整形手術をしながら逃げていく女性犯人のことを「美代ちゃんに、あう役よ」と言ってたいたとか。(これは、「顔」という題名で映画化されています。)母でもあったし、姉であり大親友で師匠、と樹木希林さんのことを語る浅田美代子さんです。こういう関係って、うらやましいくらい素敵な間がらですね。
監督・脚本の日比遊一さんは2016年、俳優の高倉健さんのドキュメンタリー映画の「健さん」でモントリオール映画祭ドキュメンタリー部門で最優秀作品賞受賞、日本批評家大賞ドキュメンタリー賞を受賞されています。
「とにかく、世の中を面白がることよ。老いだって、病気だって、自分の栄養になるのよ」の樹木希林さんのお言葉通り、本作を面白がって見ていただきたいです。
さて、好評の「午前十時の映画祭・最終上映」の多分広島最終上映シリーズの「タイタニック」は、「スクリーンで見るのは初めてで!」と、中学、高校生の人から、大人の方まで幅広く、たくさんお越し頂きました。有難うございます。
6月28日(金)より「JAWS/ジョーズ」です。
あのスティーブン・スピルバーグの大出世作で超大ヒット作でキネマ旬報の第10位にも入賞します。
アカデミー賞では作曲賞・音響賞・編集賞を受賞しています。
「JAWS/ジョーズ」のタイトルも印象的で、いつしか、サメのことをジョーズと呼びだしたくらいのインパクトがありました。正しくは、サメのあの開いた「顎(あご)」(ジョーズ)のことでして、サメはシャークですが、サメ=ジョーズになったくらいの超話題作なのです。
TV映画「激突」で注目され、のちに劇場でも公開される人気作にこれはなります。
27歳のスピルバーグのこんしんの大衆娯楽パニック映画というところが一番すごいかも知れません。企画の売りこみには、かなり苦労した話しは伝わってきています。この企画を面白いと思うプロデューサー(製作者)は、なかなか居なかったようです。
「屋根の上のバイオリン弾き」、「ポセイドン・アドベンチャー」、「タワーリング・インフェルノ」の音楽担当のジョン・ウィリアムズと「JAWS/ジョーズ」でコンビを組みアカデミー作曲賞をもたらしたことで大注目されます。その後、「スター・ウォーズ」「レイダース」、「E.T.」(アカデミー作曲賞)とヒットを連発します。
「JAWS/ジョーズ」の音楽は、一説ですが、ディズニー・ファンのスピルバーグが「ファンタジア」の<はげ山の一夜>のようなイメージでお願いします、と言ったとか言わないとかが今や伝説的エピソードになっています。
ひきつづき、スピルバーグ監督の「E.T.」を7月19日(金)より、公開いたします。是非、スクリーンでごらん下さいませ。
コレットさんは、御存知ですか?
私はお名前だけは知っていたのですが。それも、オードリー・ヘプバーンのプロフィールのところに必ずといっていいほどコレットさんのエピソードが登場してくるのです。それには、コレットさんのベストセラーを舞台かする「ジジ」の主演女優を探しているとき、オードリー・ヘプバーンをみつけて、「ごらんなさい、ジジですよ」と、ささやいて抜てきされたそうです。ニューヨークのブロードウェイに進出する「ジジ」の主演女優ですから、一番驚いたのはオードリー本人でした。
「演技力が無いから、無理です」と断ったのですが、コレットさんは説得して実現します。1951年のことで、オードリーは22歳でした。そして、1953年の「ローマの休日」はエリザベス・テイラーがヒロインのアン王女役の候補だったのですが、「ジジ」で注目されて、その勢いでオードリー・ヘプバーンが、アン王女役に決まるのです。初主演のオードリー・ヘプバーンは、なんとアカデミー主演女優賞を受賞。伝説の大女優になっていくのです。このとき、24歳です。
本作「コレット」を見ていると、フランスの田舎町で生まれ人気作家ウィリーと出会い恋におち、結婚しパリに移り住みベルエポックと呼ばれたパリが最も華やかで繁栄した時代の中で、コレットの変化が進化が圧倒的な魅力に包まれていきます。「なりゆき」で書き初めた小説でした。
「天才作家の妻 40年目の真実」と同様に、男性優位の時代のコレットさんは自分の名前が出せなくて、夫のウィリーの名前で本を出版しなければならなかったのです。
しかし、ベストセラーになり、今でいう、グッズもあたります。そういう問題をかかえながら、夫婦間の問題に苦悩しながらも、自分らしい生き方をみせていき、現代に通じる新しいパントマイムに挑戦したり、ジェンダーにもまったくとらわれない意志と感覚には、ただただ魅了されていきます。
そういう人だから、無名で新人のオードリー・ヘプバーンを起用しましょうと、なるんですよね。
コレット役に、体当たりで演じたのはイギリスが誇る人気女優キーラ・ナイトレイです。「プライドと偏見」、「つぐない」、「アンナ・カレーニナ」という文学性の強い作品でいつも好演しています。我慢しない女性の物語の痛快さ。こんなに格好いい女流作家は、見たことがないです。是非、ごらんいただきたい元気、やる気が出てくる作品です。
「ローマの休日」は、「午前十時の映画祭・最終上映」に入ってまして、広島での(多分)最終上映は、10月以降で出来るかも知れないので、御期待下さいませ。
「午前十時の映画祭」(映画史に残る世界の名作を上映してきた、貴重な企画映画シリーズ)本年の第10回をもって終了することになりました。個人的に、とても残念です。(10年間も、続いていたのです。)
せめてもう一度、スクリーンで上映できないだろうかと、可能な作品を可能な限り上映していきます。上映権の問題で出来ないものもあるのです。
「午前十時の映画祭・最終上映」の広島最終上映ということになるでしょうか。
すぐに「ジョーズ」が6月28日(金)待機中です。
笑える「翔んで埼玉」と泣ける「あの日のオルガン」と、封切から時間が経っているにもかかわらず、じわじわとごらんでない方のもとに広がっています。
何しろ面白く、わかりやすく、老若男女問わず一人でも、二人以上でもどういう見方もオッケイの快作です。是非ごらん下さいませ。「あの日のオルガン」は、第2次大戦末期に空襲で危険だから、学童疎開とはちがうもっと歳のいかない保育園児を東京から、のがれる保母さんと子どもたちを描いています。疎開先は、なんと、埼玉県なのです。
埼玉県、すごいです。お客様が口々に、埼玉に行ってみたいとおっしゃってます。偶然にしては、出来すぎと、喜んでいます。
さて、その「翔んで埼玉」ですが、少し気が早いかも知れませんが、映画雑誌の本流からちょっとばかりはずれた作品を評価している「映画秘宝」という映画雑誌のベスト3には、入賞できるのではないでしょうか。ちなみに、昨年のベスト1は「カメラを止めるな!」でした。ベスト1だって、あり得ますよね。
軽く笑わせて、あとで深さが身にしみ、1981年リリースの38年も前の一部の人しか知らない「なぜか埼玉」をバックで流すところも拍手かっさいです。何度か流れてくる
♫なぜかしらねど ここは埼玉
右も左も すべて埼玉
西も東も すべて埼玉 北も南もすべて埼玉…
ここのくだりです。
この映画を一段と、面白くしています。当時、唄ってた人もスクリーンで流れて感激されているでしょう。このセンス、凄いです。
さてその「映画秘宝」で、どれだけの評価を受けるかわかりませんが、ひょっこりはんと番組に入っている「ハンターキラー 潜航せよ」が、痛快ケッサクです。
ロシアの大統領を第3次大戦のおそれがあるとしてアメリカの原子力潜水艦ハンターキラーが救出に行くという話し。中東、ヨーロッパ、米、ロシア、中国と、きなくさいニュースが流れる中、このタイミングでつくれるのがあっぱれです。
艦長役ジェラルド・バトラーが大熱演。なんと、製作国イギリス。そこにも、世界の緊張がみてとれる感じです。こちらも「映画秘宝」のベスト10に、入りそうな勢いの人気作です。うーむ、イギリス頑張ってつくりますねぇ。
心に残る一本なのですね。
自動車事故で、命は取り留めたものの脳から下が麻痺して車椅子での生活の主人公。アルコール依存症や母親とのことや、かかえている苦悩はかなりあるんですね。
この主人公を「ビューティフル・デイ」など個性的な役は天下一品のホアキン・フェニックスが怪演しています。
セラピスト(ルーニー・マーラが天使のごとき)によって、笑顔とユーモアをとり戻し、「世界で一番皮肉をこめた風刺漫画家」になっていく、嘘のような、本当の話しです。
「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のガス・ヴァン・サントが監督。元々、同作に出演していた今は亡き名優ロビン・ウィリアムズが自ら映画権をとり、20年が経ち、やっと実現したそうです。
原題は、「心配しないで、彼は遠くまで行けないよ」。絶望に近い話しですが、これもまさに「絶望名画」の1本で、元気や希望を、しらずしらずのうちにもらっていく快作と、なっているのです。車椅子生活は、決して人ごとではないんですね。常日頃、そう感じています。この主人公の気持ちを、参考にしたいものです。
「絶望名画」への、いざない。
とびきりの日本映画の感動作の公開です。たくさんの、リクエストを有難うございます。
「絶望名画」とは、絶望的な状況にあっても、それを受けいれ、そして、そこに希望のあかりをみいだしていくという意味であります。
最近、これほどわかりやすく、ていねいに、やさしく登場人物を描いた作品はないかも知れません。多くの方に見ていただきたい一本です。すでに、ごらんになられてリクエストをしていただいた方からも、絶賛の声があがっています。
小学生の疎開、いわゆる学童疎開のことは知っていましたが、本作は小学校へあがる前の保育園児を疎開させないと危険ではないかと、考えた保母さんたちのすごい話しです。
親たちから離れて暮すなんて、こんなちっちゃい子どもたちが可哀想だの声がしきりに出ていたのですが、1944年秋からは東京空襲もひどくなっていき、「人を選ばないんだ。空襲ってやつは。淋しいだの、つらいだの大人のわがままよ。遠く離れていても生きてる方がずっといい」と、親たちも思い、幼児の誰もやったことのない53人の園児の「疎開保育園」が、誕生するのです。
誰が行くか、どこに行くか、空襲のおそれがないそれなりの広さの場所があるのか、資金はどうする、と、問題が立ちあがる中、主任保母を中心に7人の保母が埼玉県の田舎のお寺を借りてむかうのでした―。
この実話である「疎開保育園」の物語は、こうしてきっかけだけでも、ワクワクドキドキする展開ですので、今までに三度も映画化が試みられたそうです。
先だっての京マチ子映画祭の「ぼんち」や「女系家族」の大映映画が1976年に企画し、「命を守る女たち」なるタイトルまで出来あがっていたそうですが、興行的にきびしいと上層部が判断し立ち消えになります。引き継いで、1980年共同映画が、原作小説を依頼し、「君たちは忘れない―疎開保育園物語」の出版にまでいたるのですが、子役演技に不安があると断念します。三度目は2012年シネマとうほくが映画化にいどみます。あら筋を山田洋次作品の脚本で評価の高い平松恵美子さんにたくしますが、各所の協力が得られずまたしても頓挫してしまったのです。
2016年、豊かで平和な日本になっているにもかかわらず、日本の子どもたちはいじめや虐待で、毎日のようによくないニュースが流れています。今こそ、映画化せねばの気運高まり、最も適していると思われている平松恵美子さんのところに戻ってきて、とうとう、監督・脚本が決まるのです。
保母さんたちのスーパー・ヒロインぶりを見事に描ききった平松恵美子さんは、素晴らしい仕事をされています。来年のはじめに発表がある映画賞では、たくさんの監督賞と脚本賞を受賞されることを信じています。
戸田恵梨香さんの熱演、大原櫻子さんの圧倒的存在感を中心に、全体的にユーモアにあふれ、こちらも素直な気持ちにさせてくれるスタッフ・キャストの熱いものが伝わってくるようです。
童謡が何曲も流れ、もちろん、オルガンの伴奏で、「この道」の使い方が絶妙です。
山田洋次監督の「東京家族」、「家族はつらいよ」シリーズの脚本にも参加している平松恵美子さんだからこそ、それらの作品のレギュラーの橋爪功さん、林家正蔵さん、夏川結衣さんたちの存在は頼もしくもあり、楽しくもあり、なのです。平松恵美子さんは、「まだ脚本も完成してない時に、こんな物語です。出演して頂けませんか?」と声をかけたのが橋爪功さんで、一番最初に決ったキャスティングだったそうです。
長く長く、幅広い層に見続けて欲しい日本映画です。戦争の悲劇の中で、こういう話しもあったのです。
是非、ごらんくださいませ。今年一番の必見の感動作です。上映期間も、延長して多くの方に見て頂く機会を増やしているつもりです。
「天国でまた会おう」をごらんいただいて、「もう一度見たい!」の声が多数出るほどの、上半期の快作の感動作です。ハラハラドキドキの展開と、素晴らしいラスト・シーンに拍手です。
「長いお別れ」でいつもながらどんな役でも好演をする蒼井優さんの南海キャンディーズの山里亮太さんとの結婚報道は大きなニュースになりました。
「一緒にいて、しんどいぐらい笑わせてくれる。人に対しての感動することと許せないことのラインが一緒。金銭感覚が似ている。あと、冷蔵庫をちゃんとすぐ閉める」と、蒼井優さんの結婚を決めた理由のコメントが素晴らしいですね。
「長いお別れ」の、次女役の蒼井優さんは恋人らしき人とうまくいかないし仕事も中途半端にって役どころで、認知症になった父親(山﨑努さん)と、縁側で話す場面―。
「つながらないって切ないね」、父親はそれに対して、「そうくりまるなよ。そういう時はゆーっとするんだ」と日本語になっていない言葉で返す名シーン。そこのところが、現実のニュースとふっと重なって感じられました。この結婚報道で(?)、お客様が増えているのが、また、嬉しいです。
「翔んで埼玉」は、お待たせをいたしました。リクエストもかなりいただいていたのです。
ちょっと、好みがわかれそうなたたずまいがあるのですが、それはまちがっていました。
久々に、映画館の中で何度も何度も笑いが出ています。
文句なしに、面白く楽しくすごせるたいした作品です。
そして、深い。
これは埼玉だけの問題ではないことに見ていて、誰もが自分の出身県とどこかを比べているかも知れないです。
ていうか、「仁義なき戦い」や「この世界の片隅に」、「ぼけますから、よろしくお願いします」なんか、呉市と広島市でどっかではり合ったり、ジェラシーをおこしたりしている。「自分は呉出身なんです」と言う人が増えたとつくづく思います。全然、悪い意味ではないです。そういうところを、おもしろがりたいです。
ぼやきです。5年前くらいは、地元の映画館に優しく寛容であった大手のシネコン企業は、どんどん作ってきて、ついに広島駅にまで出すと発表。今や、広島はシネコンの街と言われています。「翔んで埼玉」を見ていると、大手のどの業種が進出してきているかが、分析とか意味とか利益率とか、さっぱりわからないのですが、埼玉だけの問題じゃないことだけは、たしかなのであります。中国新聞に広島駅に大手シネコンの計画の記事が出る前日の夜の8:15に「一応、そういうことで中国新聞に出ますので、仁義を通させてもらいます」と、その大手シネコンの支社長様より電話がありました。
完成したら、上映作品をごっそり広島駅の新シネコンにもっていかれ、うちでの上映作品が無くなるとスタッフの何人かは思ったものです。
それはともかく、どこの県でも市でも、そういうことってあるので、他のものに置きかえたら、実は観客すべて、自分自身に戻ってきそうです。イタリアでもそっくりの、東京対埼玉、埼玉対千葉みたいなことはあるそうで賞をもらっています。
是非、シリーズ化して欲しいものです。それをしていくうちに、日本の中心のなにかが分っていきそうな気がします。
まさかの興行収益37億円を突破した快作の痛快作!!思いきり、映画館で手をたたいて笑ってみましょう。今年の、令和元年の映画であることはたしかだと、私は思うのですが。一見の価値は十分にあると思います。
「絶望名画」への、いざない。をシリーズにしています。
リクエストいただいていた「岬の兄妹」が公開されますが、好みがわかれる、生理的に受けつけにくい部分がありますので、よろしく御注意のほどお願い申し上げます。
本年度の強烈な問題作であることは確かでして、来年明けの映画雑誌のベスト10や映画賞にも入賞したり、候補作にも入ることでしょう。“すべての日本映画がぶっ潰れてしまうかもしれない”これは不意打ちの大傑作「岬の兄妹」。(映画評論家 森直人さん)。のコメントです。
本作で長編デビューした片山慎三さんは、38歳。
監督・製作・プロデューサー・編集・脚本の1人5役です。
これをみて、予算・編集・脚本で現在の日本の映画製作のあり方からいうと、製作委員会という支援してくれる人たちからの「意見」は一切出ない、出せなくしています。すべて、自費でつくっているのです。そのこと自体がクレージーであるのですが、中身はもっとすごいです。
なんともいえない美しい趣きのある岬がうつって、「岬の兄妹」の題名が出る。まるで、昭和の映画のつくり方みたいにすてきな導入です。
しかし、この兄妹は、ささやかにこの町で暮しているのだが、自閉症の妹はたびたび家から居なくなり、ある日見知らぬ男といる。お金をもらっていた。その頃、足が不自由を理由に兄は失業する。容赦なく、この兄妹に貧困の波がおしよせてくる。生きていくために、仕方なく兄は妹をー。
「貧困、障害、性、犯罪、暴力…そういったものを包み隠さず描きました。観た方の価値観が変わるような映画になればと思いながら、一切の妥協なしで2年間かけて作りました。是非、一人でも多くの方に観てもらいたいです」と、片山慎三監督。
妹役の和田光沙(わだみさ)さんは、「どうか心の一番素直で、自由な目で、この映画を見届けていただけたら幸いです。平成を仕舞う永久不滅の人情喜劇です」と、コメント。たいした表現力です。とことん底辺の社会の話しながら、明朗に笑わせるところあり、「人情喜劇」はまさにわが意を得たりです。
そんなわけでして「絶望名画」の超問題作。意識して、ごらん下さいませ。どなたにも、おすすめはできませんが。
熱い支持のなか、ロングラン・ヒットをしています。 久々に、幅広い女性層が来て頂いて嬉しく有難い限りです。
タイトルが、とてもよいですね。「そうだわ」と感じさせてくれますものね。「仕事がなんだ」、「家族がなんだ」、「孤独がなんだ」と、どんどんこのフレーズが個人個人で出てくるのではないでしょうか。
本年の、予想外の大ヒット作品。「話題の確認」に是非、お越し下さいませ。まだまだ延長上映いたします。
本年度の上半期の超おすすめの「絶望名画」の傑作2本が同じ日に初日です。どなたがごらんになられても、「面白く」、「感動」できて、「凄さ」を感じて頂けること、まちがいないでしょう。
とりわけ「天国でまた会おう」は、題名のイメージよりかなりちがって、エンターテイメントの中にアート色を隠し味にしているので、徹底的に「楽しく」つくっているのです。そして、笑いもあり、涙もあり、ミュージカル的みごとなショー・アップしたところもあり、ピカイチなつくり方をしています。反骨精神には、拍手かっさいです。たいしたものです。超おすすめですので、お越し下さいませ。
<人生を変えられた人・篇>としているのは、「天国でまた会おう」も「魂のゆくえ」も、行きたくない戦争にかり出されて、主人公の人生が変っていく話しからです。
本作は戦争が終結せんとしているときに、戦争好きの上官が突撃命令を出します。生き埋めになった中年兵士は、同じ場所で生き埋めの馬に助けられ(こういうシーンを入れる、ここしっかり見て下さい)、青年に救われます。しかしそのとき爆弾がおち、顔の下半分を損傷する大ケガをおいます。国から何もかもうばわれて、心も体もズタズタになって、パリに帰国してくる二人です。
人が国の都合によって戦争に出向かなくてはならないことくらい理不尽なことはないですね。戦争に行って、帰ってこれた人は、何割かの人だし、戦争体験による後遺症も口には出せないくらいあるでしょう。
ともあれ、戦場で死にかけた歳のはなれた二人は「環境にもちこたえ」、「運の良さ」を味方にしたのです。
そして、何もかも奪った国を相手にひと儲けしようとくわだてて大胆な計画をたてていくのです。いやはや、痛快です。
実は実家は裕福の青年の役が、素晴らしいの一語です。画家志望でおそらく大手の実業家の父親とは考え方が合わず、やけで戦争に志願したのかもです。顔下半分の傷を受け入れてくれる、戦争孤児であろうと思われる少女との出会いで、人生の気力が出てきます。声まで失っているので、その少女が通訳になってしゃべるところは、いじらしくもユーモラスにみせています。この少女役の子がとてもいいんですね。画家だけあって、顔の下半分を隠すマスクがもう凝りに凝って、彼の心境もかいま見えてうまいです。
フランス的、美への追求はまったく飽きさせません。
この役を「BPM ビート・パー・ミニット」のナウエル・ペレーズ・ビスカヤートが好演します。
中年兵士役のアルベール・デュポンテルは監督と脚本の一人3役です。脚本は原作者との協同作業をして、「なるほど映像でみせていく時はこういう仕掛けがあるのか」と、原作者をうならせたそうです。原作小説とはところどころ変えて、とことん徹底した「因果はめぐる糸車」といった世の中の出来事はすべてつながっている脚色力、うまいです。
フランスでは空前の大ヒット。フランスのアカデミー賞ともいえるセザール賞では13部門ノミネートされて、監督賞・脚色賞・撮影賞・衣裳デザイン・美術賞の5部門受賞は納得の受賞ですね。ヨーロッパで続々と公開され数多くの人々が魅了されているのです。
先の戦争に行った日本人の人たちも、みんなお互いにこう言ったのでしょうね。「天国でまた会おう」と。それを思うと、人ごとではありません。他国のことでは、ありません。
絶望の極みである戦争に行って帰った二人の主人公の物語は、本年度、もっとも心に残るラスト・シーンを、つくってくれました。
絶望は神様が与えてくれたギフト(贈り物)。
今、生きづらい現代こそ、老若男女を問わず、どなたにでも見ていただきたい必見の一本です。
かなり凄い映画です。
本年度、上半期の強烈にして心に残る作品なのです。
例によりまして、重いタイトルに黒イメージのポスターに、見たくないと思われる方が多いでしょう。原題はあるキリスト教会の名前なのでこの邦題にしたのですね。たしかに主人公の魂のゆくえが変化していくのですが。
イラク戦争に従軍牧師として息子をおもむかせるも戦死し、罪の意識に悩むトラー牧師。そのせいかどうか、妻は去って、一人ぐらし。体調もどんどん悪化している。若い女性の信徒が夫の話しを聞いて欲しいとくる。「妻は妊娠しているがこんな世の中に赤ん坊を生んで幸福なのでしょうか。地球温暖化はすすみ、テロや紛争はおこっているし…」と。
そうした頃、教会が環境汚染している大企業の献金を受けていることを知り、信心の道がゆらいでいくのです―。
「タクシードライバー」、「レイジング・ブル」、「ザ・ヤクザ」といった名作の脚本家として知られ、監督としても「アメリカン・ジゴロ」などを手がけてきた名匠ポール・シュレイダーが監督と脚本を。本人は50年の構想と述べており、自らが両親の影響で教会の信徒として育っていたようです。何もかもが、おかしく感じられたポール・シュレイダーは書かずにはおれなかったのでしょう。現在72歳になるポール・シュレイダーは、脚本を書いていて、頭をよぎったのがイーサン・ホークだったそうです。「ブルーに生まれついて」「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」で好演しています。イーサン・ホークはオファーをもらって、「この題材に、瞬時に共感しました。本当にこの役を準備するために、これまでの人生があったように感じます」と返しています。
相談に来たヒロイン若い妊婦役に、「マンマ・ミーア!」「レ・ミゼラブル」など独特の魅力をはなつアマンダ・セイフライドが重要な役で物語を最後の最後まで、どうなるかはらはらさせます。
映画の舞台はニューヨーク、戦争から帰ってきた男、故に夜眠れぬほどのものを抱えています。しかし、この純粋無垢なヒロインだけは助けたい、救いたい。
見ていくと、「新 タクシードライバー」のように錯覚する人もあるでしょう。「タクシードライバー」のジョディ・フォスターとだんだん重なっていくのです。アカデミー賞協会のふところの広さに驚きます。アメリカ人がもっとも大事にする教会や国に対して、物申すこの作品の脚本にアカデミー賞脚本賞部門のノミネートをするなんて素晴らしいの一言です。
原題は「ファースト・リフォームド」という教会の名前で日本語タイトルは、あまりにも重いのですが、主人公の牧師の魂のゆくえが変わっていくことはそうなのです。
「世の中、神も仏もない!」という言い方をする時があります。
イーサン・ホークは各地の映画祭で30個以上の主演男優賞を受賞しています。
たしかに、ポスターもほとんど黒い色で、題名があれですから見たいと思う人は少ないでしょう。私も見る前は、不安でした。
しかし、「絶望名画」の傑作の一本です。どういうラストが待っているかは是非、スクリーンで見ていただきたいです。アート・エンド・エンタテイメントのつくり方がうまいです。
「タクシードライバー」ファンの方は必見です。「タクシードライバー」の題名を聞いたことのあるくらいの方も、また、全然、知らない方も本年度、心に残る1本です。是非、ごらん下さいませ。
日本映画の旧作リバイバル上映は、東京で上映されたものは出来る限り実現させたいと思っています。
「京マチ子映画祭」を組んでいたところ、偶然お亡くなりの報がはいってきたのです。5月12日、お亡くなりになられています。95歳でした。ご冥福をお祈りいたします。
さて、数ある中から、7本の上映をいたします。
日本人離れした顔の美しさに、圧倒的といえる豊満なスタイル美は、いわゆる「押し出し」の良さでは天下一品なんですね。
さっそうとして、パリっとして、誰もが感じる信頼感がただよう貫録になっています。
■とにかく映画としてもとことん面白いのが「ぼんち」と「女系家族」でしょう。大阪出身の京マチ子さんの大阪弁は当然のことながら、たて板に水の如ききれいでカッコイイ言いまわしにうっとりです。特に、「女系家族」は遺産相続の骨肉の争いの話しでして、専門用語まあスラスラと長セリフを見事に聞かせてくれます。いずれも山崎豊子さんの原作のすごさはあるのですが、宮川一夫さんのカメラもみせますからね。若尾文子さんとの共演も、当時の大映映画の女優さんの素晴らしさを感じていただけるでしょう。
■「鍵」は「ぼんち」の市川崑監督作品で、宮川一夫さんのカメラ。
京マチ子さんは独特のまゆのメイクなどで、誰にも出せない妖艶さを全開させます。公開時の惹句(キャッチコピー)は、「愛欲描写の凄まじさに、映画化不可能を叫ばしめた谷崎文学の完全映画化!」とか。さすがGW(ゴールデンウィーク)の言葉を考えついた大映だけあって、うまいですね。なんと成人映画に指定されてたようです。今のR-18+ですね。
■「赤線地帯」よくこの題名で公開したのは、天下の溝口健二監督だったからでしょうね。京マチ子さんの役は大阪出身が東京の吉原にきての設定。実はイイとこのお嬢さんで後半父親と対決する大阪弁のタンカは見せ場に。
サブリナパンツ顔負けのパンツルックはめちゃくちゃ似合っているんですね。これも宮川一夫さんのカメラ。
■「羅生門」黒澤明監督を世界的にした1本。のちの、「羅生門」方式みたいにと言われる登場人物が語ることがそれぞれちがっており、真実は…。というみせ方のアイディアに驚きます。時代劇にボレロをバックに流すアイディアも。京マチ子さんは時代劇衣裳も見事に似合い、絶叫セリフも合っているんですね。
■「地獄門」平安、平清盛が出てくる話しで、見どころのひとつが宮島です。ここでの京マチ子さんは唯一この7本の中で、まさに平安当時の女性の鏡のような役どころを、おさえて演じているので見終ってしまうと、「ああ京マチ子さんの映画なんだ」ということを知ることになるのです。個人的見解です。ラストシーンは、カメラがもっともっと寄るべきでした。
男主人公は頭を丸め仏門の道をいくところが遠くすぎて少しわかりにくいですね。日本人でも。外国の人はどう見たのでしょうか。イーストマン・カラーで大映第1回作品で、色彩の美しさ、セット、人海戦術にただただうっとり。すごい話しを映画化したものだ。
多分「羅生門」の話しもすごいものがあるので、その京マチ子さんのイメージでこの狂恋的テーマにしたのだろうか。源平合戦があるわけじゃなし。当時の大映の永田雅一社長は永田ラッパと言われ、大言壮語の勝負師で、この企画は社員全員が反対したようで、「それなら、わし一人でやる」と言ったとか。京マチ子さんに惚れ込んでつくるこういう映画会社に心から讃美をおくって敬服しますね。「映画の奇跡」なのでしょうね、こいいうことが。
「ブラック・クランズマン」(2018年アメリカ映画)。
重々しいタイトルに見るのをためらう方も多いでしょう。しかし、全米では初登場5位の興行収益で大ヒットスタートしています。
映画のつかみから前半の展開は、面白いのなんの。作品のもつメッセージの意味は、あとからじわりと、また、ハードに伝わってくるつくり方なんですね。
一番驚いたのは、かの世界中のどこかで必ず上映されている超有名な「風と共に去りぬ」のシーンからはじまったことです。南北戦争のただなか、ヒロイン、スカーレット・オハラが、負傷兵の看護婦をしていて疲れはて外の広場に出ると、そこにははてしなく続く死体の山。南軍劣勢と敗退ですね。カメラは、横に流れながら引いていきその死体の無限さを徹底的にみせて観客の度肝を抜きます。この画面のカットが止まるところがアメリカの国旗です。
南部の良家のヒロイン、スカーレット・オハラの家は黒人の使用人をとても大事にして描かれています。すごいのはスカーレットにいちいち注意をして場面をさらい笑いをとるのがメイド頭みたいなかわいいおば様マミーです。1939年の作品でアカデミー助演女優賞をこのマミー役のハティ・マクダニエルが受賞します。なんと、黒人でアカデミー賞を受賞したのは彼女が初めてなのです。考えてみれば、黒人へのリスペクトが随所に現われている作品でもあったのです。その映画のシーンが冒頭なんて、こうして、色々なことを考えさせてくれる機会を与えてくれます。
実は「風と共に去りぬ」の中にも、それと思える地下組織でアシュリーが負傷してのエピソードは、KKK(クー・クラックス・クラン)のことのようですね。「サークルの仲間たち」の意をもつらしいのですが、白装束で頭に三角頭巾をかぶり、特に黒人差別が激しく、アジア人、ヒスパニック系など他人種に対して異をとなえ時に応じて暴力、犯罪行為に及ぶこともあったのです。
「グリーンブック」で黒人の名演奏家がわざわざ南部に演奏旅行に行ったことを思い出してきます。南部で黒人が認められなきゃだめなんだ、というわけです。1962年が舞台ですからね。
本作は、黒人としてまれに刑事になれた主人公がこともあろうに新聞記事でKKK団の広告を出している電話番号に連絡し、自分は黒人だから入会できないので同僚の白人刑事と共に、潜入捜査をするという話しです。故に「ブラック・クランズマン」のタイトルにしています。黒人だから集会には参加できず、白人の刑事が出向き、電話での応答は黒人刑事がする、二人一役というおかしさもあります。
監督・脚本・製作は、ブラックムービーの旗手、黒人のスパイク・リー。62歳。スパイク・リー監督の「マルコムX」(’92)で大注目を浴びアカデミー主演男優賞ノミネートされたのが、今や大スターのデンゼル・ワシントンで、本作ではその息子のジョン・デヴィッド・ワシントンが黒人刑事役に。白人刑事役は「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」で悪役カイロ・レンを演じ、「パターソン」「沈黙―サイレンス―」のアダム・ドライバーが演じています。
特筆すべきは、本作はアカデミー賞は6部門ノミネートされ、作品賞もあったことと監督賞はスパイク・リーはじめてのことだったのです。他のノミネートはアダム・ドライバーの助演男優賞、編集賞、作曲賞、脚色賞とあり、受賞したのは「脚色賞」でした。
フランスのカンヌ映画祭では最高賞のパルムドールの「万引き家族」の次点となるグランプリも受賞しています。
黒人の目から見て描く黒人差別の実態はすさまじいものがあり、それはまた、世界中でおきている人種間の差別による内戦、紛争を思い出さずにはおれません。まさに絶望の人種差別です。
「アメリカ・ファースト!」のセリフが何度も出てきます。スパイク・リー監督はトランプ大統領に見てほしいと、コメントを出しています。
白人が作る黒人主人公の良質な映画も多いのですが、黒人スタッフ、キャストによる黒人映画のパワーはすさまじいものがあります。
そして、また書かなきゃならないのですが、こういう作品が企画されて製作されて上映されて、アカデミー賞に話題になるアメリカは、やはりすごいです。
無口で内気な青年が主人公。大型スーパー・マーケットで働き始める。首すじ後(うしろ)や腕の先からのぞくタットウーを制服で隠しなさいと言われる。
それでもそっと見守り続けて、フォークリフトのあつかいをていねいに習って、覚えていきだす。職種はそれぞれ、観客もちがうけれど、ここまでの「職業映画」はめずらしいともいえる。そして、どこの職場もどんな仕事も似たりよったりだと感じる人も多いだろう。
過去ある青年は、昔の不良仲間と縁を切ってこの孤独に耐えられるか、と悩みます。つききりでおしえてくれる50代の先輩は、青年以上の孤独で悩んでいるふしがある。
原題は原作小説の「通路にて」で、巨大スーパーの商品在庫の「通路」をあらわしている。休憩所でコーヒーをいつも飲んでいる気になる女性も、時おり沈んでいる時がある。
27、28歳の新・就職は、心もあらたに力が入る。しかし、すぐくじけるかも知れない。仕事は、常にいつもつらさがとなり合わせだ。
頼るのは、多分、自分だけ。新就職(または再就職)には不安感が強いかも知れない。決してあせらず。仕事を早く覚えようとせず。職場のその自分の場所に慣れていけばいいのです。天職とかは、10年つとめていや20年以上それ以上の時間を経ないと分らないのでは。好きだから天職、苦手だから天職じゃない、ともいえない。なかなかに難しい。
「美しき青きドナウ」が流れ、フォークリフトが在庫の商品を積んでいく。名作「2001年宇宙の旅」で、猿人が骨を空に放り上げ、これが宇宙船に変り流れる。なんか気が抜けるユーモラスなシーンとしてあらわしている。
脚本・監督のトーマス・ステューバーは、アキ・カウリスマキ監督の製作方法を愛しているとかで、「寂しさ」とユーモアが非常に重要であるとしています。37歳。たしかに、似たタッチがあるますし、日本語題名もアキ・カウリスマキ風ですね。
主演の青年役フランツ・ロゴフスキは「未来を乗り換えた男」でもいいところを出し、本作と「未来を乗り換えた男」でドイツアカデミー主演男優賞を受賞している。
2枚目のイケメンというより、かつてのフランスのジャンポール ・ベルモンドや「ビューティフル・デイ」のホアキン・フェニックスとを連想させる個性的つらがまえが魅力の人です。
1978年アメリカ映画。製作40周年記念公開。
アカデミー賞5部門受賞。作品賞・監督賞・助演男優賞クリストファー・ウォーケン・編集賞・音響賞。
キネマ旬報ベスト・テン第3位。
上映時間3時間4分をまったく感じさせない映像の迫力と、さすが編集賞をとっている作品です。
平たくいうと、3部構成にしていて前半1時間余りは地方都市で(ペンシルベニアの製鉄所で働く、青年3人のベトナム戦争出征式と仲間の結婚式を町のホールでえんえんとみせる。しかし、これがあとできいてくるつくり方だ。そのあとは、戦地のベトナムにうってかわる。青年3人は再会するが、捕虜となり拷問をゲームのように強要される。なんとか生きのびられるが。第3部目は、故郷に帰ってからになっていく。
「ディア、ハント、トゥナイト!(今晩、鹿狩り!)」というセリフが心に残る。この題名だが「鹿を狩る人」である。彼らの楽しみがこれなんですね。夜から早朝にかけて、山に行き、鹿狩りをする。ところが、ベトナムから帰って鹿狩りに主人公マイケル(ロバート・デ・ニーロ)が、行くのですが、この鹿が撃てないのです。「オーケー、これでいいのか」と空にむかって撃ってニックは鹿に叫びます。
前半のいかに平和で楽しかった時間をすごしたのかが、だんだんと伝わってきます。戦地での殺し合い、拷問ゲームがショッキングです。6連発の銃に1発だけ銃弾を入れ回転させて、自らのこめかみを撃つ恐怖の拷問。ロシアン・ルーレットです。
平和に暮していた人たちがベトナム戦争に行ったことで心も体もダメージをおっていく。そのまわりの人たちさえも。
ニック役のクリストファー・ウォーケンは助演男優賞まちがいなしの演技で観客を魅了します。
前年「ジュリア」で映画デビューしたメリル・ストリープがニックとマイケルの間でゆれ動くヒロインを好演、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされています。
ロバート・デ・ニーロもアカデミー主演男優賞にノミネート。
考えてみれば、これは「絶望名画」の傑作といえるでしょう。
是非、スクリーンで見ていただきたい1本です。
余談ながら、阪本順治脚本・監督の「半世界」がちらと過ぎりました。主人公のこども時代からの男友だち3人。
地方都市で炭焼き職人をしている。友人の一人が自衛隊をやめて故郷に帰ってくる。派手なことはないが故郷の平和な暮し、そういう世界もあれば都会生活もあれば、自衛隊の世界もある。男友だち3人のうち一人が死ぬ。色々あっても、人生はつづいていく―。
すでに「ペパーミント・キャンディー」について書いているのですが、これも「絶望名画」の傑作です。
外国映画、日本映画問わずクラシックスのリバイバルはもうスクリーンでは一生見られないかも知れませんので、是非ともごらん下さいませ。
主人公、登場人物が絶望的状況に追い込まれていくのですが…という展開。
絶望は神様が与えてくれたギフト(贈り物)。
絶望のとなりに希望がある。
今、生きづらい現代こそ、
必見のいとおしい映画たちなのです。
令和元年の最初の月、5月から続々、公開されていきます。
主人公は15歳の少年。赤ちゃんの頃、母親は出ていく。少年に優しいが、自分ペースの父親がトラブルで亡くなる。少年のアルバイトをしている競馬場の競走馬ピート(原題である)が、唯一のともだちになる。女性騎手から競走馬を愛しちゃダメよ。ペットじゃないのよ。競走馬は勝てなきゃ、ここに居れないのよ」と釘をさされる。
しかし、そのピートは競走馬として限界と判断され、孤独な少年は馬を連れて荒野へ旅たつのです―。
脚本・監督は「さざなみ」で世界的に有名になったイギリス人、アンドリュー・ヘイ。46歳。
「さざなみ」は、原題の「45周年」連れそった熟年夫婦がひとつの出来事でまさにさざなみがおこりだし、記念日のパーティーで妻役(シャーロット・ランプリング)が夫(トム・コートネイ)の手をふりはらう強烈なラストシーンは忘れられません。ベルリン映画祭主演女優賞(シャーロット・ランプリング)受賞、主演男優賞(トム・コートネイ)受賞。
人間観察とそのリアル描写と、予測できない展開に本作もくぎづけになること、まちがいないでしょう。
少年役のチャーリー・プラマーはヴェネチア映画祭で新人賞を受賞。この監督は、俳優の資質をぞんぶんに発揮させる演出能力にたけた人なのでしょう。
チャーリー・プラマーは、誰もがこの少年に似たものを持っている感覚をみごとに出しています。それ故に、家出をよぎなくされることに共感できるのです。
「家」がいやだから、家出するのか。「家」が欲しいから家出するのか。そこのところ、「家」についてとてもとても深く考えさせられます。「家なき子」の言葉がずしんと響きます。
必見の「絶望名画」ではないでしょうか。
「荒野にて」の原作者ウィリー・ヴローティンは序文に、「確かに我々人間は弱く、病気にもかかり、醜く、こらえ性のない生き物だ。だが、本当にそれだけの存在であるとしたら、我々は何千年も前にこの地上から消えていただろう」と、アメリカを代表する「エデンの東」などの作家ジョン・スタインベックの言葉を引用しています。そこに、アンドリュー・ヘイ監督もぐっとこられたようです。
なかなか、面白くみさせて頂きました。
先だって、「バイス」(副大統領・悪徳の意味をもつ)が上映され、アメリカ政治史における“影の大統領”としてイラク戦争へと国を導いたとされるディック・チェイニー副大統領にスポットを当てた作品でした。
実話ベースの政治家が実名で登場(俳優がそっくりに演じたことで、アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しています。アカデミー作品賞にもノミネートされてました。
まったく同じ背景で、イラク戦争の大義名分となった大量破壊兵器の存在に疑問をもった、新聞記者の活躍をみせてゆきます。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストの大手新聞に対し、ナイト・リッダー社という中堅新聞社のワシントン支局が、ついに真実をつかむのです。
驚きとともに、よくぞ映画化したものです。映画にする内容はたくさんあり魅力いっぱいですが、かなりの勇気がなければ政治ドラマはできません。
名監督ロブ・ライナーが、2003年のイラク侵攻が始まった時からこういう映画をとりたいと考えていたそうです。大ヒット作「スタンド・バイ・ミー」は曲も有名ですね。ほかに、ロマンティック・コメディ「恋人たちの予感」、ミステリーと軍部の裏側をみせた「ア・フュー・グッドメン」、サスペンス「ミザリー」と幅広いジャンルでつくられています。そのロブ・ライナーが、製作と監督と出演の1人3役で挑んでいるのが、もう黙っておれないの気持だったのでしょう。72歳になられています。しかも、主役となる記者たちの支局長役でピッタリの役どころなのです。
多分ロブ・ライナーが製作・監督・出演もあり、ウディ・ハレルソン、ミラ・ジョヴォヴィッチ、トミー・リー・ジョーンズと、なかなかのキャスティングがそろったのかも知れません。
日本題名のサブタイトルの<衝撃と畏怖の真実>は、原題の<衝撃と畏怖>からきています。なんとこれは、イラク侵攻の軍事作戦名だったようです。
「表現の自由がある国の映画監督であるからこそ、こうした作品を作りつづけなければと思うのです」と、ロブ・ライナーは語っています。
上映時間1時間31分も見やすいです。
エンターテイメントなつくり方も、誰が見てもわかりいいのです。
アメリカ映画は、さすがですね。
見終って、もう一度見たくなる映画があります。本作がまさにそれですね。日本でもヒットしているそうです。是非、多くの方に見て頂きたい作品です。
相変わらず、こんな映画体験はないような雰囲気で、まったく飽きさせず148分の旅に連れて行きます。
主人公は小説家を目指している青年。偶然、美しくなったおさななじみに会います。(このおさななじみというところが、いいですね。)
どちらも決して裕福でない田舎育ち。
彼女は青年をアパートに呼び、意気投合します。そして、アフリカに旅に出るから、猫のエサやりに来てくれと頼みます。もちろん、青年はエサやりに行きます。
やがて帰国したとき、彼女の横に洗練されたたたずまいの男性が居ます。彼女の彼氏なのか、いやそうはみえないと主人公は思いながら、三人は歓談しているのでした。
「アメリカには、ふたつの飢えた人がいるんだって。リトル・ハンガーは、おなかがすいた人。グレート・ハンガーは、人生に飢えた人。なぜ生きるのかを知ろうとする人」
「まるで、『華麗なるギャツビー』だ。韓国には、そういう金持ちが多い」なんかセリフが心に残ります。
主人公の田舎に、まったく似合わない高級外車ポルシェで二人がやってきます。三人はリラックスし、彼女は体を動しています。たそがれどきで、マイルス・デイヴィスの「死刑台のエレベーター」が、流れ、名場面をつくります。
「ビニール・ハウスを焼くのが趣味なんです。汚なくて目ざわりなビニール・ハウスは僕に焼かれるのを待っている気がします」とポルシェの彼はつぶやくのです。
そして、この日をさかいに彼女の姿が消えるのです。まさに、ゴーン・ガール。
原題「バーニング」(炎上)。村上春樹の「蛍・納屋を焼く・その他の短編」の映画化です。
劇場版であるのは、すでにNHKで97分版が放映されていて、いわば完全版の上映です。
カンヌ国際映画祭・国際批評家連盟賞受賞作。
日本でも大変に人気のあるイ・チャンドン監督(65歳)の8年ぶりの新作は、製作・監督・脚本で、全力投球です。
映像美をバックに、リアルな心理描写のエンディングをスクリーンでご確認して頂きたい力作です。
キネマ旬報ベスト・テンには入賞するでしょう。
「バーニング 劇場版」がヒットしているそうです。それに合わせて、イ・チャンドン監督の名作がアンコール上映されています。
なかでも、この監督を一躍、有名にしファンをいっぱいつくったのが「ペパーミント・キャンディー」(2000・監督・脚本)です。韓国のアカデミー賞と呼ばれる大鐘賞で作品賞・監督賞・脚本賞・助演女優賞・新人男優賞(ソル・ギョング)と全5部門を受賞しています。
題名の「ペパーミント・キャンディー」は、主人公(ソル・ギョング)の初恋の女性が、ペパーミント・キャンディーをつくる工場で働いているから。手紙と共にペパーミント・キャンディをおくってくれている。
なんと、この作品のリバイバルはかなり前から待望されていてやっと、公開になるのです。
全世界の映画監督がしているようでしていない独特のスタイルでつくったものですから、映画ファンのみならず多くの人が魅了されてしまったのです。
新人男優賞を受賞したソル・ギョングは20代の青年から40代の中年までの、ドラマにみちた話しをピュアにみせていきます。
「あの日に帰りたい…」とは、誰もが人生の中で一度や二度や三度は、つぶやくものです。
それを映像的に、どうやってやるのでしょうか。
汽車が走っていても、逆走しています。汽車にそって歩いている人も、後向きに歩きます。
「バーニング」のところで、「相変らず」という表現をしたのですが、監督の純愛は結ばれそうで結ばれない、或は、心に思いつづける愛こそ美しいのでしょうか。
本作で、「人生は美しい」というセリフが出てきます。印象的ですね。
衝撃的ファースト・シーンから、主人公の人生を自分の人生に重ねて、つい見ています。
映画史上に、極めて例のない(個人的には知らないです)現在から過去への逆回転ムービー。
一見の価値ありです。
キネマ旬報ベスト・テン第10位でした。
スクリーン上映でのこの機会をのがさないで下さいませ。
アカデミー賞<長編アニメーション賞>受賞ということで、上映いたします。ゴールデン・グローブでも< アニメーション作品賞>を受賞しています。
スパイダーマンの本格的劇場アニメとなった本作は、全米で公開されるや特大ヒットを記録。興行的にも作品的にも、予想以上の評価を受けているニュースが早々と伝わってきていました。
アニメが苦手な方、親しんでない方がごらんになっても十分以上に、楽しくみれるつくり方がいいですね。
私もマニアックなイメージがあったのですが、その「映像力」と「音響効果」で、ぐいぐいとひきつけられていきます。
スタッフ、キャストを紹介する冒頭のタイトル・バックからこだわりいっぱいに凝っていて、すでにここから観客の心をつかんでいきます。
スパイダーマンを知らなくても、興味がなかった方も、ある意味スパイダーマン入門編みたいな内容も、大ヒットした要因のような気がします。
アメリカ映画界が、手間もヒマもお金をかけた大作アニメをだまされたと思って、見て頂けたら嬉しいですね。
「運命を受け入れろ。」というキャッチコピーが、見てなるほどと、また、見た人がそれぞれ自分の立場の気持の中で、何かがピカッとスイッチが入るかも知れません。
リクエスト上映でもあります。一週間限定上映です。
天下の映画雑誌キネマ旬報のアカデミー作品賞予想を3人の映画評論家の先生がして、うち2人が「ROMA/ローマ」にしていた。このときの段階では、日本では劇場で公開していないから、スマホかTVモニターで見たのだろうか。限定公開のロサンゼルスに行って見てきたのだろうか。と、ついそこまで気になってしまう。ちなみにアカデミー作品賞は「グリーンブック」なのですが、「ROMA/ローマ」のニュースはすごかったです。
ネットフリックスという、190ヶ国以上で1億何千万人超えの有料メンバーが利用するインター・ネット配信の会社がつくった作品だったからです。当初は、スマホやテレビモニターなどのネット配信でしか見れないと言われてました。が、日本での劇場公開が決定し、私もすぐに見に行きました。
アルフォンス・キュアロン監督は、自分が心からしたう家政婦を主人公にした、ある家族の日常を描いたのです。本作での、アカデミー監督賞と撮影賞(いずれも本人)と、外国語映画賞受賞は、納得の力作です。
まず、撮影の美しさですね。とりわけ、横移動するショットが何度かあり、臨場感を出しています。ラスト、エピソードの大きな波はどうやって撮影したんだろうか、というくらい観客も息をのむほどです。
その波の音の凄さ、全編を通して日常の中で耳に入ってくる音を、しっかりと入れていて音響編集賞も、とれていたかもくらいです。ノミネートはされてました。
スクリーンで本作を見て、一番声あげて驚いたのは、エンドロールの最後のあたりに、ドルビー・アトモスのマークが。通常のドルビー・デジタルのさらに上をいく、映画館の天井にもスピーカーを配置した最新トップクラスの音響をいれているのです。そうです。劇場のスクリーンでの公開のつもりでつくっているんですね。多分、「できれば劇場のスクリーンで」オファーあれば配信は続けながら劇場にも出しましょう、ってことですよね。
スマホやTVモニターであの映像美や音響美は100%伝わらないけれど、たしかに、どこの町にも映画館があるとは限りませんね。
御存知の方も多いでしょう。テレビのリモコンに、赤字でネットフリックスのスイッチボタンが装備されてますからね。そこまでテレビメーカーとタイアップしているネットフリックス。今まで、こわくてさわれなかったそのスイッチボタンがこれでだいぶ身近になったでしょう。そういう、映画への愛情ってことですよね。かつて、アメリカの映画館がない地域にケーブルTVがはやったみたいに、そのもっとスゴイバージョンならば月額も高くなければ、見れる作品がさらに多ければ、たしかに魅力満点ですね。
映画館で見たい人は見る。配信もあり、というスタイルは、今後もっと変化をするのかも知れませんが、私は両方ありで良いと思いますね。スクリーンで見て、是非、くらべて頂きたいです。
「ROMA/ローマ」は、一見の、というより必見の価値ありです。
リクエストを多数いただき有難うございます。
可能な限り、おこたえしたいと思います。
海のきれいな地方都市で、昔ながらのやり方で山の中で炭焼きをしている主人公、稲垣吾郎の好演が素晴らしいです。妻役の池脇千鶴も存在感たっぷり。笑かすところも、ほどよく。
不思議な題名「半世界」は、日中戦争従軍カメラマンの写真集のタイトルで、中国人の年寄りや子どもたち動物の写真とか。つまり、半分の世界ではなく、もうひとつの世界の意味あいで、マイナーな仕事や小さないとなみで成り立っている、と監督・脚本の阪本順治は語っています。世の中は世間があり、世界もあるという。
30代後半の主人公達の、勝負をかけなきゃいけないかなの心のもやもやに共感できます。
評価の高い作品でもあります。1週間限りですが、是非、ごらん下さいませ。
予想以上の面白さに、おどろくほどです。
ナチスドイツで、ヒトラー、ヒムラーにつづく「第三の男」と称されたハイドリヒの話しです。まずこの役を「猿の惑星:新世紀(ライジング)」、「ファースト・マン」のジェイソン・クラークが堂々のはまり役なのですね。彼をナチス党に入党をすすめるのが、貴族階級の美女リナ役の「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイク。要は、この女性がモンスターのハイドリヒをつくっていったのでは、と思わせるところがなかなかに興味深いです。「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイクがハイドリヒの妻になり、このキャスティングは大いに受けます。
夫を変えていくイメージが「ゴーン・ガール」でついているのをうまくつかっているのでしょう。いつしか、ハイドリヒは、原題の「鉄の心臓を持つ男」というニックネームでヒトラーから呼ばれだすのです。顔つき、体格、迫力とこわもてが決ってくるのです。「ジュリアン」の父親役の怖さも強烈でしたから、やはりキャスティングは大事です。「ジュリアン」は追記です。フランスのアカデミー賞といえるセザール賞の作品賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の4部門受賞しています。
さてこの映画の面白さは、このハイドリヒを暗殺せんとしている若き兵士たちの作戦計画。ここは見る者を共感させイギリス映画の名作「第三の男」の日本題名をつかっていますが、終始エンターテイメントに見せていき、是非、ごらんになって頂きたい1本です。
斎藤工のピュアさと、シンガポールの監督の良さがミックスされて1時間29分の上映時間もほどよく、どなたがごらんになっても楽しんでいただけるのではないでしょうか。
日本人の父親とシンガポール人の母親をもつ主人公が斎藤工でして、自分のルーツを探しにシンガポールへ、というよくある設定かも知れませんが、カラッと見せているところが好印象です。
現地の飲食街や市場や町の映像が、あたたかく明るく、パワフルで行ってみたくなるほどです。日本のラーメンとシンガポールのバクテー(豚の骨つき肉などをスパイスとハーブと一緒に煮込んだ料理)の両国のソウル・フードの親しみやすさもいいんですね。
話題の松田聖子さんは、シンガポール在住の日本人フードブロガー役(ブログで食べ物情報をネットでしている人)です。良い意味で<松田聖子オーラ>はありますが、斎藤工がこのブログのファンで、頼っていき相談相手みなるくだりはうまいですね。松田聖子さんファンの方も満足できること、まちがいないでしょう。
2016のシンガポールと日本の外交関係樹立50周年の記念しての企画製作は、上出来と思います。
痛たまれないニュースが連日のように流れた、家庭内暴力はいずれの国でも起きているのです。
原題は「親権まで」で、ジュリアンはその家族の11歳の息子のことで日本題名にしています。
フランスの40歳のグザヴィエ・ルグラン監督は、アカデミー賞短編実写映画ノミネートをはじめ、映画祭の短編映画賞に輝いています。それらを基にし、長篇デビュー作で、ベネチア映画祭の最優秀監督賞を受賞し、注目されます。
日本では、離婚後単独親権を9割以上が妻側が取得しています。が、ジュリアンの別れた両親が面会権をめぐって解決しないのは、共同親権があるからなのです。単独親権か、共同親権か―。
監督自身が両親が離婚をしていて、その難しい親権問題を経験をしているからのリアルさを追求していきます。が、ドキュメンタリー・タッチではなくアメリカ映画の「クレイマー、クレイマー」(これは妻クレイマー対夫クレイマー離婚裁判の意味)と、暴力的父親が母と息子たちに迫ってくるところは、「シャイニング」(クライマックスの部屋を襲うシーン)をイメージしたそうです。
世界中の家族関係のままならぬ状況を、あえて、シリアスな怖さに展開するのでなく、サスペンスにみせることでこの重大な問題を幅広く訴えようとしているのでしょう。
クライマックスで母親が自らが行動の判断をしないで、警察に電話をするくだりは、実はそれこそが正しい判断であることを伝えているのかも知れません。
題名から、ポスター・イメージから、どうしても2017年「君の名前で僕を呼んで」を連想させますが、ちがうんですね。ポスターに、ティモシー・シャラメが男性と抱き合っている場面写真がありますが、彼はお父さんの役のスティーヴ・カレルです。
「君の名前で僕を読んで」は、美青年同性愛映画として、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。父親役のスティーヴ・カレルも「フォックスキャッチャー」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。
余談ながら、美青年スターは相手役がどういう役柄であり個性派男優を組ませている傾向があり、なるほどうまいなと感じています。アラン・ドロンでいえば、「地下室のメロディ」のジャン・ギャバン、「冒険者たち」のリノ・バンチュラ、「さらば友よ」のチャールズ・ブロンソンです。本作の監督もティモシー・シャラメとスティーヴ・カレルの共演には、意識をもったのではないでしょうか。しかも、これが絶妙ですね。
成績優秀でスポーツも万能、将来を期待されているニック(ティモシー・シャラメ)は、「誰もやっているよ、大丈夫だよ」みたいに、父親に言いつつ薬物に手を出し次第にやめられなくなっていきます。
題名の「ビューティフル・ボーイ」(美しい少年)は、もちろんティモシー・シャラメのことであります。それと父親が音楽ライターで、ジョン・レノンの最後のインタビューを手がけたこともあり、ジョン・レノンがわが子ショーンに ♫目を閉じてごらん 怖がらなくていいよ モンスターはもういない 安心していいんだよ ここにいるのはパパだから♫ と唄ったものを、ニックの子守唄にしていたところからきています。
最も印象的なのは、父親が息子をハグして言うときの言葉、「すべてを」です。君のすべてを全肯定するという意味でしょう。美しくも、すごい言葉であることを感じいりましたね。
何年もかかって、薬物から脱却する事実をなんと、父親と息子が別々の本を書いており、その2冊を合わせて脚本にしたそうです。
要は、父親と息子の献身と愛の作品なんですね。人間を誰かが(家族、友人、知人などあと誰だろう)弱って苦しんでいるときに、そばに居てくれる人、助けてくれる人が居ることの素晴らしさと、有難さを描いているのです。
「オーバー・ザ・ブルースカイ」で評価を受けたベルギー出身のフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン監督作。ティモシー・シャラメは、どうしてもこの役をやりたい為に、何度もオーディションを受けたほどの力の入れ方です。
「ムーンライト」、「ビール・ストリートの恋人たち」のブラッド・ピットひきいるプランBエンターテインメントが製作です。
一見の価値ある作品です。
小説家、作曲家、画家などの伝記映画はけっこうありますが、これはとても面白く見ましたね。
現在も世界中でロングセラー「ライ麦畑でつかまえて」のJ. D. サリンジャーの伝説的エピソードをおりこんだ真実のストーリーです。
2019年1月1日に誕生100周年をむかえたということもあり、つくられたのでしょう。「サリンジャー 生涯91年の真実」の映画化権をとった、「大統領の執事の涙」「ハンガー・ゲーム FINAL」の脚本家のダニー・ストロングが、なんと製作と脚本と監督デビューですから、力が入っています。その情熱がすごいです。
小説家になるきっかけは、母親のアドバイスにあったのですね。そして、大学時代の教授のアドバイスにより、ますます、みがきをかけていくのです。「その心の中の声を、文章にするんだよ」と。そして書き続けボツになり、書き続けボツになり、やっと、掲載となるのですが、第2次大戦が勃発、入隊することになるのです。
配役が素晴らしいのです。
サリンジャー役に「マッドマックス 怒りのデスロード」のニュークス役で注目を集めたニコラス・ホルトが熱演。大学の教授役にケヴィン・スペイシーも適役か。女優陣が映画に花をそえ重要な部分をみせます。ゾーイ・ドゥイッチは、「恋しくて」などのハワード・ドゥイッチの娘。サリンジャーが恋するウーナ・オニール役を、出版社ドロシー役のサラ・ポールソンも、好演しています。
原題は「ライ麦畑の反逆児」と同じですね。
1951年、サリンジャーが32歳のとき「ライ麦畑でつかまえて」が発行され、ベストセラーに。かの有名なビリー・ワイルダー監督、スティーブン・スピルバーグ監督からの映画化の希望をすべて断っているそうです。
戦争を体験し、戦争後遺症に悩まされる。
30代中頃から、広大な田舎で質素暮しというか、世俗から離れてひっそりとおくる「隠遁生活(いんとんせいかつ)」をしていることが、とても興味深いですね。
2010年、91歳で亡くなっています。
こういう展開の伝記映画は、是非、多くの方にごらん頂きたいですね。わかりやすく、ひきつけてやまないサリンジャーの生き方は、ヒットして幅広い層の方に知って欲しいですね。
「しあわせのカタチは多少の差こそあれ、ほとんどが同じ表情をしているが、不幸、哀しみのカタチは驚くほど、その状況が違っていて、哀しみのふちにいる人々は、戸惑い、途方に暮れ、どうしたらよいのかとうろたえるのである。その上、しあわせの領域にいる人より、不しあわせの状況にいる人の方が圧倒的に多いというものなのである」と、作家の伊集院静さんは書かれています。
大女優のシャーロット・ランプリングは、熟年の女性のあり方を見事に演じて観客に説得力をきびしいまでに、みせてくれます。つつましやかな日々をおくるアンナ(シャーロット・ランプリング)と夫。会話は少ないけれど、愛犬は夫になついています。アンナはパートをしながらカルチャー・スクールやプールに通っています。
ごく普通の熟年夫婦なのですが、ある事で夫が警察に収監され、不安と孤独感にアンナはおちいります。この映画は、事件についての結着を求めてないのですね。たとえば、アンナが息子に会いに行って拒絶され、孫へのプレゼントも受け取ってもらえないあたりに、明らかに親子の確執があり、アンナは号泣します。この号泣は孫にも会わせてもらえないことはもちろん、夫の警察の収監にもあるかも知れません。
アンナがそうであるように、ある程度の年齢を経てくると、さまざまな業を背負い、冒頭の文章のように「不しあわせ」の状況になっていくことが多いのでしょう。
原題はヒロインの名前の「アンナ」です。それをシャーロット・ランプリングの人気ヒット作の「まぼろし」や「さざなみ」にあやかっての、ひらがな4文字タイトル「ともしび」としたのは、お見事ですね。
愛犬を他人に手放す場面に、はっとします。
もう一度、人生の後半に希望のともしびをもって、生きなおそうとするアンナ。自らの老いを隠すわけでもなく体当たり演技をするシャーロット・ランプリングは、ただただ感動です。
ヴェネチア国際映画祭・主演女優賞受賞。
アメリカの「自由」とは、まさにこれなのですね。国民の立場から、重大な疑問あるならばドキュメンタリーとしてではなく、エンターテインメントな一本の映画としてつくり、わかりやすく世の中に知らしめる姿勢には、ただただ凄いのひとことです。
題名の「バイス」は、「副大統領」のことで、「悪徳」という意味も含まれているとあります。ならば、日本人向けなタイトルにすればより伝わりやすい気がしますが…。
その昔、政界・財界の汚職をあつかった黒澤明監督作「悪い奴ほどよく眠(ねむ)る」(1960)なる強烈なタイトルの作品がありました。黒澤明が東宝から独立して黒澤プロの第一回作品。東宝と共に製作、東宝が配給しているのです。当時の東宝はヒットだけを目的とした作品ばかりを作っていなかったのです。余談ですが…。
さて本作は、9.11同時多発テロのあとアメリカをイラク戦争へとみちびいたディック・チェイニー副大統領とブッシュ大統領と、そのまわりの政治家を実名で描いているのです。さらに、評価すべきはアカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞など8部門にノミネートされていることです。アカデミー会員が選出しているのですからね。結果的には、実名の政治家をそっくりにした「メイクアップ&ヘアスタイリング賞」を受賞しています。注目されていたのは、チェイニー副大統領役のクリスチャン・ベールが20キロ体重を増やし、なりきり演技をみせるのですが、主演男優賞は「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレックが受賞します。しかし、ゴールデン・グローブ賞では、クリスチャン・ベールが主演男優賞を受賞しています。正確には、ミュージカル・コメディ部門で。ラミ・マレックはドラマ部門で受賞しているおもしろさ。クリスチャン・ベールは、「バットマン」シリーズ、「ザ・ファイター」ではアカデミー助演男優賞の人気・実力トップクラスの人です。
2015年、アカデミー賞・脚色賞ほか数々の映画賞を受賞した「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のスタッフ、キャストが再結集してつくられています。住宅ローンのサブプライム危機を着目しています。
「バイス」の監督・脚本はアダム・マッケイで、取材していけばいくほど、自分たちの知らないひどいことばかりが出てきて、ついに製作まで参加します。
脇役たちも、いい味を出して、ブラックな笑いもあるつくり方も見やすくしています。
ブラッド・ピットも製作で参加。彼は「マネー・ショート 華麗なる大逆転」は、出演と製作。「それでも夜は明ける」、「ムーンライト」、「ビール・ストリートの恋人たち」、「ビューティフル・ボーイ」とマイノリティを主人公にした作品にプロデューサーとして力をそそいでいます。
日本にもこういう監督、製作者が出て欲しいものです。
戦争がおこれば、利益が入る会社も人もあることが怖いことをふっと考えてみたりします。
さらに驚くのが、チェイニーの許可なく撮影していき、(許可をとると、本人からあそこはカットしろとかの権利が出てくるとか)、そして、実際問題として実名の登場人物から提訴もないようです。
それだけ、「悪徳」のみせ方が映画的にたくみだったということなのです。是非、ごらん下さいませ。
本作も4月4日(木)終了の1週間限りで大変申し訳ありません。
♫男もつらいし 女もつらい
男と女は なおつらい
それでいいのさ いいんだよ
逢うも別れも 夢ん中
という阿久悠作詞の小林旭の「夢ん中」という歌をふっと、私は思い出していました。
ミステリー・ラブストーリーとして見ると、とても分かりやすく面白く見させてもらいました。
邦題はすぐには覚えにくいですね。原題は「トランジット」(通過)で、言ってみれば「通り過ぎる女」としてもらえれば、すごく伝わってきたのではないでしょうか。
陸つづきのヨーロッパは、私たち日本人にはなじみがない国境がありますから、移民、難民など様々な国の人が、国内外での紛争やテロなどで脱出や逃亡を余儀なくされています。ドイツ、フランス合作映画というのが、なんかいいですね。
ドイツで吹き荒れる情勢から逃れてフランスにやってきた青年は、パリからマルセイユへと流れ着きます。
一方、フランスに亡命した作家はパリから行方不明になり、必死で探している黒いコート姿の女性は、その作家の妻です。
あることがきっかけで、黒いコート姿の女性は、その青年にかけより上着に手をかけます。そう、まちがって…。作家の夫の服を着ていたのでしょうか。そのシーンが三度あります。この青年も友人からこの作家に仕事を依頼されていたのです。
ドイツ、フランス合作映画で、「東ベルリンから来た女」、「あの日のように抱きしめて」のドイツの名匠クリスティアン・ペッツォルト監督58歳が、理不尽な迫害や状況があっても、「運命」はある、を描いていて感動的です。
主人公の青年は、ミヒャエル・ハネケ監督の「ハッピーエンド」など引っ張りだこの映画賞を数々受賞しているフランツ・ロゴフスキ。
一方、謎の女性はフランソワ・オゾン監督の「婚約者の友人」で一躍注目されたパウラ・ベーア。「婚約者の友人」を見て、すぐに彼女に決めたそうです。
「めぐり逢い、すれちがい、再会」の恋愛映画のパターンを実にうまくおりこんで、ラストはほとんど主人公がチケットを犠牲にするという「カサブランカ」のようにすすみます。ところが…。
この、ハッピーエンドのラスト・シーンは素晴らしいの一語です。
人生、「逢うも別れも夢ん中」なのですね。
映像も、素敵です。ラストはしっかりと御らん下さいませ。
本作も4月4日(木)終了の、1週間限りで大変申し訳ありませんです。
たしかに、好みがわかれる作品だとは思います。見終わったすぐと、時間が経つとだいぶ印象が変わってきました。
まず天下のコリン・ファース主演です。イギリス男優の総選挙2018年のスクリーン誌の人気1位の方ですからね。「ラブ・アクチュアリー」「マンマ・ミーア!」から「英国王のスピーチ」のアカデミー主演男優賞受賞に、「裏切りのサーカス」、「マジック・イン・ムーンライト」に、「キングスマン」ですからね。
妻役に、話題の「女王陛下のお気に入り」のレイチェル・ワイズ。「ナイロビの蜂」でアカデミー助演女優賞、美しさと演技力をそなえた一級女優です。「否定と肯定」や「光をくれた人」も忘れられませんです。人気絶大の女優さんですよね。御主人は、ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグです。
実話の映画化が大流行です。実話も、いろいろあります。この海の冒険家の話しは、ほとんどしろうとの人が、今の自分の状況をよくし家族のため、自分のため、命賭けでいどむ、話しです。
「人は自分の能力を信じそれ以上のところへ到達したいという願望があるのです。たとえ、それが危険とわかっていてもです」と、コリン・ファースは答えます。すごいな、なるほどなと、感じる自分です。「博士と彼女のセオリー」のジェームズ・マーシュ監督のイギリス映画です。
大好評をいただいています「天才作家の妻 -40年目の真実-」は、あと4月4日(木)で上映が終りますので是非ごらん下さいませ。
パートナー論とでもいうのでしょうか。この心理サスペンスは男性も、このヒロインの立場の方により共感できることは確かです。
だから、女性の方にはもちろんなのですが、男性こそが見るべき1本ではないでしょうか。本年上半期のとびきりの作品です。
「さまざまなこと 思い出す 桜かな」芭蕉。
この作品もアカデミー賞に、助演女優賞と脚色賞と作曲賞にノミネートされていまして、結果、助演女優賞を受賞しています。
ゴールデン・グローブ賞でも助演女優賞を受賞しており、そのほか23映画祭で各賞を受賞し、ふえていきそうです。
2016年「ムーンライト」で、アカデミー作品賞と助演男優賞と脚色賞をもたらした、バリー・ジェンキンス監督・脚本なので注目されています。あの年のアカデミー作品賞発表のとき、「ラ・ラ・ランド」とコールされるハプニングがあったことでも記憶に残ってらっしゃる方も、おありではないでしょうか。黒人だけのキャスト、監督、脚本による作品賞は史上初で歴史を変えた一作、と、言われています。
そのバリー・ジェンキンス監督は、1970年代のニューヨークの貧しい地区に生きる若い男女の愛と信念を描いたドラマです。
アメリカ黒人文学を代表するジェイムズ・ボールドウィンの小説「もしビール・ストリートが語ることが出来たなら」を映画化しています。
若い恋人たちが数々の試練に立ち向かい、ヒロインの母親が奔走していく、とても古典的なオーソドックス・ストーリーにしています。その母親役レジーナ・キングが、アカデミー助演女優賞を受賞したのです。白人至上主義に立ち向かう、母は強しの演技力は納得の受賞でしょう。
それにしても、アメリカ映画の凄いところは少数派の怒りと抵抗をこのように映像化していく映画界のふところの広さですね。人種問題、貧困問題、職業問題を背景に、「暴力」に感じられる行動表現が、犯罪という大変になるということも、自然体で描いている怖さにドキッとしたものです。
アカデミー賞につなげていきますと、本作のヒロイン、イギリス出身のフェリシティ・ジョーンズは「博士と彼女のセオリー」でアカデミー主演女優賞にノミネートされています。「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」という幅の広さをみせています。
86歳で現在も人気の最高裁女性判事が、若いときに史上初の<男女平等>裁判にいどんだ実話の映画化なのです。
これも本当に、たいしたものです。よくぞ作ったりの作品なんですね。原題は、「(男女)性別に基づいて」で差別の中で女性のキャリア・ウーマンが活躍をみせるヒット映画、「ドリーム」にあやかって、「ビリーブ」(信じてる)と日本題名にされたそうです。
ヒロイン、フェリシティ・ジョーンズは「私はもう何年もこういう役を待っていたわ。自分でやるべきことに情熱をもってうちこんでいて、それと同時に自分の人生や人格をさらに深めようとする女性の役をね」と熱弁をふるっています。法廷の5分32秒の名スピーチに注目してみて下さい。
監督は女性ながら、パワフルで大ヒットした「ディープ・インパクト」のミミ・レダー。女性パワーで、つくられています。
この人のドキュメンタリー映画がアメリカで公開され、異例のヒットをしているそうです。ルース・ベイダー・ギンズバーグの頭文字をとった「RBG」のニックネームのタイトルで、日本でも公開される予定です。
つくり方の真面目さに、ただただ驚ろかせる力作なのです。
ミステリーにみちあふれた傑作の一本です。ノーベル文学賞の吉報が届き、作家とその妻は歓喜します。夫婦と息子は授賞式のスウェーデンのストックホルムに訪れます。かねてより、この天才的作家の自伝を書きたいと申し出る文芸記者も同じ飛行機で向かいます。今度こそOKをもらえるだろう、と。しかし、NOの返事。あまりにかたくなな為、天才作家の身辺を探っていると、妻が若い時に小説を書いていたと知り、文芸記者は妻の方に近づいていくのです。個人的にまず驚いたのが、架空の文学賞ではなくあのかの有名な「ノーベル文学賞」という文字が出てきたことからです。たしかに、この作品はスウェーデン・アメリカ・イギリス合作映画とあります。ビョルン・ルンゲ監督はベルリン映画祭・銀熊賞受賞歴をもつ57歳で、スウェーデン出身の男性。
資料を見ていて一番気になっていたのが2017年製作とあるんですね。調べてみると、アメリカ公開は2018年8月、イギリス公開は2018年9月となっています。アカデミー賞の「1年以内にロサンゼルスで上映された作品」とあるので、このたびの妻役のグレン・クローズの主演女優賞は、ノミネート条件どおりなのです。
要は、完成された2017年に公開されていないようなのですね。少なくとも、アメリカ・イギリスでは。2017年には、ノーベル文学賞スキャンダルなる不祥事がおこっていて、もしかしたら、そのせいで内容は違うけれどもあまりにノーベル文学賞のリアルなもう一つの面が、この作品と共に出るのは抵抗があったのではないでしょうか。1年は公開を待ちましょう、と。ちなみに2018年のノーベル文学賞は選考を見送るとなっています。そのことも含んで見ますと、とんでもなく面白い映画で、ミステリアスな部分がどんどんあらわにもなっていきます。なかなか、女性のノーベル文学賞がとれないことと、文学界が男社会であり、他の分野も男社会で進行しているケースがあり、考えさせられます。
最初から最後まで原題「妻」のグレン・クローズに圧倒されます。ふっと「007」シリーズのジェームズ・ボンドの悪役の女性のボス役でボンドをとことんいじめてやって欲しいな、と思ったほどです―。誰もが感じるようにこの邦題とサブタイトルには残念ですね。中間をとってせいぜい「作家の妻」でしょう。それにしましても、芸術作品の、ここでは文学ですが。音楽でも絵画でも個人名で作品を発表しているものの「真実」と「虚構」の関係性も、作品以上のドラマが秘められていそうでそれはそれでもっと違うケースでも知りたい気がします。
アカデミー授賞式の幕開けのクイーンの曲で、最前列で最も盛り上がって手拍子しながら体をくゆらせて、口づさんで、満面の笑みでいたのがグレン・クローズ。「ノミネート7回目の同情票なんていらないわ」という通りサバサバオーラが美しかったです。ゴールデン・グローブ賞・主演女優賞受賞。
信友直子監督が、お越しになりました。
当館での本作の初日、3月1日(金)に、いきなり一観客としてお見えになり、1回目の終了と2回目の終了のときにサプライズで舞台挨拶をして頂き、お客様が大受けでした。
翌日、3月2日(土)は舞台挨拶が決っていた日で、楽しいお話しにお客様は喜ばれていたようです。
大好評で上映中です。是非ごらん下さいませ。
アカデミー賞が2月25日(月)日本時間に授賞式が行われました。本命不在の大混戦でどれが「作品賞」をとっても不思議じゃないと言われていたのです。主要な結果は以下の通りです。
★作品賞「グリーンブック」
★助演男優賞マハーシャラ・アリ
★脚本賞 全3部門授賞
★主演男優賞「ボヘミアン・ラプソディ」ラミ・マレック
★編集賞★録音賞★音響編集賞
最多4部門授賞
★主演女優賞「女王陛下のお気に入り」オリヴィア・コールマン
★助演女優賞「ビール・ストリートの恋人たち」レジーナ・キング
★主題歌賞「アリー/ スター誕生」 「Shallow」(シャロウ)レディー・ガガ歌唱
★視覚効果賞「ファースト・マン」
★メイクアップ&ヘアスタイリング賞「バイス」
※ここまでが当館で上映中、上映予定作品です。
「ROMA ローマ」
★監督賞 アルフォンソ・キュアロン
★撮影賞 ★外国語映画賞 全3部門授賞
(現在のところ動画配信のみでしか見れないです。)
「ブラックパンサー」3部門授賞
★作曲賞 ★美術賞 ★衣裳デザイン賞
★脚色賞「ブラック・クランズマン」スパイク・リーほか
日本から「万引き家族」「未来のミライ」はのがしています。
大必見のグリーンブック
アカデミー賞の「作品賞」にみごとに「グリーンブック」が輝きました。どちらかと言いますと、「ボヘミアン・ラプソディ」の最多4部門授賞の方が目立っているのは、やはり今も大ヒット上映中ですから、そうなりますよね。「グリーンブック」は、作品賞のほかに助演男優賞と脚本賞の3部門授賞しているところが、実は注目のところです。
カーネギーホールの上で暮す天才的黒人ピアニストは、インテリで上品、アメリカの南部への演奏旅行に運転ができて腕っぷしの強い白人をやとい、旅に行く話しです。それが、徹底的に面白い、楽しいんですね。
気になる題名ですが、「黒人用旅行ガイドブック」のことなのです。黒人差別が激しいので、ホテルやレストランを選ばなきゃならないんですね。
フライドチキンなど食べたことがないピアニスト役のマハーシャラ・アリは、もう文句なしにアカデミー助演男優賞でしょう。
アカデミー授賞式で主演男優賞発表のとき、少しワイルドだけど頼もしく愛情深い運転手役のヴィゴ・モーテンセンが、なんとなくくやしそうな表情をしていたと私には見えましたが…。「でもまぁ、ラミ・マレックだよな」とも受けとれました。このヴィゴ・モーテンセンにまず、監督は絶対的オファーをしたそうです。そこがすごいですね。あの「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン役のヴィゴ・モーテンセンですからね。のちに「イースタン・プロミス」など個性的な役をつらぬいています。でも本人は強烈に欲しかったでしょうね。2度とこない役くらいですから。
主演のヴィゴが決まって、次に天才的黒人ピアニスト役のマハーシャラ・アリにオファーがいったみたいです。この人、「ムーンライト」(2016)でもアカデミー助演賞。「ドリーム」でもイイ味を出していました。彼は、ヴィゴ・モーテンセンと共演を最高と感じていた、と。
監督はピーター・ファレリー。「ジム・キャリーはMr.ダマー」「メリーに首ったけ」など、コメディに才能を発揮している人ですから、全編通して、いちいち笑いに結びつけています。
そしてバックに流れる音楽。ヴィゴの食べっぷりの良さも笑いに。
近年、まれに見る素晴らしいラスト・シーンを是非に。
道中の会話も実にいいんですが、このラストの決めゼリフにはまいりましたね。
正直、この作品が作品賞でとても良かったです。アート色が強いと、好みが分かれますからね。
本年度、必見の快作の傑作です。どなたがごらんになっても、一人でも、二人でも、三人でも、どういうシチュエーションでもオッケーのアカデミー作品賞作です。「ボヘミアン・ラプソディ」と同様にリピーターが続出するでしょう。
まず、題名が素晴らしいです。気をひき、わかりやすく、ユーモアもただよう名題名は昨年度のナンバー1のような気がします。
とにかく、「面白い」のひとことです。
どなたがごらんになっても、面白いのです。
主人公は、87歳のお母さんで元気はつらつでしたが、認知症が出はじめています。95歳のお父さんは行動力が抜群で、めちゃくちゃ健康です。が、少し耳が遠くなっています。
主人公は、御年輩ではあるのですが、見る人の年齢によって立場によって、自分自身におきかえられていきます。それにしても、老いていくことの尊さを深く感じいります。耳が聞こえにくいことにより、争いごとにならないありさまは、まさに沈黙は金かも知れません。目が見にくくなって鏡にうつるシミやソバカスが、ぼんやりしか見えないのも、うまくできている気がします。
自分自身の身内をおもい出したりしますが、いつなんどき病気になったり、入院しなくてはならないこともあります。若い人だって、人ごとではないのです。
題名は、映画中に思わずお母さまがおっしゃった言葉が、そのまま使われています。本当に映画の神様からの降臨のおことばのように、本作の題名になり、そして全国、大ヒットをしているのです。これかなり、凄いことです。映画のヒットは、まずは題名が一番と昔から言われているのです。お母さんのあの言葉、お父さんのあの楽しい存在感、そして、お嬢さんであられる信友直子さんのガッツとエネルギーとねばりに拍手をおくりたいです。
広島の呉の御出身ということで、この映画の魅力を倍増させているのが、広島弁です。ほんわりした広島弁、スパッとした広島弁、重く低い声の広島弁と、それぞれこれが良いんですね。それと、広島弁と広島弁の間が不思議な間合いがあって絶妙なおかしみがあります。
御両親がお嬢さんである信友直子さんを、全面的に応援されていることが、じわっと見終って伝わる構成もお見事というしかないですね。
広島のお好み焼き屋さんとかラーメン屋さんのお店屋さんのお手洗いによぉーく、はってありました。
「子ども叱るな 来た道じゃ
年寄り笑うな 行く道じゃ」
そうなのです。誰でも、みんなのことなのです。
全篇をつらぬくユーモアと明るさは、お嬢さんである信友直子さんがカメラをまわし、さらに、その時に起こるハプニングにカメラをまわしながら声を発する自然さからくるものでしょう。監督・撮影・語りの一人3役をされた広島県・呉出身の信友直子さんを覚えてあげて下さい。
そして、是非、お声がけをしてたくさんの方に見て頂きたい傑作の1本です。
♡3/2(土)『ぼけますから、よろしくお願いします。』舞台挨拶決定!!
ゲスト:信友直子監督
・10:10の回 上映後
・12:20の回 上映後
★パンフレットお買い上げのお客様にサイン会も実施いたします!
たくさんのリクエストをいただきました。
キネマ旬報の第3位、映画芸術の第1位ということもあいまって、注目の作品になっています。
高名な映画評論家の先生方は、フランス映画「突然炎のごとく」(フランソワ・トリュフォー監督の傑作)に匹敵するとまでの大絶賛されている恋愛映画です。
同居している男子2人と、そのうちの男子とつき合っている女子のトライアングルの設定。友達以上、恋人未満のような、そうでないようなあまりにも自然体な感じで映画の時が流れていきます。あるいは、現在ただいまの空気感と同調するリアル感でしょうか。
函館出身の原作者はイタリアの作家の「美しい夏」を愛し同じタイトルの作品も書いているそうです。たしかに、あの3人の美しい夏が大きなエピソードがあるわけじゃないけれど、描かれていて美しさがささいなことであることが感じられています。
柄本佑が本作と(「素敵なダイナマイトスキャンダル」、「ポルトの恋人たち 時の記憶」により)キネマ旬報の主演男優賞を受賞しています。しかも断トツの14票で、2位の大杉漣は6票。同居人役に、染谷将太。ヒロインに、石橋静河(母親は原田美枝子で、父親は石橋凌)昨年の「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」でキネマ旬報1位と自身は新人賞を総なめにしています。24歳。次回作が楽しみな女優になってきています。
題名は「And Your Bird Can Sing」というビートルズの楽曲の直訳とか。
監督・脚本は三宅唱。34歳。彼の「やくたたず」を傑作だと思った菅原和博が本作の監督に指名するのです。
実は一番凄いのはこの菅原和博さんでしょう。函館シネマアイリスというミニ・シアターの代表なのです。函館を舞台にした「海炭市叙景」、「そこのみにて光輝く」、「オーバー・フェンス」と製作しているのです。
このたびのキネマ旬報ベスト10では、東宝、松竹の大手の作品が1本も入賞していません。かろうじて、東映の「孤狼の血」が5位に。これは、大変なことなんですね。
全国ミニ・シアターが虎視眈々と映画製作の可能性を実感しはじめたりなんて、全然無いとは言えない日本映画界の状況になってきていますね。
シネマスコープ(最大の画面の大きさの画角)で撮影も素晴らしいです。
いよいよ、アカデミー賞が発表されます。2月25日・月曜日<日本時間>です。そこに合わせて、作品賞のノミネート作品が公開されていきます。
2月15日金曜日公開の、アイルランド、イギリス、アメリカ合作映画「女王陛下のお気に入り」は、アカデミー賞作品賞、監督賞など9部門10個がノミネートされています。助演女優賞に2人が候補になっているのも、あまり無いことで注目されています。
何しろ、宮廷のすごさです。
18世紀イングランド王室を舞台にした宮廷ドラマです。日本の「大奥」を連想していただけたら、わかりやすいのではないでしょうか。
たくさんの子供に先立たれた女王は分身のようにうさぎを飼います。病気持ちで特に極だったところにも恵まれず、王位だけが頼りの孤独な女王なのです。この女王役が、「ロブスター」、「オリエント急行殺人事件」のオリヴィア・コールマンで、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされています。
女王のおさななじみにして親友のレディ・サラは器量よしの美人で政治も経済も強く、夫も軍人で政治家です。そのサラ役に、「ロブスター」、「否定と肯定」のレイチェル・ワイズです。
サラのいとこで、一度は没落しながら上流階級への返り咲きを狙う侍女アビゲイル役に、「ラ・ラ・ランド」、「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」のエマ・ストーンです。
このレイチェル・ワイズとエマ・ストーンが二人そろって助演女優賞にノミネートされているのです。
冒頭5分で、この三人の登場のうまさ。見ていくと三人共、主演女優のような錯覚におちいるように、それぞれ出番が同じくらいに多いんですね。
そうなのです。三女優の演技合戦をたんのうしようという映画なのです。なかでも、出演作のたびごとに個性的な役を選んでいるエマ・ストーンのアビゲイル役は、彼女の女優歴の中でも出色のできのような気がします。純真なのですが、強さ、したたかさ、賢さ、優しさ、無情さ、勝気さをそなえもった役どころです。
宮廷ドラマにふさわしく、衣裳デザイン、美術も凝っていて、いずれもアカデミー賞にノミネートされています。
広角レンズを使った絵づくりの撮影賞もノミネートされ、脚本と編集もアートな感覚でこちらもノミネートされています。
「ロブスター」、「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」で注目を集めるギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスは、唯一無二の世界観を映像で迫る映画監督と騒がれています。
つまり、ストレート(直球)ではなく鋭くまがって落ちる変化球の持ち主であるようです。ブラック・コメディ或はダーク・コメディなつくり方なのですね。
見る方は、あくまでも気楽に見ると良いのではないでしょうか。不思議な感動が待っています。
音楽、効果音が印象的で、どこかユーモラスに。
すでに、ベネチア映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)と主演女優賞(オリヴィア・コールマン)を受賞しています。
原題は「お気に入り」。タイトルの出し方にもかなりこだわっていました。各章ごとのタイトル、文字にもこだわりがあふれています。
はたして、アカデミー賞は何部門で授賞できるのでしょうか!?
♡本作の製作、配給をしている、フォックスサーチライトは、「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)アカデミー賞・作品賞ほか全8部門受賞、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014)アカデミー作品賞ほか全4部門受賞、「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)アカデミー賞作品賞ほか全4部門受賞、「スリー・ビルボード」(2017)アカデミー賞・主演女優賞、助演男優賞2部門受賞、などを獲得している、個性的だけど刺激的映画を挑戦的につくっています。
●個人的には「バリー・リンドン」が浮かんできたり、わが日本では石井輝男監督の「徳川女系図」の「徳川」ものほか、が思い出されたりしたのですが―。
【日本映画】
1位 万引き家族
2位 菊とギロチン
3位 きみの鳥はうたえる
4位 寝ても覚めても
5位 孤狼の血
6位 鈴木家の嘘
7位 斬、
8位 友罪
9位 日日是好日
10位 教誨史(きょうかいし)
監督賞 瀬々敬久(「菊とギロチン」「友罪」)
脚本賞 相澤虎之助、瀬々敬久(「菊とギロチン」)
主演女優賞 安藤サクラ(「万引き家族」)
主演男優賞 柄本佑(「きみの鳥はうたえる」ほか2本)
助演女優賞 木野花(「愛しのアイリーン」)
助演男優賞 松坂桃李(「孤狼の血」)
新人女優賞 木竜麻生(「菊とギロチン」「鈴木家の嘘」)
新人男優賞 寛一郎(「菊とギロチン」)
特別賞 樹木希林
【外国映画】
1位 スリー・ビルボード
2位 ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
3位 シェイプ・オブ・ウォーター
4位 ファントム・スレッド
5位 ボヘミアン・ラプソディ
6位 15時17分、パリ行き
7位 顔たち、ところどころ
8位 1987、ある闘いの真実
9位 ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ
10位 判決、ふたつの希望
外国映画監督賞 マーティン・マクドナー(「スリー・ビルボード」)
【読者選出・日本映画】
(1位)万引き家族 (2位)カメラを止めるな! (3位)孤狼の血 (4位)寝ても覚めても (5位)日日是好日 (6位)菊とギロチン (7位)きみの鳥はうたえる (8位)止められるか、俺たちを (9位)空飛ぶタイヤ (10位)鈴木家の嘘
【読者選出・外国映画】
(1位)スリー・ビルボード (2位)ボヘミアン・ラプソディ (3位)シェイプ・オブ・ウォーター (4位)ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 (5位)タクシー運転手~約束は海を越えて~ (6位)15時17分、パリ行き (7位)判決、ふたつの希望 (8位)デトロイト (9位)グレイテスト・ショーマン (10位)ウインド・リバー
●こうして前年度のベスト10をふり返るのは、面白いものです。やはり「万引き家族」が1位ですね。「菊とギロチン」が2位に入賞したことは、凄いことだと思います。1位と2位の差は、7点でした。個人賞で「万引き家族」から、主演女優賞を安藤サクラさん。「菊とギロチン」から、監督賞を瀬々敬久さんと、脚本賞を相澤虎之助さんと瀬々敬久さん。それに新人女優賞を木竜麻生さんと新人男優賞を寛一郎さん(父は佐藤浩市さん、祖父は三國連太郎さん)。
「万引き家族」は個人賞で1部門、「菊とギロチン」は個人賞で4部門、かくとくしています。何度も記して申し訳ないのですが、「菊とギロチン」はそのタイトルといい上映時間3時間9分といい、その挑戦的なスタイルは、覚悟は、立派であったと思うのですが、もっと本作を多くの人に見て欲しかったと、つくづく思います。
手間ひまかけて、製作費かけて、あれだけのキャストも出演しているのだから、ヒットさせて回収して、次回作にも賭ける心も必要だったと残念の一語です。
「万引き家族」(是枝裕和監督)、「斬、」(塚本晋也監督)、「検察側の罪人」(原田眞人監督)、「来る」(中島哲也監督)の日本映画界の巨匠たちの、終り方を観客にゆだねるというのがとても気になりました。是枝裕和監督は前作「三度目の殺人」の時にも、終り方について問うてみたのですが、「皆さんがごらんになって、どのようにも想像されて良いのです」とのお答えを常になさるのですが、なかなかにスッキリとはしないんですね。
「斬、」と「検察側の罪人」にいたっては、ラスト、「斬、」は蒼井優さんが、「検察側の罪人」は二宮和也さんが、アーと絶叫して終わるという、まったく同じで、これでは観客が、絶叫するのではと思ったくらいです。
たしかに、現代日本の先行き不透明、おおいかぶる不安を映像化するには、この選択であったとは十二分に理解できなくもないのですが、こういう不安感と孤独感にさいなまれる現実ゆえに、スッキリ、ハッキリ、キッチリ終って欲しいとは、私個人の感想です。お客様からの「あれどういう意味の終り方なんですか?」になかなかうまくお答えできないのもつらいです。注目の「止められるか、俺たちを」の白石和彌監督も、やりたいものをやりたいようにつくるのも良いのですが、ここは一番、笑える痛快な作品を意識してつくって欲しいものです。
ちなみに、映画秘宝ベスト10の1位に輝いた「カメラを止めるな!」は、キネマ旬報では17位でした。17位はナイスな好位置です。
映画をたくさん見ましょう。映画は時代の鏡です。
【文化映画ベスト・テン】
3位 ぼけますから、よろしくお願いします。
東京で活動する広島出身の女性ドキュメンタリスト信友直子監督作品。見事な題名で、あっぱれな大ヒット作品に。素晴らしいの一語です。古い広島弁も、しみじみといいです。3月1日(金)より八丁座にて公開。ごらんでない方は、是非お越し下さい。
前述しておりますように、本年度よりキネマ旬報のベスト10の発表がかわりました。
2月4日 日本映画、外国映画の1位のみ発表
2月5日 2位以降 発表
となっております。
カンヌ映画祭・最高賞のパルムドールを受賞し、アカデミー賞・外国語映画賞にノミネートされています。「万引き家族」は、1位か?!スポット・ライトのあたらない「菊とギロチン」にスポット・ライトをあてていましたが、やはり本命は「万引き家族」でしょう。もし、キネマ旬報1位となりましたらさらに「万引き家族」にスポット・ライトがあたります。
是非、御注目をして下さいませ。そして、見のがされている方はこの機会に、ごらんの方も再見ができます。どういう結果でも、ベスト10や映画賞は面白いものです。
♡映画ファンならずとも世界中の注目を集めているアカデミー賞に「外国語映画部門」で候補作品5本の中に選ばれています。その名誉あることへの、このたびの再上映です。2月25日(日本時間)がアカデミー賞授賞式が楽しみです。
「寝ても覚めても」が観客動員数が最も多く、つづいて「鈴木家の嘘」も好評でもう1週上映したかったくらいです。
「菊とギロチン」は、いちおししていましたが、予想をかなり下まわるまったくの不入りで終わりました。
アンコール上映3本に熱い思いでお越しいただき有難うございます。
やはりキネマ旬報発表後にならなかったことが、残念でたまりません。ひき続きキネマ旬報ベスト10予想外国映画特集「ワンダー 君は太陽」、「スリー・ビルボード」を是非ごらん下さいませ。
前年度の日本映画・外国映画のベスト10発表でもっとも痛快で、あっぱれは「映画秘宝」の1位の「カメラを止めるな!」でしょう。300万円余りの製作費の作品が31億円の興行収益をあげるなんて前代未聞のことです。劇場で笑い声が何度もおこり、素晴らしい終り方でした。これで「映画秘宝」ももっと知名度があがっていくことでしょう。
「ボヘミアン・ラプソディ」は「映画秘宝」が4位で、「スクリーン」が3位です。しかも前年度№1の興行収益100億円をあげているのですから、ただただ「凄い」の一言です。「カメラを止めるな!」と共通しているのは、社会現象になるほどの話題を提供しました。リピーター率が高かったのも、日頃映画をごらんでない方も来ていただいた功績は本当に有難いことです。映画を見ていただいて、満足していただいて、映画館も配給会社も製作会社も、それでうるおっていけるわけですから、当館のような大手でもない、バックボーンが何もない個人映画館のミニ・シアターはまさに生き残っていけて感謝感激なのです。
「シェイプ・オブ・ウォーター」(アカデミー賞・作品賞ほか全4部門受賞)「映画秘宝」3位、「スクリーン」2位も素晴らしいですね。アンコール上映を考えていたのですが、上映わくが無くて断念しています。入れておくべきだったのでしょうかね。
「ファントム・スレッド」は「映画秘宝」5位、「スクリーン」6位と入賞しています。個人的にもっとも心に残る1本でした。ウェイトレス出身のモデルと中年男の超一流ファッションデザイナーとの関係。ラスト近く、過去にもされた毒入りオムレツを出す女、フォークで女を指さす男。食べる男。ぎくしゃくしているなら、女は去ればすむことですよね。
♫誰かに 盗られる くらいなら
あなた 殺していいですか
石川さゆりの「天城越え」
まさにこれですね。男(ダニエル・デイ=ルイス)の小さく笑った顔が、こういう幸福感もあるのだなと感じいりました。あくまで私個人の勝手な解釈です。
主演男優のダニエル・デイ=ルイスの人気作「存在の耐えられない軽さ」の心残りが自然に自分に浮かんできたせいかも知れませんが。
「タクシー運転手 約束は海を越えて」は「映画秘宝」が7位、「スクリーン」が8位もいいですね。あと「映画秘宝」の「ブリグズビー・ベア」の8位、「スクリーン」の「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」(もう笑わせ方が絶品!)の6位、「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(今を脱出するいじらしさ)の10位は、嬉しい限りです。
特筆すべきは「ブリグズビー・ベア」で、隔離した場所で男の子を学校に通わせてない両親が題名の熊を主役のテレビ番組を自らがつくり成長させていく物語。これぐらいスゴイ話しはないかも知れない。前年度、もっとも心にひびく作品でした。けっさくなのはその両親はその男の子を赤ちゃんのときに誘拐していて、警察につかまります。人生はじめて、この世に「本当の家」に戻ったこの青年はどうなるのでしょう。父親役を「スター・ウォーズ」のマーク・ハミルはナイスキャスティングです。
「ワンダー 君は太陽」は、「スクリーン」で18位でした。順位以上の中味と思うのですがいい順位であることにちがいはありません。
そんなわけでありまして、前年度のベスト10の楽しさ面白さは無限にあるのです。
何度も記述して重複して申し訳ありませんが、老舗(1919年創刊)した「キネマ旬報」は、2019年の本年で100年をむかえる映画雑誌の老舗中の老舗です。毎年1月10日前後に前年度の日本映画、外国映画のベスト10を発表していたのですが、前述の通り2月4日にベスト1と部門賞を、2月5日の決算号で2位以下を発表されるそうです。
わかりきっていることなのですが、1月21日(月)に、映画雑誌「スクリーン」と「映画秘宝」のベスト10が発表されました。ちなみに、「スクリーン」は外国映画のみを選出し「映画秘宝」は日本映画と外国映画を含めたベスト10選出で、それぞれに趣きがあります。
「映画秘宝」は、他の映画雑誌とはちがう視点で選んでいるため根強い人気があります。アクション、ホラー、SF、セクシー、異色作に重きをおき、どちらかというと男性観客目線的、B級(大スターが出ていなく、中、低予算のユニーク作品)的、作品などが有力なので、これはこれでとても興味深く面白いのです。
「スクリーン」誌は、外国映画専門で(日本映画の紹介も少しですが、あります)最もわかりやすく、どちらかというと女性観客目線的なファッショナブルな特集もあったりの内容なので、映画雑誌としての人気は高く、老若男女問わず、映画ファンになりかけの方からマニアの方まで楽しめるようにつくられています。1947年が創刊ですから71年の歴史があります。
キネマ旬報は、作品の上質感芸術性に重きをおいた選出で、選ばれると俳優、監督、脚本家、カメラマンなどなどもっとも光栄に感じる良い意味でのマニアックな映画雑誌と、その権威と伝統は認識されています。が、ここ最近は、傑出した作品がなかなかに製作されなくなっている現在において、キネマ旬報社の本領を発揮する場が少なくなってきているともいえるかも知れません。決して皮肉ではなくです。
映画雑誌について、少し述べさせてもらい、そういう基準で選らんでいるのを楽しんでいただければ幸いです。
従って、最も普通な感覚のベスト10がスクリーンなのですが、現実的には知られてない作品が多いかもしれません。
「スクリーン」の1位と「映画秘宝」の6位に選ばれた「スリー・ビルボード」(三枚の看板の意味)は、予想が的中して再上映致します。
娘が亡くなって捜査をしっかりしない警察に「三枚の看板」を使って宣戦布告する母親の痛快ぶりをみせる快作の傑作です。アカデミー賞・主演女優賞・助演男優賞を受賞しています。2月1日(金)~2月7日(木)一週間限り。大人・大学生1,300円。
「ワンダー 君は太陽」は、多くの方にごらんいただきヒットしましたが、もっと多くの方に見ていただきたく再上映します。「スクリーン」ではベスト10に入ってくれるかなと思っていたのですが、18位になっています。小学校・中学校ではこの原作をとりあげているところもあるそうです。上映終了後の学校上映をはじめ、災害地などでの少しでも元気になってもらう為の上映作品の人気ナンバー1とも伝えられています。予備知識なく、是非ごらん下さいませ。今年にむけて、少し、自分に変化が出るやもしれません。本当に「ワンダー」(驚き)ますよ。1月25日(金)~1月31日(木)の一週間限り10:30からの上映です。大人・大学生1,300円。
※上映時間は上映スケジュールのページでご確認いただけます。
「菊とギロチン」キネ旬ベスト1か?!
「万引き家族」対「菊とギロチン」の対決はいかに
毎年恒例のキネマ旬報、映画秘宝、スクリーンの映画雑誌を中心としたベスト10発表を予想して番組編成しています。ひとことで言ってベスト1は「万引き家族」対「菊とギロチン」ではないでしょうか。
2018年度の最高最大の大挑戦にして最強の力作が本作「菊とギロチン」だと、私は思います。
・誰もつくらない、映画をつくった。
・誰もつけない、題名をつけた。
・誰もしない、上映時間3時間9分にした。
・エキストラのとんでもない多さ。
・エピソードの多さ。
・女性登場人物たちの躍動感と美しさは素晴らしいの一語。
・知らなかった女性たちの仕事ぶりを哀歓をもってみせる。
・その女性たちの仕事の崇高さと面白さに驚き、女優たちのなりきりの必死さにエンターテイメントとはこれだと、感じいる。
とにもかくにも、凄い超大作です。長い上映時間も、飽きさせずみせていきます。
敬意を表し、拍手をおくりたいのは、日本映画界の大手、東宝、松竹、東映ほか多数ある日本映画会社に対して全身全霊で「おたくら、そういう映画のつくり方でいいんですかい!」と、やったところです。お見事のあっぱれです。
まさに、映画への「愛と狂気と自己犠牲」の殴り込み(なぐりこみ)といえます。
物語も内容も、何も記述していない失礼をおわびしつつ、いえ、正しくはそれを文字にすると「別に」とスルーされる方があるかも知れないからです。すでに、普通は題名と上映時間で興味を無くす人がほとんどかも知れないので。
タイトルも、あれでよかったのだろうかと、映画ファンとして劇場側の人間として悩みます。女優のエピソードをもっとふくらませて、男優のエピソードをけずって上映時間も短かくして欲しかった気もします。
そう、おしむらくは、そこなのであります。映画は監督、或は製作者のものかも知れないが、映画はそれを楽しむ庶民のものでもあるのです。映画は映画館にかからずおクラに入っていては映画として成立せず、映画館のスクリーンにうつって、はじめて映画は完成をみます。そしてそこに観客が居るわけです。本作は、「興行」の本質を映画で描いていながら、出来上がった作品は映画館で「興行」として公開されるわけであるのですから、「数字があがってなんぼ」も考えなくてはなりません。「受けてたまるか!」の本気度もたいしたものですが、そこのところは度胸7分に力が3分ならよいけれど度胸9分に力が1分は、文字通り力が入りすぎでは。監督(製作会社)と映画館と観客のトライアングルのよかったのハッピーエンディングです。でないと、日本全国のミニ・シアターが経営が成り立たなくなります。監督にお会いできる機会があれば、そこのところ、話してみたいです。劇場が無くなっていけば、インディーズ映画はどこでかけられるのか、なんです。そんなわけでありまして、見てあげて下さいませ。としか、言えません。
カンヌ映画祭最高賞ほか、スポットライトいっぱいに当たっている「万引き家族」。ごくごく一部に応援されてる「菊とギロチン」。映画評論家の先生たちがどう選ぶか。それは決して大袈裟ではなく、今後の日本の何かを暗示するくらいのものがあるかも知れません。
私は、「菊とギロチン」が1位を総なめにすると感じています。
※上映時間は上映スケジュールのページでご確認いただけます。
瀬々敬久(ぜぜたかひさ)脚本・監督(58歳)「ヘヴンズ ストーリー」「64-ロクヨン―」「8年越しの花嫁 奇跡の実話」
「寝ても覚めても」キネ旬ベスト・テン上位か?!
「恋愛感情3年説」というのがありますね。人間の脳内ホルモンのシステムがそうなっているのだそうです。
本作のヒロイン朝子(唐田えりか)と麦(ばく)(東出昌大)は互いに一目惚れでつき合いはじめます。が、不仲でもなく自由人過ぎる彼は突然居なくなります。
2年後、大阪から東京に生活の場を移した朝子の前に同じ顔をした別の亮平(東出昌大2役)があらわれ愛を告白されて…。という展開になっていきます。(「めまい」、「Love Letter」、「2重螺旋の恋人」などなど一人2役の名作がありましたね。)
このあたりから、観客側として朝子に共感できる人とできない人がでてきます。どうして勝手に黙って買いものに行って帰ってこない、そんな麦を今でもおもっているのか…。友人の「朝ちゃん、絶対泣かされるで」のセリフがどんぴしゃっぽくて、だよねと思います。しかし、逆にいえば、その言葉は朝子の恋心にさらに火がつくの見方も。で、そこで冒頭の「恋愛感情3年説」に戻るのですが、つき合ってからまだ2年しか経っていませんからね。朝子がまだ寝ても覚めても、麦のことをおもっていても仕方ないといえるのではないでしょうか。
あの「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラでも、ええっ?って思うほどアシュレーをしたっていましたからね。恋する心は人にはなかなか理解できませんからね。その面白さです。
新人女優の唐田(からた)えりか、21歳が朝子役を演じます。
前述したことを思って見ていただければ、情感があるのかないのか不思議な佇まいの朝子が、後半から変化していくのもおかしくはないと思うのです。
朝子が飼っている猫のくだりが素敵です。猫を飼ってる女性にとって猫はほとんど自分の命と同じに近いくらいの説もあります。
観客に結末を委ねる、日本映画が多い中、終わり方がスパっとしています。脇役の人たちが本当にしっかり作品を支えて、笑いもとるところは、特筆すべきところです。方言もとても好印象です。
キネマ旬報、上位のどこに入賞するか、期待が高まります。
※上映時間は上映スケジュールのページでご確認いただけます。
濱口竜介 脚本・監督(40歳)商業映画デビュー作であります。
前回、「菊とギロチン」のときにも書きましたが、この時期に映画雑誌、映画賞の発表があり、昨年の映画にもう一度、スポットライトがあたります。
「万引き家族」はカンヌ映画祭・最高賞のパルムドール受賞ということもあって、スポットライトが100くらいあたっていて普通に考えれば映画雑誌の1位や日本アカデミー賞などの映画賞の作品賞などを総なめにするでしょう。
一方、スポットライトが1つかもっと少なくほとんどあたっていない心に残る作品もあるのです。今年はキネマ旬報様の1月10日前後の発表が変ったため、どうして急に昨年の地味な日本映画を上映しているのか?または、まったく気に止めずにスルーされている方も多いと思います。
長年、この時期、キネマ旬報ベスト10予想結果をしている当館としましては、他の番組をけずってまで入れているのですから、驚きと、くやしさと、残念さは文字では語れません。
すぐに、キネマ旬報社様に問い合わせをしました。「全メディア、映画ファン、映画館、配給会社、そしてファンならずとも、昨年のベスト10に誰もが時代の空気や様々なものを感じとれるわけじゃないでしょうか。もとより、新年を感じさせる重要な歴史と権威ある100年をむかえる天下のキネマ旬報様が、ちゃんとした本誌の告知もなくされたらこの上映企画の意図がなくなります」と訴えましたら、配慮がなく申し訳ありませんでしたのお返事でした。
すみません。前置きが長くなりまして。当館にとっては、番組編成の大事な部分なものですから。そしてもし昨年見おとされていた方に見て頂ける機会ができるということなのです。ほとんど、一部の方にしかごらん頂いてない「菊とギロチン」が1位をとれないだろうけれども、逆転さよならホームランというドラマがあれば映画界の活性化になると思い、私が全力で応援しているしだいです。
1位「菊とギロチン」、2位「万引き家族」となれば巨匠・鬼才と呼ばれている監督さんたち、大手の東宝、松竹、東映などの日本映画界に風あなをあけるかも知れません。このことについては、また次号で。生ドキュメンタリーでお届けします。
本作は「万引き家族」とはまたちがった角度のうそを描いて、まさに日本の今を感じます。「万引き家族」は、本当の家族でない集合体のありようをもしかしたら、いや、他人同志の方が平和に暮らせるくらいの感じで描いた視点が見事で、タイトルも絶妙でした。
本作は、題名の鈴木家におこった長男の亡くなったことを母親に嘘をついて失望させないようにする展開を、決して暗く重くならず、笑いの中でみせていきます―。
妹役の木竜麻生(きりゅうまい)が、なんと「菊とギロチン」の主役のあと、出演しています。この2本で新人賞をとるのではないでしょうか。観客がこの妹の役にとても自然に入りやすく、共感しやすく、悩みもよく伝わります。彼女のある集いでの独白シーンは、圧巻であります。映画史レベルに残るかも知れません。ラストがとても素晴らしいです。
引きこもりの中高年化が叫ばれている一方で、若い人たちの引きこもりも現実に多々あり、とてもじゃないが他人事とは思えないのです。
渾身のオリジナル脚本を書いた野尻克己(45歳)は、身近におこったことを物語にし、監督デビューしています。
父親役、母親役、長男役すべて当て書きで俳優さんに快諾されたそうです。つまり、それくらいベテラン俳優さんたちがいい脚本と一発OKを出してくれたのです。
オーディションの最終選考から、結果、妹役を得た木竜麻生は「映画運」が強いのを、感じる面白さもあるので、是非、「菊とギロチン」とあわせてごらんになっていただけたら幸いです。長文にて失礼致しました。
※上映時間は上映スケジュールのページでご確認いただけます。
大変、長らくお待たせいたしました。
大ヒットばく進中です。
観客動員が、400万人超えて、
興行収益が、55億円突破しています。
伝説のロック・バンド“クイーン”のリードボーカルのフレディ・マーキュリーの栄光と、孤独、苦悩、そして復活までを描いた作品です。
まず、ドキュメンタリーではなく、映画音楽ドラマとしてつくったのが、マニアックにならず見やすくさせています。幅広い層に支持されリピーター続出です。たとえば、お父さんと高校生の女の子が一緒に見にいき女子高生の方が感激しているなど、10代の方々に受けているのがすごいです。10代から上は限りなく受けているのは、たしかに音楽映画ジャンル的に奇跡的とよばれるゆえんかもしれません。
45歳の若さで亡くなったフレディ・マーキュリーの出身国、ルックスコンプレックスを観客へのつかみからのせ方、歌い方に変えていくエンターティナーぶりは天下一品だったのです。
タイトルのイギリスのシングルチャートで初めて1位で全世界大ヒットの「ボヘミアン・ラプソディ」についてこのように言われています。
♫ママたった今 人を殺してきた
あいつの頭に銃口を突きつけて
引き金を引いたら 奴は死んだよ
ママ、人生は始まったばかりなのに
ママ、ああ ママ
ママを泣かせるつもりじゃなかったんだけど
時々考えてしまうよ いっそのこと生れなきゃよかった…♪
共に仕事をしていた作詞家のティム・ライスは、こう告白しています。
「昔のフレディ・マーキュリーのイメージを自分自身で殺したという意味です。
異性愛としての自分は死んだ。
同性愛者としての、新しい本来の自分として生きていく。」という意味なのですと。
1991年11月23日にエイズにかかっていることを公表し、なんと翌日の11月24日にロンドンの自宅で亡くなったのです。ロンドンの自宅には日本庭園があり、湯のみなど骨とう品をたくさん集めていたほどです。
猫が大好きで、数匹、飼っていたようです。
監督がブライアン・シンガー。「X -MEN」シリーズ、「ワルキューレ」などありますが、デビュー2作目が「ユージュアル・サスペクツ」(アカデミー賞2部門受賞)なのです。
フレディ・マーキュリー役のラミ・マレックのなりきり演技に注目です。
ゴールデン・グローブ賞の作品賞と主演男優賞(ラミ・マレック)にノミネートされています。
1月7日に発表です。
そして、アカデミー賞のノミネートは1月23日に発表です。
キネマ旬報、映画秘宝、スクリーンなど2018年度のベスト10が1月中旬頃から発表です。楽しみです。
※上映時間は上映スケジュールのページでご確認いただけます。
♡リピーターの方、必見の冒頭部分。本編がはじまる前の映画会社「20世紀フォックス」のテーマ曲のファンファーレ(「スター・ウォーズ」を思い出してほしいです)が、クイーンが演奏しているのです。
御存知の方も多いと思いますが、すでにここから泣かせます。お気づきでない方は、予告篇のあとの短い秒数ですが、是非、御注目を!
映画の楽しみ方のひとつに、知らない世界のジャンルの作品を見て、新鮮でとても面白かった、ということがあります。どうしても、タイトルやポスターのイメージで雰囲気を感じ、好みに合わないかも知れないと思うことがしばしばありますからね。本作は、伝説的なオペラ歌手マリア・カラスの人生を追ったドキュメンタリー作品です。
ひきつけられるのは、マリア・カラスという一人の女性の波乱にみちた生き様なのです。オペラ歌手としては、ひとたび聴けば忘れられない世界にひとつの歌声と、高度なテクニックと歌唱力、演じる役が憑依(ひょうい)する才能を持っています。さらにエキゾティックな美貌と圧倒的なカリスマ性で観衆をとりこにしてきたディーバ(歌姫)なのです。
とても興味深いのが、30歳上のイタリアの実業家の夫があったのですが、ギリシャの大富豪オナシスとの大恋愛です。ところが9年間付き合った末に、なんとオナシスは米大統領ケネディの未亡人ジャクリーンと電撃結婚をするのです。マリア・カラスはそれをまったく知らず、新聞、テレビの報道で知るという残酷さです。登場人物が大物過ぎて、映画や芝居を越えています。
エキゾティックな美貌と圧倒的なカリスマ性をもったマリア・カラスです。数々のねたみやいやがらせを受け、心労もあります。声を酷使した為に発声が不調になり、第一幕だけで出演を放棄し大批判を受けてもいます。そんなおり、ギリシャの大富豪オナシスはマリア・カラスの元に帰ってきます。そしてそれを彼女は暖かく受け入れます。すごい話しです。
1977年9月16日に53歳の若さで亡くなったマリア・カラス。没後40周年の2017年にむけて、マリア・カラスにくわしいトム・ヴォルフ監督が3年かけて入手した自叙伝、手紙、秘蔵映像、音源でつづられています。半分以上が初公開です。エリザベス女王、大女優のグレース・ケリー、カトリーヌ・ドヌーヴも観客として映像が残っています。本人のしゃべりと、進行役ナレーションを映画「永遠のマリア・カラス」で主演したファニー・アルダンが担当します。
「私の人生は全て歌にきざまれている」という彼女の言葉通り、ドキュメンタリーですが、まるで劇映画のような展開でみせていきます。時には、こういう映画も良いかも、と思って頂けること必至の感動がそこにあります。
※女優的歌姫マリア・カラスは、1969年、イタリアの鬼才ピエル・パオロ・パゾリーニ監督・脚本で「王女メディア」で映画主演しています。マリア・カラスの心境を強く投影した作品と言われ、キネマ旬報のベスト10の7位に入賞。日本でも広くアート系の映画館で上映されています。もちろん、当館でもです。
※上映時間は上映スケジュールのページでご確認いただけます。